by Official SpaceX Photos

アメリカの民間宇宙企業・SpaceXが推し進めている、1万基以上の人工衛星を使ってインターネット接続環境を地上に提供する計画「Starlink」はすでに500基以上の人工衛星を打ち上げ、承認手続きも行い、一部地域ではベータテストが可能な段階となっています。そんなStarlinkによるインターネットの速度テスト結果が、掲示板サイト・Redditでリークされています。

Speedtest: 21 ms 46 Mbps down 10 Mbps up : Starlink

https://www.reddit.com/r/Starlink/comments/i84klo/speedtest_21_ms_46_mbps_down_10_mbps_up/g17v5r6/

List of Confirmed Starlink Speed Tests : Starlink

https://www.reddit.com/r/Starlink/comments/i9w09n/list_of_confirmed_starlink_speed_tests/

SpaceX Starlink speeds revealed as beta users get downloads of 11 to 60Mbps | Ars Technica

https://arstechnica.com/information-technology/2020/08/spacex-starlink-beta-tests-show-speeds-up-to-60mbps-latency-as-low-as-31ms/

Starlinkのベータテストはクローズドで実施されており、ベータテストの参加者は秘密保持契約が義務付けられていますが、RedditにStarlinkの回線速度測定結果が投稿されました。この結果はOoklaのSpeedtest.netを使って実施されたもので、11回分の結果が公開されています。

測定場所はベータテストが提供されているワシントン州シアトル、あるいはカリフォルニア州ロサンゼルスで、下りの速度は11Mbps〜60Mbps・上りの速度は5Mbps〜18Mbpsであることが判明。また遅延を示すPing値は、31ミリ秒〜94ミリ秒でした。以下の画像は公開された結果の一部。



また、Redditユーザーの有志が作成したテスト結果の一覧が以下で、この表にはPing値20ミリ秒〜27ミリ秒という記録も追加されています。



Speedtest.netが公開している、アメリカにおける2018年の有線ブロードバンド回線の平均速度は下り96.25Mbps・上り32.88Mbpsとのことなので、Starlinkの回線速度は従来のブロードバンドのおよそ6割程度には到達していることになります。

また、Speedtest.netによれば、オンラインゲームが盛んな世界35都市におけるPing値の平均値は、ロサンゼルスで20ミリ秒、東京で28ミリ秒とのことで、Starlinkの回線は、少なくとも遅延では大都市のブロードバンド回線レベルに十分追いついているといえます。ただし、Starlinkの衛星1万基以上が完全に配備され、正式サービス開始に伴って利用者が増加した場合、速度や遅延は大きく変化する可能性があるので注意が必要です。



SpaceXのイーロン・マスクCEOは、2020年3月に開催された人工衛星関連のカンファレンス「Satelite 2020」で、「Starlinkによるインターネット接続は遅延が非常に小さくなるので、かなり良い体験が得られるはずです」「20ミリ秒未満の遅延を目指しているので、ゲームのオンライン対戦でも高速な応答が期待できます」と語り、地上で有線のインターネット接続サービスが提供されていない地域でも、ブロードバンドに匹敵する回線速度のインターネットが提供できるとアピールしています。

Elon Musk, Founder & Chief Engneer, SpaceX - SATELLITE 2020 Opening Day Keynote - YouTube

一方、連邦通信委員会のアジット・パイ議長はマスク氏の主張する「ブロードバンド回線並の遅延」という部分に疑問を呈し、2020年5月にはStarlinkによる通信事業を「遅延が100ミリ以上のプロバイダー」として分類するよう提案しています。この提案は撤回されましたが、今回のテスト結果では、Starlinkの回線がアジット・パイ議長の予想をはるかに上回る速度と遅延のなさを誇ったことが示されたといえます。