「ひよっこ」57話。自分よりいい女は採用しない!

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連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第10週「谷田部みね子ワン、入ります」第57回 6月7日(水)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出:黒崎博


57話はこんな話


すずふり亭のホール係にならないかと鈴子(宮本信子)に誘われたみね子(有村架純)。すっかり舞い上がってしまったが、最終的には朝倉高子(佐藤仁美)のOKが必要で・・・。

最終面接


仕事が決まって嬉しくて、「がんばります」しか出てこないみね子。
だが、喜びももつかの間、見習いコック前田(磯村勇斗)に「誰でもいいから(来てほしかった)」「誰でもいいから」と繰り返し言われ、少々気を悪くする。
さらに、高子による最終面接が必要であることが判明。

鈴子は経営者のトップダウンでなく、ホールで一緒に働く高子の気持ちを優先していた。
それをいいことに、高子は過去、多くのホール係候補を断り続けていた。採用基準は、高子の看板娘の座を奪わないような子らしい。

有村架純の顔が


自分(高子)よりいい女だと思ったら採用はなし、と鈴子から聞いたみね子は「なんですかその条件は」と心の中で、いろいろ思う。
そのときの停止した有村架純の「顔が動かせません」という顔が、これなら採用基準を満たすだろうというほどひどい。俳優のへん顔はSNSなどで増えているとはいえ、停止状態で長いこと映す度胸がすばらしい。
高子よりいい女かどうか考えたとき、ダメとも大丈夫とも言えないと葛藤するみね子は、けっこう自分の容姿に自信があるようだ。ともあれ、いまでいう自己肯定感が低いのも問題なので、みね子は精神的に健やかであるということで良いかと思う。

「あんみつ食べる? 」


高子が、採用の言葉「あんみつ食べる? 」を発し、みね子は無事にホール係になれた。
高子の言い分とは、自分よりいい女を落しているわけではなく、純粋に一緒に働きたい人かどうか見ていただけだった。
あとで、「あさイチ」で有働由美子が(今週の「あさイチ」は「ひよっこ」応援週なのか)、お局視される高子に共感すると発言している。その人の本質を見ているにもかかわらず、可愛いさや若さに嫉妬しているというように判断されることを悔しく思っているお局世代にとっては、嬉しい発言であったことだろう(筆者も経験あります)。
とはいえ、可愛さや若さや才能に嫉妬する上司や先輩のいる職場もあるにはある。デキる子は、地味な装いにしたり、爪を隠したりしながら、活躍のチャンスを狙うのだ。

人間、いいとこばかりじゃない


最初は、いい人と思っていたが、深く知っていくと、そうでもないところが出てくる、というのはよくある話。
すずふり亭の人々にも、徐々におかしな部分が見えてきた。

鈴子は、高子のことから、世の中、女同士の闘いがあるというが、そういうのあんまりなくてわからないと言い出し、そこから「子供の頃からかわいくて町内の人気者だったの」と自慢話に脱線し、みね子に「この話、必要でしょうか」と思わせてしまう。
息子の省吾(佐々木蔵之介)は高子が自分よりいい女は不採用にしている説に「おれはそんなふうに思ってない」と、ひとりいいもんになろうとする。
前田は、聞く人の気持ちに気づかず「誰でもいい」と言ってしまう。
みね子だって前述の、大丈夫ともダメとも言えないじゃないかという葛藤は、真面目に考えたら、面倒くさい自意識である。
彼らはけっして悪いことを言っているわけではなく、こんなことは可愛らしいものであるし、当たり前だが、完璧ないい人なんていない。
いまどきの裏表描写みたいなことをやらなくてもいいのでは・・・と思いつつ、今後どうなっていくのか様子見したい。
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