2017年に発売され、全世界での公式販売数が1000万本を超えた(※2019年12月31日時点)PS4用オープンワールドアクションRPG『Horizon Zero Dawn』。舞台は、文明が滅びた1000年後の地球。機械の獣を狩る戦略性の高いアクション、高密度なグラフィック、主人公アーロイの出生と世界の謎をめぐる壮大なドラマで、多くのプレイヤーを魅了しました。

緻密に描かれた大自然の中を機械獣が闊歩する


今回レビューするゲームは、PC用ソフトウェア『Horizon Zero Dawn Complete Edition』。2017年にPS4/PS4 Pro向けに発売された同名タイトルのPC版です。

『Horizon Zero Dawn』のコンプリート版となっており、ゲーム本編に加え、DLC『凍てついた大地』、アイテムやレベルを引き継いだ周回プレイが可能な「New Game+」モード、難易度「Ultra-Hard」モードといったコンテンツやパッチがすべて楽しめます。

2020年8月7日の発売時には、低フレームレートなどの不具合が確認された本作。本稿ではストーリーやアクション面のレビューのほかにも、ベンチマーク機能を使い、画質設定ごとの平均フレームレートを調べています。ぜひ購入の際の参考にしてください。

○なぜこの世界が生まれたのか。最後まで夢中になれるストーリー

主人公アーロイは、1000年後の地球に生きる「ノラ族」の少女。なぜか彼女には血のつながった家族がおらず、出生は謎に包まれています。それゆえに「異端児」として疎まれるアーロイですが、育ての親「ロスト」と共にたくましいハンターへと成長。なぜ文明は滅びたのか、なぜ機械の獣が生まれたのか。そして主人公アーロイはどこから来たのか。すべての謎を解き明かすため、アーロイは広大な世界へと旅立ちます。

ストーリーはアーロイの幼少期から始まる。チュートリアルでは育ての親「ロスト」と共に狩りを学ぶ


草に覆われた戦車のようなもの。かつてここで何があったのだろう


『Horizon Zero Dawn』にはメインクエスト、サイドクエスト、サブクエストの3種類があります。クリアには40時間以上かかりましたが、中だるみすることなく楽しめました。

メインクエストは謎が謎を呼ぶ展開で、最後までプレイ意欲が下がることはありません。ストーリーを進めるたびに、知りたかった真実が少しずつ明らかになっていきます。

経験値や報酬を得られるサイドクエスト・サブクエストの数もたくさん。「物を集める」「人を助ける」という内容が多く、少し冗長さを感じましたが、それでも新しい出会いや物語を通じて、さまざまな部族の内部事情や部族同士の関係性を知ることができました。メインクエストの補強となる物語を味わいながら、キャラクターを成長させられます。

クエストを進めず、広大なマップを気の向くままに冒険することも『Horizon Zero Dawn』の楽しみかたの1つです。1000年前の人類が残した記録「データポイント」や、過去の文明の遺跡が見つかるでしょう。

サイドクエストで出会う「カージャ族」のひとり。部族ごとに衣服の特徴が違い、それぞれの個性がはっきりと伝わってくる


データポイントが記録している情報。21世紀に生きる私たちの生活とどこか似ているが、もっと未来の話のようだ


遺跡の中を歩く機械獣、トールネック。オーバーライドという技で味方にすると、周辺のマップが解放される


『Horizon Zero Dawn』の世界を冒険する喜びは、主人公アーロイの存在抜きでは語れません。プレイヤーがアーロイに深く感情移入できるようになっているので、彼女が遭遇する出来事に一喜一憂するでしょう。

プレイヤーは、ゲーム序盤で「異端児」と疎まれるアーロイの孤独を痛感します。幼いころのアーロイとしてチュートリアルをプレイするなかで、実際に石を投げられたり、嫌味を言われたりするからです。

チュートリアルを終え村の外に出れば、誰もアーロイを異端児と呼びません。この解放感はプレイヤー1人では味わえなかったはず。彼女が村の外で他の部族と出会い、新しい絆を作ったときのうれしさもひとしおです。

