新型コロナウイルス関連記事という逆風の下で広告販売を試みるなか、ニュースパブリッシャーは、精神科医のエリザベス・キューブラー=ロス氏が提唱する「死の受容のプロセス」を経てきた。まず、彼らはニュースの直接的なスポンサー契約に対する需要がないことに腹を立てた。次に、記事に登場する「新型コロナウイルス」のような単語を最小限にしようとした。そしていま、市民や経済、社会の立ち直りを強調する前向きな記事のパッケージに力を注ごうとしており、ある程度成功しているようだ。

ボストン・グローブ(The Boston Globe)は、非公開の「Slack」チャンネルのスポンサーになる広告主を1社獲得済みで、別のSlackチャンネル新設について第2の広告主と交渉中だと、ボストン・グローブ・メディア(Boston Globe Media)でチーフコマーシャルオフィサーを務めるケイバン・サルマンプール氏は語った。第1のチャンネルは、小規模企業のオーナーが情報を共有したり、米中小企業庁の給与保護プログラム(PPP)などに関する質問への回答を得たりするのを手助けするために設けたという。

人々が、新型コロナウイルスにどのように対処したり回復したりしているのかがテーマの番組「タイム・ワンハンドレッド・トーク(Time 100 Talks)」の制作に注力してきたタイム(Time)は、この数週間のそうしたトークで100万ドル(約1億円)を超えるスポンサーシップ売上を確保したと、グローバル最高売上責任者のビクトリア・デグタール氏はいう。パンデミックに対処するのを支援している人々に関する別の記事コレクション「アパート、ノット・アローン(Apart, Not Alone)」は、米保険会社ステイト・ファーム(State Farm)がスポンサーについた。

NowThis News(ナウディス・ニュース)が4月に開始した動画シリーズ「イン・ディス・トゥギャザー(In This Together)」は、人々が現状を切り抜けている方法にスポットライトを当て、スポンサー数社を惹きつけてきた。

回復をテーマにした広告が増加

そして5月下旬、ガネット(Gannett)は、国および地域レベルでの米国経済の回復について考察するUSAトゥデイ・ネットワーク(USA Today Network)での大型パッケージを開始する。ポインター(Poynter)のリック・エドモンズ氏によると、地元の編集者は、地域社会との関わりについて論説を書き、地域経済に焦点を当てた補足記事を作成するよう促されてきたという。

すべてのパブリッシャーが、このような形で広告主に売り込みを行っているわけではない。見たところすべての広告主のメッセージ(および、すべてのパブリッシャーの宣伝文句)は、3月下旬から4月上旬には、救援や新型コロナウイルス対策の最前線で働く人々への支援といったテーマに注力していたが、やや狭い範囲をカバーするパブリッシャーは、こうした報道をブランドに提供できる。

「すべてのRFP(提案依頼書)にあるとは言わないが、これらの市場があるのは確かだ。即座の解決策(といったテーマ)からの論理的な前進だ」と語るのは、オムニコムUSA(Omnicom USA)で企業パートナーシップ担当マネージングディレクターを務めるスティーブン・ブルーム氏だ。

ブルーム氏は、この数週間で、回復のようなテーマを柱とするキャンペーンに投資する広告主が増えているのに気付いたという。また、米国の広告主は短期的に支出に関心を抱いているが、そうした予算を勝ち取るのに最適な位置にいるパブリッシャーは、地域社会と話せるパブリッシャーだ。「回復はまちまちになるだろう。(市場によって)回復の度合いにばらつきが出てくる」とブルーム氏は指摘する。

ウイルスと闘うヒーローに焦点

新型コロナウイルスの感染が拡大した初期には、展開する計画だったクリエイティブ資産やキャンペーンが突如、無神経または不適切と思われる状況になったことを主な理由として、多くの広告主が支出を停止した。

そうした広告主は戻って来るやいなや、多くが、ウイルスと闘うヒーローに焦点を合わせたパッケージに支出を回した。

地元のパブリッシャーが利益を得た。営業チームが米国および地域の広告主を引き込むことに成功したこともあり、最前線で働く看護士に敬意を表するボストン・グローブのパッケージは、過去の特別パッケージよりもスポンサーシップ売上の成績が良かったと、サルマンプール氏は話す。

「重要なコミュニティを支援したり、注目したりするものは、何でもだ」と、サルマンプール氏はいう。「低料金のパッケージと高料金のパッケージがあるようにパッケージ化し、チーム全体がその下に結集すると、ギブバック(還元)要素があるため、そうしたことがうまくいくのだ」。

「もうヒーロー話は重要ではない」

だが、この数週間で広告主の関心は移っていった。「もうヒーロー話は重要ではない。経済再開のためにできることが重要だ」と、ロサンゼルス・タイムス(Los Angeles Times)の最高売上責任者ジョシュ・ブランダウ氏は語る。

ブランダウ氏によると、自動車など、支出を停止していた多くのカテゴリーが戻りはじめたが、彼らは何が起きているのかを説明するキャンペーンにもっとも関心を抱いているという。「ほぼ意識の問題だ。つまり、『我々は安全確保のためにこうしたことを行ってきた』というアピールだ」。

サービス指向型の目標により、一部のパブリッシャーは、読者にサービスと価値を提供する彼ら自身を表現することもできる。「『回復と奮起』について尋ねてくるブランドはなかった。我々が提供する価値や有用性をブランドが目にするように市場に存在してきた」と、タイムのグローバル最高売上責任者、ビクトリア・デグタール氏はいう。

たとえば、タイムの新型コロナウイルスに関連するニュースレターの場合、ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)は、配信したいブランデッドコンテンツを数多く保有していて、ニュースレターがそれらに格好のメディア、環境になったと、デグタール氏は語った。

素早さが勝負の決め手となる

ブランドが広告支出の面ですばやく動こうとしているときには、スポンサーシップの機会を手早く作れるパブリッシャーがもっとも利益を得ることになるだろう。

「こうした環境では、チームの受け答えや機会作りのスピードを再評価する必要がある。1年だったものが、いまでは1カ月になり、1週間だったものが1日に、1日だったものが数時間になっている」と、デグタール氏は述べた。

Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)