マスクを着用しているとiPhoneの顔認証「Face ID」が使えず、不便を感じている人も多いのではないだろうか(筆者撮影)

新型コロナウイルス感染症は、徐々に収束し、緊急事態宣言も解除された。一方で、感染者はくすぶり続けており、「第2波」も警戒されている。こうしたなか、感染拡大を防止しながら日常生活を送るための「新しい生活様式」として、マスク着用の機会が増えている。これで困るのが、顔認証の「Face ID」を搭載したiPhoneだ。


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アップルはiPhone Xで指紋センサーのTouch IDを撤廃。このモデルの後継機は、いずれもFace IDのみとなり、Touch IDを搭載した現行モデルは4月に発売された第2世代のiPhone SEのみとなった。

Face IDは、人間の顔を立体的に検出しており、鼻や口などの形も読み取っている。そのため、マスクを着用しているとFace IDが利かず、ロックを解除することができなくなる。

Face IDは、単に画面のロックを解除できるだけでなく、Apple Payの認証などにも利用される。頻度が高い機能だけに、マスクで使えなくなってしまうのは残念だが、設定を工夫することで、ある程度、手間を減らすことは可能だ。今回は、ロック解除に関する技を紹介していこう。

1. Face IDの登録をやり直す裏技

アップルも、マスク着用でFace IDが事実上使えなくなる問題を看過していたわけではない。その証拠に、5月に配信が始まったiOS 13.5では、マスク対応のアップデートが加わっている。OSのバージョンアップを済ませていない人は、まずiOS 13.5をインストールすることをお勧めしたい。

ただし、マスク対応といっても、あくまで急場をしのぐための部分的な対応にとどまっている。iOS 13.5では、マスクを着用していることが認識されると、自動的にFace IDがキャンセルされ、すぐにパスコードの画面が表示される。それ以前のバージョンよりは素早くロックを解除できるようになるが、マスクを着用したままFace IDが利用できるようになるわけではないため、注意したい。

Face IDに登録する顔を変えるのも、有効な手段の1つだ。とはいえ、マスクを着けたままだと、顔を登録する際に鼻や口を出すよう指示が出るため、ちょっとしたコツが必要になる。


マスクで口や鼻を半分だけ覆ったまま顔を登録すると、マスク着用時にFace IDが通ることがある(筆者撮影)

マスクを外し、半分に折った状態で、鼻や口を半分隠しながら顔を認識させていくという方法がそれだ。Face IDには、容姿を2つまで登録できるため、残り半分も設定しておくと精度が上がる。

設定は、「設定」アプリの「Face IDとパスコード」で行う。ここをタップして、パスコードを入力し、「Face IDをリセット」を選んで登録されている顔をいったん削除しよう。その後、Face IDに登録する顔を変更するといい。2つ目の顔を登録するときは、「もう1つの容姿をセットアップ」をタップする。

筆者が試してみたところ、マスクを鼻の頭ぐらいまでズラせば、Face IDが顔を読み取ってくれた。ただし、効果はマスクの種類によっても異なるうえに、きちんと認識されないこともある。そもそも、鼻をスッポリ覆わないのは、マスクの正しい着用方法とも言えないため、この裏技も万全ではない。成功したら御の字といったところで、基本的にはパスコードを入力するつもりで臨んだほうがいいだろう。

2. パスコードの桁数を短いものに変更

セキュリティーの強度は下がってしまうが、頻繁にパスコードを入力しなければならないのであれば、桁数を短くしてしまってもいいだろう。iPhoneのパスコードの標準は6ケタ以上で、最低100万通りの組み合わせがあるが、これを4ケタにすれば、組み合わせは1万通りと100分の1に減ってしまう一方で、素早くロックを解除することが可能になる。


パスコード入力を前提に考え、桁数を短くしておくのも手だ(筆者撮影)

パスコードの桁数を変更したいときは、「設定」アプリで「Face IDとパスコード」を選択し、現状のパスコードを入力したあと、「パスコードを変更」をタップする。

次に、変更前のパスコードを入力すると、新しいパスコードを入力する画面が現れる。ここではそのままパスコードを入力せず、「パスコードオプション」をタップしよう。すると、「カスタムの英数字コード」「カスタムの数字コード」「4桁の数字コード」という選択肢が現れる。

パスコードを簡単にしたいときは、「4桁の数字コード」を選択するといい。その後、任意の4桁の数字を入力し、確認のため、同じ数字を再度入力すると、パスコードの変更が完了する。

iPhoneは、繰り返しパスコードの入力を失敗すると、一定時間、操作を受け付けなくなる。そのため、4桁だからといって、1万通りをすぐに試せるわけではないので安心だ。不安なときは、パスコードを10回間違えたときにデータを消去するよう設定しておくといい。

また、同じ4桁でも英数字の組み合わせなら、組み合わせは大幅に増えることになる。前述のパスコードオプションで「カスタムの英数字コード」を選ぶと、アルファベットや数字、記号を組み合わせたパスコードを作成可能だ。カスタムの英数字コードでも、最低4文字の入力が必要になる。4桁の数字で不安な人は、こちらを試してみることをお勧めしたい。

3. ロックまでの時間を延ばす方法も

とはいえ、iPhoneを操作するたびにパスコードを入力するのは、Face IDに慣れていると少々面倒に感じることがある。

このようなときには、一定時間、端末にロックがかからないようにしておくことができる。ただし、Face IDを画面のロック解除に使っている場合は、スリープ状態になると即座にロックがかかってしまう。そのため、この設定をする際には、画面ロックのFace IDを無効にする必要がある。どうせマスクでFace IDが機能しないなら、いっそのこと使わないというのがこの方法だ。


ロック解除時のFace IDを無効にすると、パスコードを要求されるまでの時間を変更できるようになる(筆者撮影)

設定方法は次のとおり。「設定」アプリで「Face IDとパスコード」を開き、パスコードを入力。「Face IDを使用」の項目にある、「iPhoneのロックを解除」をオフにしてみよう。

すると、同じ画面にある「パスコードを要求」を、「即時」以外に変更できるようになる。選択肢は、「即時」「1分後」「5分後」「15分後」「1時間後」「4時間後」の6種類(設定によって選択肢が変わる場合もある)。長ければ長いほど、iPhoneのロック解除が不要になり、利便性は上がる。

一方で、画面に表示される注意書きにもあるとおり、短ければ短いほど、セキュリティーは強力になる。例えば4時間や1時間にするのは、iPhoneを紛失したときのことを考えると、少々リスクが高い。拾われた人が、残りの時間、自由に自分のiPhoneを操作できることになってしまうからだ。利便性と安全性をある程度両立させたいときは、5分や15分を選んでおくといいだろう。

ただし、それでも、即時ロックをかけるよりは、情報漏洩のリスクが高まることに変わりはない。この設定は、新型コロナウイルスの感染症が完全に終息するまでの間の、一時的な措置にしておいたほうがいいだろう。

どうしてもセキュリティーが不安という場合は、Touch IDに対応した第2世代のiPhone SEを選択する手もある。Androidスマホの中には顔認証と指紋認証を併用できる端末も多いが、次期iPhoneがそのような仕様になることも期待したい。