異端児という暗い生い立ちがあっても、アーロイの好奇心は止められない


筆者はひとまずメインクエストをクリアすることを目標にプレイしましたが、クリアしても達成度は40%ほど。周回プレイが前提のゲームと言えます。

周回プレイモードの「New Game+」ですが、こちらは最初のメインクエストからしかスタートできません。後半に発生するサイドクエストやDLCをクリア後にすぐプレイしたい人は、「New Game+」を使わないほうがいいでしょう。

「New Game+」を使用しない場合は、レベルやアイテムを引き継いだまま、最終メインクエストの直前からスタートします。

○機械獣を「狩る」シナリオは無限大!

『Horizon Zero Dawn』で最もおもしろい要素、それは何といっても自由度の高い「狩り」でしょう。機械獣の動きを分析し、戦術を練り、弓で破壊すればすっかりハンターになった気分です。

狩りの初めには「フォーカス」という機械を使って機械獣を観察し、戦う方法を考えます。フォーカスは機械獣の歩行ルートや弱点が分かるデバイスです。

動物らしく野性的にふるまう機械獣たちですが、あくまで彼らは機械なので、ふつうは決まったルートしか移動しません。このルート上に罠をしかけたり、気づかれない間に「サイレントストライク」というスキルで強烈な一撃を食らわせることもできます。

背の高い草の中に隠れるとステルス状態になり、機械獣に見つかりません。見つかってしまうと機械獣は凶暴化し、ルートを無視して襲いかかってきます。

矢印で表されている機械獣の歩行ルート


フォーカスを通して機械獣を見ると黄色で表示される部位が、機械獣の弱点です。弱点は小さく、狙いにくい場所にあることもしばしばですが、破壊すれば大ダメージを与えられます。

動力源や胴体など、1匹の機械獣に対して複数の弱点があることが多いです。しかも、その弱点ごとに「弱点属性」が決まっています。動力源は火属性の武器に弱く、胴体は雷属性の武器に弱い、といった具合です。

ブロードヘッドという機械獣の弱点は、背中にあるブレイズキャニスター。火属性の攻撃に弱いことが分かる


武器ごとに属性が違うため、たった1匹の機械獣に対してもあらゆる武器を使う必要があります。弓・槍からショットガンのような「ラトラー」、グレネードを放つ「スリング」など、多彩な武器を組み合わせて戦いましょう。

遠距離武器・罠を使ったスマートな戦い、近接武器を使った荒々しい戦いのどちらも楽しめることが魅力。機械獣は体力が減ると動きが鈍くなります。遠くから弓や罠で体力を削り、弱ってきたところで一気に槍で叩く、といった緩急のある狩りが楽しめます。

機械獣をハッキングし味方にする「オーバーライド」という技を使えば、さらに戦術の幅が広がります。機械獣同士を戦わせたり、味方の機械獣に乗りながら狩りをしたりといったプレイが可能です。

ゲーム序盤で手に入る「カージャ族の狩人の弓」。通常の弓のほかに、火矢が使える


機械獣に気づかれていなければオーバーライドできる


機械獣に乗って狩り! ハンター気分は最高潮に


このように、『Horizon Zero Dawn』の狩りはプレイヤーの数だけ戦術があるので、試したいことが尽きないでしょう。ゲームを進めるとより大きく凶暴な機械獣が登場しますが、試行錯誤して倒せたときの達成感はたまりません。まさしくハンターとしての成長を感じます。

○マウス操作と弓の相性は抜群! PC版ならではの機能

PC版発売にあたって、キーボード&マウス操作・ウルトラワイドモニター対応・視野角調整といった新機能が追加されました。

筆者はコントローラー操作のほうが慣れているのですが、実際プレイしてみると、マウスのほうが機械獣の弱点を狙いやすく、小さな弱点を弓で射抜くような、繊細なエイムができました。

