コロンビア選手に聞く日本戦。「15番のアタッカーの質が高かった」
「(開始3分で)10人になってしまったことで、我々コロンビアには苦しい展開になった。その後、よく挽回して同点に追いついたと思う。できるだけのことをやったが、後半は10人で戦ったことが体力的にも響いた。もし11人対11人のままだったら、違う展開になっていただろうけど……」
ロシアW杯初戦で日本に金星を献上したコロンビアのFWホセ・イスキエルドは、神妙な顔つきでそう語った。
――5000万人のコロンビア国民が、この結果に大変なショックを受けています。私たちは立ち直ることができるのでしょうか?
「真っ先に頭を上げ、胸を張って戦わなければならないのは我々選手だ。グループリーグはまだ2試合残っているわけで、自分たちはこれまでも苦しいシチュエーションのなかで戦い、切り抜けてきた。今回もそうなるはずだと確信している。たったひとつの敗北で、自分たちのやってきたすべてを否定するべきではない」
イスキエルドは言葉を絞り出すように言った。
コロンビアのディフェンダーからも高く評価された大迫勇也
「失態」――。
コロンビア側から見たら、日本戦の結果はそれがすべてなのだろう。チームのエースであるハメス・ロドリゲスは、敗戦を受け入れられない様子だった。日本人選手があらかた出た後に、ようやく現れたミックスゾーンを無言で通り過ぎている。親しい記者に対してさえも、一瞥(いちべつ)をくれたのみだった。
では、彼らから見た日本の戦いとはどうだったのか?
「日本は戦術的にとても整然としていたし、規律正しかった。個人の能力も高い。それはわかっていたつもりだ」
コロンビア代表でACミランに所属する31歳のディフェンダー、クリスティアン・サパタはそう振り返っている。この日は先発から外れたものの、温厚で誠実な性格で、コロンビアのディフェンスリーダーを長年務めてきた。それだけに、彼が発する言葉は説得力があって、重い。
「我々が日本を侮った? そういうことは決してない。コロンビアはブラジルW杯でも日本と対戦し、そのクオリティの高さを知っている。謙虚に挑んだつもりだよ。しかし、サッカーの世界では常にこうしたことが起こってしまうんだ。
正直に言えば、もし(退場になった)カルロス・サンチェスがピッチにいたら、中盤でガツガツ戦って、ボールを奪い返しまくって、自分たちのペースで戦えていたんじゃないかな、と思うところはあるよ。でも、それは”たら、れば”だから。開始まもなくの退場だったことで、どうにも厳しい状況になった。10人で長い時間を戦わざるを得ず、それぞれの選手の体力的な消耗も激しかったね。後半は疲れがピッチで出てしまった。こうなると、とても難しい。
ハメスがケガで途中出場にはなったけど、コロンビアは誰かがどうこうしたで変わるチームではないよ。1人がうまくいかないなら、他の誰かがカバーする。その点に関しては、それだけだよ」
サパタは人格者らしく、冷静に説明している。
それにしてもコロンビアから見た場合、あまりにすべてがうまくいかない、という試合展開だった。エースがケガで、開始早々に1人少なくなって、1点のビハインド。その後、ホセ・ペケルマン監督は交代のカードを切ったものの、潮目を変えることはできなかった。
「繰り返すが、サッカーではこういうことは珍しくはない。それがW杯という舞台で私たちに起こってしまった。それでしか、説明はつかない敗戦だ。
ひとつ言えるのは、日本はそういうときに我々に勝てるだけの力のあるチームだったということさ。テクニックレベルが高いし、敏捷性もある。いい選手が揃っていた」
では、あえて1人、印象に残った選手の名前を挙げるとすれば?
「15番のアタッカー(大迫勇也)だね。得点以上に、15番の選手はランニングの質がとても高かった。(走り出す)タイミングの取り方や体の当て方、とにかく何度も動き出しをするしね」
サパタはそう言って、笑顔を浮かべた。その余裕がピッチ上にあったら、日本はもっと苦しんでいたのではないか。そう思わせる懐の深さがあった。
結局、コロンビアの敗戦は開始早々の対応がすべてだったと言えるだろう。3分、大迫が抜け出したシーンで、22歳のセンターバック、ダビンソン・サンチェスが中途半端なボール処理をし、体を入れ替えられている。大迫にフリーで抜け出され、GKと1対1になってシュートを打たれ、それがPKにつながっている。より直接的に言えば、大舞台での経験の乏しいセンターバックの未熟さが出てしまったのだ。
さらに言えば、コロンビアDF陣がもう少し落ち着いていたら、カルロス・サンチェスは香川のシュートをハンドで止め、退場になるような選択はしなかったかもしれない。
「我々の戦いはこれからだよ」
最後、サパタは上を向いて言った。ミックスゾーンでは、苛立ったコロンビア人記者たちの質問が続いていた。
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