とろとろ、ぷりぷり、味がしっかり染みこんだ牛すじ料理はくせになるおいしさですよね。

しかし、ただ茹でただけではやわらかくならないし、くさみもあるし…と、下処理が難しいイメージもあるでしょう。実は、牛すじは意外にかんたんな処理方法があり、応用範囲も広いのです! 高タンパク低脂質コラーゲンたっぷり、ヘルシー食材の「牛すじ」を、ぜひぜひ、どんと大量に購入していろんな料理に使えるよう、詳しくご紹介していきます。

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■牛すじの下処理方法
牛すじ料理は、下処理がかなめです。下処理さえきちんとしておくと、くさみもなく、かたくもなく、おいしくいただけます。では、その手順からご紹介していきます。

・生姜とネギを使う基本の下処理



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牛すじの下処理に準備するものは、牛すじが500gあったとしたら、薄切りにした生姜1かけ分と長ねぎの青い部分1〜2本分です。牛すじは、下処理後に切り分ける方がサイズを揃えやすいので、今回は買ってきた大きさのまま下処理しますね。

まず『茹でこぼす』
この「茹でこぼし」の手順は、どの下処理方法でも同じですので、しっかり覚えてくださいね。

最初は何も入れずにアクを取るために茹でこぼします。たっぷりの水を入れた鍋にすじを入れ沸かします。アクが出てきますがそのまま沸騰させて1分ほどたったところでアクごとゆで汁を捨ててください。アクがたくさん出る牛すじでしたら、この茹でこぼしをもう1〜2度しておいてくださいね。

汚れをしっかり洗う
ざるなどにあげた牛すじをきれいに洗います。鍋肌にアクがついているので、ゆでる際に使った鍋も洗っておいてください。

水から茹でる
鍋に牛すじをもどし入れ、うすぎり生姜と長ネギも入れ、水をたっぷり加えて火にかけます。

牛すじの茹で時間
牛すじの茹で時間は、沸騰してから弱火にし、1時間半〜2時間です。めやすは、かたいすじがやわらかくなるまで。

牛すじの下ごしらえとアク
ここでは、アクが出てきたらすくい取ってください。牛すじがすべて茹で汁に浸かっている状態を保つため、ときどき水を加えてくださいね。この茹で汁はそのままカレーやスープに使えますし、おでんのだしに加えて使えるので、安易に捨てないようにしましょう。

・米のとぎ汁を使う方法



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生姜の風味をつけたくないときや、茹で汁を利用する予定がないのであれば、米のとぎ汁を使いましょう。茹でこぼしのあと、米のとぎ汁で1時間半〜2時間茹でてください。もし米のとぎ汁がないときは、少量の米を入れて同じように茹でればOKです。とても簡単ですね!

・圧力鍋を使った牛すじの下処理



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圧力鍋を使うと20〜30分ほどで下処理ができます。茹でこぼしをしたあと、圧力鍋に水と牛すじを入れて火にかけます。圧力鍋の種類によって使い方や加圧時間が違うので説明書を参考にしてくださいね。

■牛すじの下処理後の保存
下処理は難しくないですし、それほどの手間ではないですが、やはり多少は時間がかかります。また、一度に大量に下処理することが可能ですので、いろいろな料理に分けて活用したいですよね。

また、牛すじをたくさん買ったときは、一度にまとめて下処理をしたいはず。下処理後の保存方法を知っておけば、すべて解決しますよ。

・冷凍保存がおすすめ


まず、下処理した牛すじは食べやすい大きさに切り分けます。このままの牛すじは冷蔵では3日ほどしかもちません。そこで、冷凍保存です。

乾燥をふせぐためにも、茹で汁ごと冷凍用保存袋に入れましょう。もちろん茹で汁は料理に使えますので、余った分も冷凍保存用袋に入れて冷凍保存してくださいね。

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もし、下処理する時間がない場合は、生のまま冷凍保存してしまいましょう。後日解凍し、下処理する際は、次のような手順がおすすめです。
1.凍ったまま、たっぷりの水から茹でていきます。
2.沸騰させ、徐々に解凍されて外側から剥がれてきたすじ肉を順に引き上げます。
3.引き上げた肉をきれいに洗います。ここまでが茹でこぼしです。
4.生姜と長ねぎを入れて1時間半〜2時間茹でます。


 

・冷凍保存可能な期間


冷凍保存のめやすは1ヶ月です。使い切れるか不安に思われるかもしれませんが、牛すじは使い道が多く、あればきっと重宝します。4つに分けて冷凍してあれば、週1回の牛すじ料理ができますよ。

・まとめて下ごしらえして保存しよう



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せっかく手間をかけるのですから、少なくとも500g〜1kgぐらいはまとめて下処理をしてしまうほうが便利です。1kgでも4つに分けておけば250gずつですし、たとえばシチュー、煮込み、おでん、炒め物と、目先の違う料理ができます。

関西付近のスーパーなら牛すじ肉は当然のように売られていますが、お肉売り場で並んでいないときはお店の人に聞いてみてください。店頭に並べていないだけかもしれません。個人の精肉店でも、売り場に並べていないだけで、実は在庫がある…ということもあります。

また、メガサイズが売りの業務スーパーなどでは、国産肉ではないことが多いですが1kgで1,000円以下だったりします。外国産であっても、下処理は上記と同じようにしてくださいね。

■牛すじのゆで汁の活用方法
下処理でできたゆで汁は、おいしいエキスがつまっています。牛すじの料理に使うもよし、ゆで汁を使ってもう一品作るもよし、ですよ。

 

・牛すじカレーに



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牛すじカレーの専門店もよく見かけますが、家でもかんたんにできます。ここでは和風味の牛すじカレーをご紹介します。今回、材料は長ねぎを使っていますが、牛すじはどんな具材とも相性がいいですよ!