一方、コントローラー操作で残念だったことが。ABXYボタンのコントローラーを使うと、Bボタンで「決定」になってしまうのです。ゲーム内のボタン配置設定からは変えられません。売りたくない資源を売ってしまうなどと、慣れるまでにトラブルが多発……。今後のパッチで修正されることに期待です。

右下を見ると、Bボタンで「選択」になっている


また、PC版では視野角調整の恩恵が大きいと感じました。死角から機械獣の群れが襲いかかってくる場合があるので、常に狩場全体を把握しておきたいからです。視野角を広めにするだけで、より安心して狩りができます。

視野角80


視野角100


PC版には照明や光の反射の改良、プレイヤーの動きに足元の葉っぱが反応するようになるといった、こまやかなアップデートも。PS4/PS4 Pro版発売時でも話題になったフォトモードで、よりリアルになった『Horizon Zero Dawn』の世界を撮影できます。

筆者お気に入りの1枚。被写体深度の調節、フィルター、時間調節などが可能


○推奨スペックより上のPCでは高パフォーマンス、不安も残る

PC版『Horizon Zero Dawn Complete Edition』は、発売時に多くの不具合が見つかったことで話題になりました。クラッシュ・セーブデータ消失・特定のGPUや環境下での低フレームレートといったバグが報告され、5回にわたるパッチにより修正が試みられています。

そのおかげで筆者がプレイした際には、クラッシュやセーブデータ消失は確認できませんでした(※最新パッチ1.05を適用時、2020年9月16日配信)。

一方、低フレームレートはどうでしょうか。PC版ではベンチマークツールが導入されているので、画質設定ごとの平均フレームレートを調べてみました。

ちなみに筆者は推奨スペックよりも高い、つまりPS4 Proの性能を上回るPCを使っています。Steam掲載の推奨スペックは、PS4 Proの性能よりも少し上です。

・推奨スペック

CPU:Intel Core i7-4770K or AMD Ryzen 5 1500X

GPU:GeForce GTX 1060(6 GB) or Radeon RX 580(8GB)

メモリ:16GB

・筆者使用PCスペック

CPU:Intel Core i7-10700K

GPU:GeForce RTX 2060 SUPER(8GB)

メモリ:16GB

画質設定にはプリセットで4つのモード(パフォーマンス優先、デフォルト、クオリティ優先、最高画質)があります。

フルHD/パフォーマンス優先/フレームレート無制限の場合。平均133fps。スコアは24107


フルHD/デフォルト/フレームレート無制限の場合。平均116fps。スコアは20951


フルHD/クオリティ優先/フレームレート無制限の場合。平均97fps。スコアは17563


フルHD/最高画質/フレームレート無制限の場合。平均90fps。スコアは16218


4K、HDR/デフォルト/フレームレート無制限の場合。平均60fps。スコアは10942。筆者はこの設定かつ、V-syncをオンにした状態で本編をクリア。平均40fpsほどまで落ちたが、特にカクつきなどは気にならずプレイできた


筆者のPCスペックでは、PS4 Proを大きく上回る結果に。4K・HDR/デフォルトでも快適にプレイできました。

ただ最新パッチノート(※2020年9月16日配信)には、今も不具合として「特定のGPUや環境下での低フレームレート」が記載されています。

最高fps・最低fpsの振れ幅も大きく、依然としてパフォーマンスが不安定な状態のようです。推奨スペックに近いPCでは、PS4 Pro以上のパフォーマンスが出ないという報告もあります。

○機材に自信があるならオススメしたい作品

いくつか不安な点は残りますが、筆者のPCでは高パフォーマンスを出してくれたPC版『Horizon Zero Dawn Complete Edition』。筆者と近い、またはそれ以上のスペックのPCを持っている人には、自信を持っておすすめしたい作品です。特定の環境下での低フレームレートが発生していはいますが、筆者と似た構成のPCであれば、より安心してプレイできるでしょう。

なお、2021年には続編『Horizon Forbidden West』(PS4/PS4 Pro/PS5向け)の発売が予定されています。

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