知ってる? 「いえいえ」と「いやいや」の違い

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感謝されたり褒められたりした時、「いえいえ」と謙遜しながら答えることがあります。

「いえいえ、とんでもありません」「いえいえ、どういたしまして」など、ビジネスシーンでもよく使う言葉ではありますが、その使い方をきちんと把握できていますか?

また、よく似た言葉に「いやいや」という言葉もありますが、「いえいえ」との違いは何でしょうか。

今回は、ビジネスシーンでもよく使う言葉である「いえいえ」について見ていきましょう。

■「いえいえ」の意味や使い方

まずは「いえいえ」の意味や使い方について見ていきましょう。

◇「いえいえ」は打ち消しを表す言葉

『日本国語大辞典 第二版』(小学館)には、以下のように掲載されています。

いえいえ
<感動詞>
(「いえ」を重ねて意味を強めたもの)相手のことばを強く打ち消す時に発することば。

このことから、「いえいえ」とは、打ち消しの意味を持つ言葉だということが分かります。

◇「いえいえ」は丁寧な否定や謙遜をする場面で使う

打ち消しの意味を持つ「いえいえ」ですが、実際の使われ方は大きく分けると以下の2パターンです。

まずは、丁寧な否定をする場面。相手の言葉に対して「いえいえ、そうではございません」など、「いえいえ」の後に否定を意味する内容を続けて用います。

もう1つは、謙遜する場面。「いえいえ、それほどでもありません」など、「いえいえ」の後に謙遜を意味する内容を続けて用います。

■「いえいえ」を使う際の注意点

では、「いえいえ」を使う際の注意点を見ていきましょう。

◇「いえいえ」の後には言葉を続けること

「いえいえ」は、否定や謙遜の場面で文の初めに付く「感動詞」です。その後に続く文によって、否定か謙遜どちらの意味で使っているのかがはっきりします。

そのため、「いえいえ」の後には、相手に伝えたい内容が伝わるよう、例えば「そうではございません」「それほどでもありません」など、言葉を加えるようにしましょう。

そもそも、会話の際に感動詞だけで返すのは中途半端で、あまり良い印象ではありません。

「いえいえ」だけでは、否定なのか謙遜なのかニュアンスが伝わりづらく相手を混乱させかねないので、自分が何を伝えたいのか、後に続く文章には気を配るようにしましょう。

◇むやみに繰り返さないようにする

「いえいえ」は目上の方に使っても失礼ではないですが、かといってむやみに繰り返して良いものともいえません。

「いえいえ」を繰り返し過ぎると、「はい」と繰り返す「はいはい」と同じような意味になってしまうため、相手に失礼な印象を与えかねません。

ですから、同じ会話の中で何度も「いえいえ、いえいえ……」ばかり連発するという使い方は、たとえそれが謙遜の意味であれ否定の意味であれ、そして相手が目上であれ同僚・後輩であれ、避けた方が良いでしょう。

■「いえいえ」はどんな時に使う?(例文付き)

では、「いえいえ」は実際にはどのような時に使うのが良いでしょうか。

◇感謝された時(謙遜のニュアンス)

感謝されたことに対して、相手の役に立ったことが自分の喜びであると伝えたい時には、以下のような使い方をします。

☆例文

A:「これだけの資料をよく集めてくださいました。ありがとうございます」
B:「いえいえ、とんでもありません。お役に立てて光栄です」

◇褒められた時(謙遜のニュアンス)

褒められたことに対して、まだまだ力不足だと謙遜したい時には、以下のような使い方をします。

☆例文

A:「フランス語もネイティブみたいに話せてすごいですね」
B:「いえいえ、それほどでもないです。田中さんに比べたらまだまだです」

◇思いがけない事態に驚いた時(丁寧な否定のニュアンス)

急に思いがけないことを依頼されて驚いた時には、以下のような使い方をします。

☆例文

A:「ではBさん、急で申し訳ありませんが、一言お願いします」
B:「え? いえいえ、私からは何も申し上げることはございませんので……」

◇相手の問いや話を否定する時(丁寧な否定のニュアンス)

相手の言葉を否定していますが、「いえいえ」の後にきちんと言葉を続けることで、切り捨てるような冷たさは感じさせません。

☆例文

A:「この内容だとかなり予算がオーバーするのではないですか?」
B:「いえいえ、ご予算内で収まりますよ。見積書をご確認ください」

■「いえいえ」と「いやいや」の違いは?

「いえいえ」と似た言葉である「いやいや」。

両者に違いはあるのでしょうか? 確認していきましょう。

◇「いやいや」は否定を表す言葉

「いやいや」は『広辞苑 第七版』(岩波書店)によれば、

いや-いや【否否・嫌嫌】
「いや」を重ねて否定の気持を強調する語。

とあります。

このことから、「いやいや」は否定の気持ちを強調する意味を持つ言葉だということが分かります。

◇「いえいえ」は謙遜、「いやいや」は遠慮のニュアンス

「いえいえ」と「いやいや」は、いずれも否定の意味合いを持っていますが、ニュアンスが少し異なります。

「いえいえ」は謙遜のニュアンスが強いですが、「いやいや」は否定の気持ちを強調する言葉なので、どちらかというと謙遜というよりも、遠慮のニュアンスが強い言葉です。

そのため、目上の人から賞賛の言葉をもらった際などには、「いやいや」だと相手の厚意を遠慮しつつお断りする印象になりかねないので、謙遜しつつ受け入れる印象の「いえいえ」を用いる方が無難でしょう。

■「いえいえ」は、謙虚な姿勢を表現してくれる便利なフレーズ

ビジネスシーンにおいては、最初の一言で、相手の言葉をどのような態度や気持ちの強さで受け止めているのか伝わってしまうことがあります。

「いえいえ」は謙遜のニュアンスを持つ言葉ですが、そればかりを繰り返したり多用し過ぎたりしてしまうと、かえって相手に失礼な印象を与えかねない場合もあります。

また、「いえいえ」だけだと否定なのか謙遜なのか伝わりづらいため、その後に続く言葉を加えることも忘れないように心掛けましょう。

とはいえ、謙虚な姿勢を表す「いえいえ」は、コミュニケーションを円滑にしてくれる便利なフレーズでもあるので、その場に適した使い方が自然にできるようになると良いですね。

(松岡友子)

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