磁器の豆皿でいただくお花見献立【神谷よしえさんの「旅する豆皿」#3】

豆皿&レシピを紹介するのは…

フードアドバイザー・調味料ソムリエプロ / 神谷よしえさん
大分県宇佐市出身。母が設立した「生活工房とうがらし」を、2015年に株式会社生活工房とうがらしとして継承。食を軸として“人と人を繋ぎ、産地と料理人を繋ぐ”をモットーに、全国各地で食にまつわる講演やセミナー、催事などをおこなっている。趣味はおにぎりを握ること。Facebookページの『ごはん大好き』は、世界に6万人のフォロワーを持つ。

花見料理には磁器の豆皿が似合います

日本の工芸をベースにした暮らしの道具を取りそろえる「中川政七商店」とフードアドバイザーの神谷よしえさんが、各地の郷土の産品や料理に合わせたアレンジレシピと豆皿の魅力を教えてくれる本企画。3回目の今回は、どんなお料理と豆皿をご紹介くださるのでしょうか。

神谷さん:
「日毎に暖かさが増して、お花見の季節がやってきたと心が躍りますよね。ただ、このコロナ禍で心置きなく外出できるという方は少ないと思います。そこで今回は、おうちでお花見が楽しめる献立と、春の料理をより美しく引き立てる磁器の豆皿を佐賀県と石川県からご紹介します。

耐久性が強く、洗練された色味や透明感が際立つ磁器は、心が軽やかになる春の料理によく合います。世界的にも評価の高い日本のお花見文化を、美しい豆皿と華やかな花見料理で楽しみましょう」

飯物:【佐賀県】桜ごはん

神谷さん:
「佐賀の名産である、爽やかな香りと特大なサイズ感が特徴の七福生姜を使って、春らしい桜ごはんを作ってみました。このごはんは、生姜の香りがいいアクセントになり食も進みます。炊いたごはんに材料を混ぜるだけの簡単メニューです。もちろん、佐賀の七福生姜でなくても作れますよ。

そのままでもかわいいのですが、桜の花びらの形にして盛り付けたり、桜の塩漬けをトッピングしたりと、お花見に合わせてアレンジを楽しんでみてもいいですね」

材料(作りやすい分量)

・ごはん……茶碗2杯分
・しょうが(みじん切り)……小1個
・しそ梅酢……大さじ1杯
・砂糖……小さじ1杯

作り方

1. ごはんを炊く
2. しそ梅酢に砂糖を混ぜる
3. しょうがを2に1時間以上漬け、水気をしっかり切る。
4. 炊きたてのごはんに3を混ぜる
5. 好みで桜の形に整え、皿に盛る

洗練されたデザインと色味が美しい鍋島焼

神谷さん:
「佐賀といえば有田焼が有名ですが、鍋島焼も外せない歴史ある磁器です。鍋島焼は江戸時代、鍋島藩の御用窯として将軍や大名への献上品だったため、一般の人々には決して手に入らない焼物でした。

鍋島染付け・色鍋島・鍋島青磁の3種類がありますが、今回は翡翠のような色味と艶が美しい鍋島青磁の豆皿を使いました。凹凸による色味のグラデーションがとても美しいんです。青磁の石は元々黄色なのですが、何度も焼き上げていくことによって透明感のある青磁色に変化するそうです。お料理が際立って見える、きれいな色ですよね」

副菜:【佐賀県】玉ねぎのまるごと蒸し

神谷さん:
「玉ねぎといえば北海道が有名ですが、北海道に次いで全国第2位の生産量を誇るのが佐賀です。そんな佐賀の甘くてみずみずしい新玉ねぎを、大胆に丸ごとひとつ使った簡単メニューを考えてみました。

味付けも調理法もシンプルな蒸し料理は、玉ねぎの旨みが最大限に引き立てられます。新鮮な玉ねぎなら、最小限の味付けで十分おいしくいただけますよ。お好みでしょうゆやポン酢をかけてもいいですね」

材料(作りやすい分量)