和風牛すじカレー
材料
ごはん  800g
下処理した牛すじ  300g〜400g
長ねぎ  1本(なければ玉ねぎ1個))
牛すじのゆで汁  400ml
水  400ml
めんつゆ(2倍濃縮)   小さじ2
顆粒だし  小さじ1
チューブの生姜  大さじ1
カレールー  80g
サラダ油  小さじ2
しょうゆ  小さじ1/2
お好みで一味唐辛子  適量

作り方
長ねぎは1cmのななめ切りにしておきます
牛すじは一口大に切ります
熱した鍋にサラダ油をひき、長ねぎを炒めます。続いて牛すじを入れて炒めます
長ねぎがしんなりしてきたら水とゆで汁、めんつゆ、顆粒だしを入れます
沸騰したら火を弱め15分ほど煮ます
いったん火を止めカレールーを入れ、溶かします
生姜を加えて15分ほど煮込み、しょうゆをたらします
味がなじんだら火を止めます。ごはんに盛りつけ、お好みで一味唐辛子をふってくださいね

・だし汁と合わせておでんに



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コンビニおでんの影響なのか、おでんに牛すじが入っていることが全国区になってきましたね。もともとは関西特有のメニューだったようです。

牛すじからもおいしいおだしが出て、そして牛すじにもおいしいだしが染みこんだおでんの作り方をご紹介します。

牛すじ入りおでん
材料
下処理した牛すじ  300g
大根  20cmほど
卵  4個
こんにゃく  1パック
厚揚げ  4個
竹輪など練り物  数種類
牛すじのゆで汁  6カップ
しょうゆ  大さじ6
みりん  大さじ6
酒  1/4カップ
和がらし  適宜
[だし汁]
水  8カップ
だし昆布  10cm
削りガツオ  40g

作り方
まず、だし汁を作ります。鍋に水とだし昆布を入れ、1時間おきます(前日から漬けておいても)。鍋を火にかけ、沸騰直前に昆布を取り出し、沸騰したら削りガツオを加えます。弱火で少し煮て火を止め、しばらくおいてからざるでこします
卵は茹でて皮をむいておきます
大根は3cm幅の輪切りにし皮をむき、面取りして片面に十文字の隠し包丁を入れておきます。鍋に大根を入れ、米のとぎ汁を加えて(なければ少量の米を加えた水)で20分下ゆでし、洗って水気をきります
こんにゃくは三角など好みの形に切って水からゆでてあく抜きをします
厚揚げや練り物は熱湯をかけて油抜きし、水気をきります
鍋に牛すじのゆで汁とだし汁、しょうゆ、みりん、酒、を合わせて煮立てます
牛すじ、練り物、厚揚げ、大根、こんにゃく、ゆで卵の順に入れていきます。煮立つ寸前から弱めの中火にし、落としぶたをして1時間以上は煮込みます。沸騰させるとだしがにごってしまいますし、香りもとんでしまうので気をつけてくださいね
器に盛り、好みで和がらしを添える

・そのままスープに



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そのままでもコラーゲンたっぷりでおいしいスープですが、今回はわかめを加えたスープをご紹介します。

牛すじ入りわかめスープ
材料
牛すじのゆで汁  2カップ
しょうゆ  小さじ2
酒  大さじ1
ごま油  小さじ1/2
チューブのにんにく  2cm
チューブの生姜  2cm
にら  1/6本
乾燥カットわかめ  6g
塩こしょう  少々

作り方
にらは食べやすい長さにカットしておきます
水戻しが必要なわかめの場合はもどしておきます
牛すじのゆで汁に、しょうゆ、酒、にんにく、生姜、にらを加えて、ひと煮立ちさせます
わかめを入れます
ごま油を落とします
塩こしょうで味を整えます。好みで薬味はねぎでもパクチーでも
ナンプラーを加えるとタイ風のスープになります。ゆで汁の応用は広いので、いろいろ試してみてくださいね。

■牛すじのおすすめレシピ
下処理さえ終わっていれば、細く切ってポン酢で和えるだけでも一品になりますが、せっかくなので手軽に作れるメイン料理をご紹介します。

・炊飯器で簡単煮込み



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コトコト長く煮込んでお鍋につきっきりなイメージの牛すじの煮込みですが、炊飯器でラクしてかんたんにおいしく作っちゃいましょう。

