コロナウイルスで世界中のビジネスが混乱に陥るなか、Amazonをはじめとするプラットフォームの弱点が露呈し始めている。

米Amazonはいま、フルフィルメントセンターで生活必需品のみを優先的に扱っている。米国では自宅待機で宅配を望むカスタマーからの需要が増加しており、これはボトルネック解消のための策だ。現在Amazonのほかの事業は停止状態にある。4月第2週に同社はサードパーティ向けの宅配サービス、Amazonシッピング(Amazon Shipping)の休止を発表した。同サービスは世界最大のEC企業であるAmazonが物流分野に進出するための野心的な取り組みだが、いまはそれを停止してでも中核となるサービスに集中する必要に迫られている。

宅配サービスを停止した理由

カンター(Kantar)のグローバル小売担当シニアバイスプレジデントを務めるデビッド・マーコット氏は、Amazonのこうした動きも不思議ではないと指摘する。Amazonは多角的な事業を展開しており、サプライチェーンを自社で所有するための方法を模索している。時価総額がいまや1兆ドル(約108兆円)超の同社は、さまざまなプロジェクトに投資を行っている。なかには成長しなければ利益をあげられず、長期的に赤字続きになると見込まれるプロジェクトもある。

Amazonシッピングもこうした小規模プロジェクトのひとつであることに疑いの余地はない。同プロジェクトはUPSやフェデックス(FedEx)といった郵送サービスとの競合を目的として、米国内のいくつかの都市に提携パートナーを通じて配達物を届けるサービスだ。米国ではAmazonシッピングを発端として、Amazonと上記の郵送サービスとの争いが激化している。Amazonは郵送サービスへの依存度を下げようと取り組んでおり、競合すら視野に入れているのだ。その結果、現在UPSやフェデックスは一部郵送を対象に一時的に新料金を導入している。Amazonには競合会社を締め上げるようなサービスを立ち上げる力がある。だが、いまや状況は大幅に変化し、同社も若干の後退を見せている。

同社がAmazonシッピングを停止したのは、ほかのサービスを優先する必要があったためだ。ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)に関係者が語ったところによると、Amazonは急増する注文に対応するため、リソースを割り当て直す必要があったとのことだ。「『トラックや資産が必要』という声が上がった可能性が高い」とマーコット氏は語る。

プラットフォームの欠点が露呈

今回の動きは変化としては小さいものの、Amazonの欠点が露呈した形ともいえる。現在Amazonに殺到している注文は、同社にとって大きな負担となっている。必需品ではない品物は発送を後回しにされ、サードパーティの販売業者は先行きの見えない不安にさいなまれている。同社はサードパーティ業者らに対し、すぐに配送したい場合はAmazonシッピング以外の郵送サービスを利用するよう呼びかけている。

これは他社との競合を目的とした補助的サービスではなく、中核事業であるECに焦点を合わせるほうが賢明という判断だろう。一方、郵送サービスは大量のオンライン注文をうまくさばいているようだ。

EC郵送ソフトウェアを提供するシッポ(Shippo)によれば、3月のオンライン注文は30%増となっている。どの郵送サービスも、これを滞りなく届けることに成功している。シッポのマーケティング担当バイスプレジデント、マリオ・パガニーニ氏は「フェデックスやUPS、USPSは米国内の郵送物を安定して届けている」と語る。これは「郵送企業やAmazon以外の販売業者にとって良い知らせ」といえるだろう。

物流業界全体へも大きな影響

いまのところ、Amazonが今後に備えてサービスを強化しようとしていることに、疑いの余地はない。その競合となる郵送サービスは、これまでうまく対応しているが、それもいつまで続けられるかは不透明だ。

いま営業を続けている企業が、今後も需要に応えられるとは限らないとマーコット氏は指摘する。「あらゆる物流業者が、社内で議論しているだろう」と同氏は語る。大手各社はいまのところ持ちこたえているが、世界中に広まるこの衛生上の危機がどれくらい続くかは不透明だ。Amazonに限らず、物流業界全体に大きな影響を及ぼす可能性もある。

マーコット氏は、現在の物流業界は極めて細分化されており「低迷状態に弱い」と指摘する。さらに「物流はすべての基盤だ。4週間前まで、誰も私たち物流業者について気にかけていなかった。注目を集めるのは、物流に問題が生じるときだけなのだ」。

Cale Guthrie Weissman(原文 / 訳:SI Japan)