関連画像

写真拡大

自宅のポストに入れられるおびただしい数のチラシ。中には有益なものもあるが、大半はゴミとなってしまう。広告主や配る人にも事情はあるのだろうが、迷惑なものは迷惑。そこで「ポストにチラシを入れないで下さい」と書く人もいるようだ。

弁護士ドットコムの法律相談に、ポスティングのバイトをしている人が「『ポストにチラシを入れないで下さい』と注意書きを掲示している家に入れてしまったら、何かの犯罪になりますか?」と、質問を寄せた。

「チラシを入れないで」と言っている家に入れた場合、法的には何らかの罪に問われるのだろうか。東山俊弁護士に聞いた。

●問題になり得るのは「住居侵入罪」

ーー時折「チラシ禁止」といった住宅を見かけることがありますが、有効性はあるのでしょうか

ポストにチラシを投函することを処罰する法律はありません。厳密に言えば、ピンクチラシに関しては、条例で投函を処罰する地域もありますが、今回のテーマではありませんので、ここでは詳細は述べません。

ーーポスティングについて成立する犯罪はないのですか

ポスティングそのものが処罰されない場合にも,建物や敷地に立ち入る行為について、住居侵入罪が成立するかが問題となります。

住居侵入罪が成立するためには、正当な理由がないのに、他人の「住居」に「侵入」することが必要です。

そして、「住居」には、居住部分だけでなく、共有部分も含まれますので、ポスティングのためにマンションの玄関や廊下に立ち入っただけでも、「住居」に立ち入ったことになります。

また、塀や生け垣で囲まれていれば、敷地も「住居」に含まれます。

ーーポスティングのために入る目的であっても「侵入」に該当するのですか

「侵入」というのは、居住者等(分譲マンションの場合には管理組合)の意思に反する立ち入りのことです。

今回のケースでは、居住者が『ポストにチラシを入れないで下さい』と表示して、ポスティング業者の立ち入りを拒否しているため、「侵入」になる可能性が高いです。

ーー相談者が懸念するように、法令違反の可能性があるのですね

そうです。禁止の掲示がある場所でポスティングをするため、マンションの玄関や廊下に立ち入る行為等は、住居侵入罪となる可能性が高いといえます。

ーーなお、逮捕もあり得るのでしょうか

実際に逮捕されたり裁判で有罪となったりするのかは別の問題です。

最高裁判決には、ビラの配布のために宿舎やマンションに立ち入った行為について、住居侵入罪が成立するとしたものもありますが、政治的な内容のビラを配布しようとしたことから起訴された特殊な事案であるとの指摘もあります。

経済活動の一環としてのポスティングのためにマンションや玄関や廊下に立ち入っても、逮捕されたり処罰されたりすることはほとんどなさそうです。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
東山 俊(ひがしやま・しゅん)弁護士
東山法律事務所所長。大阪弁護士会所属。家事事件はもちろん、一般民事事件や刑事事件も幅広く取り扱っている。
事務所名:東山法律事務所
事務所URL:http://www.higashiyama-law.com/