牛すじの煮込み
材料
下処理した牛すじ  400g
大根  200g
こんにゃく  200g
酒  大さじ5
みりん  大さじ5
しょうゆ  大さじ5
砂糖  大さじ1
水  400ml
きざみねぎ
七味唐辛子

作り方
牛すじ肉と大根を食べやすい大きさに切ります
こんにゃくは一口大にちぎってアクをとるため湯がいておきます
炊飯器に牛すじ、大根、こんにゃく、水、酒、みりん、しょうゆ、砂糖を入れ、普通に炊きます
炊きあがったら器に盛りつけ、薬味にねぎと七味唐辛子をかけます

 

・圧力鍋牛すじカレー



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時間がかかるカレーも圧力鍋を使えば短時間で仕上がります。

圧力鍋での下処理方法からご紹介していきますね。ここでは酒を使っていますが、もちろん生姜とねぎでもOKです。

圧力鍋での下処理
まず、ゆでこぼししたあときれいに洗った牛すじを圧力鍋に入れ、水2カップと酒1カップを加えふたをしっかりと閉め、おもりをセットします
おもりが振れるくらい沸騰したら弱火にして10分。このとき弱火過ぎるとおもりが止まってしまうので、止まらない程度の火加減にしてください
圧力鍋はおもりが振れていて加圧されていることを確認しながら煮込んでください
牛すじは白く固いすじが多ければ加圧時間を長めに、薄くやわらかめのすじ肉なら短めにセットします
10分経ったら圧が下がるまでそのまま放置します。必ず圧が下がってからふたを開けます
茹で汁はカレーを作るときに使うので、こして置いておきます


基本の牛すじカレー
材料
下処理した牛すじ肉  500g
牛すじのゆで汁+水 (合計がルーの箱に表示された水の量になるように)
にんじん  1本
玉ねぎ  2個
じゃがいも  1個
市販のカレールー  1箱

作り方
玉ねぎはくし切り、にんじんは乱切りにしておきます
じゃがいもは大きめの乱切りにして水にさらしておきます
圧力鍋でサラダ油を熱し、玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、牛すじ肉を入れて炒めます
ゆで汁(+水)を鍋に入れふたをしっかりと閉めておもりをセットし、10分加圧します
火を止め、圧が下がったらふたを開けてカレールーを入れ、溶かします
とろみがつくまで煮込んだらできあがりです


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・シンプルな牛すじ炒め


牛すじは炒め物にも向きます。シンプルに塩こしょうでも、しょうゆ味、みそ味、どれもおいしいですが、ここではステーキの味わい、ガーリックバター味の炒めものをご紹介します。

牛すじガーリックバター炒め
材料
下処理した牛すじ肉  300g
長ねぎ  1/2本
エリンギ  1/2パック
料理酒  大さじ1
チューブのにんにく  小さじ1
塩こしょう  小さじ1/2
バター  20g
一味唐辛子  適量

作り方
長ねぎとエリンギはななめ切りにします
中火で熱したフライパンにバターを溶かし、長ねぎ、エリンギ、一口大の牛すじを炒めます
長ねぎとエリンギに火が通ったら、料理酒、にんにく、塩こしょうを入れ、中火で炒めます
器に盛り付け、一味唐辛子をかけて完成です

・作っておけば重宝なぼっかけ



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ぼっかけとは、神戸名物の牛すじを甘辛く煮た料理です。ぼっかけはそのまま一品でよし、ごはんや麺類、お好み焼きにのせてよし。応用もきき、簡単に作れるのがたいへん魅力的です。

ぼっかけ
材料
下処理した牛すじ肉  500g
こんにゃく  200g
水  300ml
しょうゆ  60ml
みりん  大さじ3
料理酒  大さじ2
砂糖  大さじ2
青ねぎ  適量

作り方
こんにゃくは手やコップなどでちぎって水からゆで、あく抜きをしておきます
鍋に水、しょうゆ、みりん、料理酒、砂糖を入れ中火で熱し、煮立ったら一口大の牛すじとこんにゃくを入れ、30分ほど煮込みます
煮汁が1/3程度になったら火を止めます
器に盛り付け、小口に切った青ねぎを散らして完成です

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ぼっかけはごはんにのせて丼にしてもおいしいですし、中華麺と炒めればそばめしになります。また、おうどんのトッピングにも合います。お好み焼きのキャベツを、きざんだ青ネギに代えてぼっかけを入れて焼くと、目先の変わったねぎ焼風にも大変身しますよ。

関西では家庭でよくつくられているメニューです。今までなじみがなかった方も、ぜひ作ってみてくださいね。

■ほろほろやわらか牛すじ、ゆで汁まであますことなく堪能しましょう!

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少し時間がかかるだけで、牛すじの下処理はかんたんです。一度にまとめて下ごしらえしてしまって冷凍室のレギュラー選手にしてください。

関東や東北の地方の方は、牛すじの家庭料理になじみがないかもしれません。下処理の時間はかかりますが、一度に大量の処理ができると考えれば、そんなに手間ではないはずです。牛すじがあれば、日々のお料理の幅も広がりますし、本当に重宝しますよ。
(AYA)