・新玉ねぎ……小1個
・オリーブオイル……小さじ1杯
・かつお節……適宜

作り方

1. 新玉ねぎは洗ってヘタを落とし、耐熱皿にのせて十文字に切り込みを入れる
2. 1にオリーブオイルをまわしかけ、ラップをふんわりかける
3. レンジ500Wで6分程度加熱する(玉ねぎの大きさにもよるので調整を)
4. 皿に盛り付け、かつお節をかける

作り手の個性が光る!繊細な絵柄の有田焼

神谷さん:
「日本でもっとも歴史が長いといわれる佐賀県の有田焼。起源は、朝鮮半島から渡った陶工が有田の山で偶然磁器に使用できる石を発見したことでした。それまでは、国内で磁器を作ることは不可能だといわれていたそうですが、その常識をくつがえし、そこからどんどん磁器が発展したそうです。耐久性が高く、美術品から日用品まで幅広く親しまれています。

有田焼の特徴は、透き通るような白い色味と繊細な絵柄。職人さんによって一点一点手描きされているので、同じ絵柄でも、異なる個性や手作り感を楽しむことができますよ」

副菜:【石川県】えびのオーロラソース和え

神谷さん:
「石川県の代表的な水産物であるえびを使って、春らしい見た目の和え物ができました!オーロラソースの淡い色合いが、花見料理をいっそう華やかに彩ってくれますよ。

作り方は材料をただ和えるだけと、とっても簡単。冷凍のむきえびでも十分おいしくいただけるので、普段のお弁当にもおすすめです。トッピングにはパセリではなく、あえて青のりを。ちょっぴり和風っぽく仕上ります」

材料(作りやすい分量)

・むきえび……4尾
・酒……小さじ1杯
・マヨネーズ……大さじ1杯
・ケチャップ……小さじ1杯
・青のり……適宜

作り方

1. えびを耐熱皿に入れ、酒をふりラップをふわっとかける
2. レンジ500Wで2分加熱する
3. ボウルにマヨネーズとケチャップを入れて混ぜ、2を合わせてよく混ぜる
4. 皿に盛り付け、青のりをふる

大胆で豪快な五彩の色彩が美しい九谷焼

神谷さん:
「石川県で作られる九谷焼も、江戸時代に生産がはじまった日本を代表する陶磁器です。美術的価値が高く、見ていてワクワクするようなカラフルさと力強さが魅力で、普段使いにはもちろん、ハレの日にもよく利用されます。

有田焼同様、絵を描いてから色をつけていくのですが、繊細なイメージの有田焼に対して九谷焼はやや豪快な絵柄が特徴。職人が筆で描いて色をつける技法もありますが、この豆皿はあらかじめ印刷した模様を転写シールのようにして絵付けをおこないます。この技法だからこそ表現できる、味わい深くて楽しいデザインですね」

汁物:菜の花汁

神谷さん:
「汁物は、春らしさ満点の菜の花汁はいかがでしょうか。春というと、桜のピンクや新芽の緑、菜の花の黄色などを連想しますよね。なので、春の美しい風景の代表ともいえる“菜の花畑と桜”のイメージの汁物を考えました。

菜花の緑を足すことで、卵の黄色がよりいっそう映えます。菜花が手に入らなければ、カイワレや絹さやでもいいですよ」

材料(作りやすい分量)

・卵……1個
・手毬麩……適宜
・水(だし汁でもOK)……300cc
・白だし(だし汁を用意した場合は不要)……大さじ1杯
・菜の花(カイワレや絹さやなどでも代用可)……適宜

作り方

1. 麩は水で戻しておく
2. 卵を割り、よくかき混ぜておく
3. 鍋に水を入れ沸かし、白だしを入れる
4. 沸騰している鍋に卵を菜箸に沿って細かく流し入れる
5. 麩を入れ、刻んだ菜の花や青菜などを入れる

春のごちそうは磁器の豆皿で軽やかに

今回は、それぞれに特徴の異なる3つの磁器を紹介しました。洗練された色味と透明感のある磁器の豆皿は、春の料理をより軽やかな雰囲気にしてくれます。簡単でかわいい花見料理を磁器の豆皿にのせて、例年とは少し違う春の訪れを味わってみてはいかがでしょうか。


取材・文/鎌上織愛(macaroniライター)
写真/あんりちこ(macaroniライター)