正社員の長時間労働を「プラスに評価する傾向にある」と回答した企業の割合が2割を超えたことが、日本生産性本部の「日本的雇用・人事の変容に関する調査」で分かった。

 正社員(特にホワイトカラー層)の長時間労働に対する企業側の評価は「労働時間の長短と評価は関係ない」が44.4%と最も回答率が高くなっているものの、次に回答が多いのは「プラスに評価する傾向がある」24.8%となっている。

 「マイナスに評価する傾向がある」は13.5%で、マイナスに評価するよりはプラスに評価するという企業の割合が10 ポイント以上高くなっている。

 正社員の生産性が「高い」、「どちらかというと高い」と回答した企業では、長時間労働に対して「労働時間の長短と評価は関係ない」が43.8%と最も高くなっている。

 一方、生産性が「低い」、「どちらかというと低い」と回答した企業では「プラスに評価する傾向がある」が43.3%と最も高く、「労働時間の長短と評価は関係ない」は26.7%となっている。

 正社員の働き方の多様化・柔軟化(時間や場所等)につながる制度の導入率を見ると、「フレックスタイム制度」の導入率が49.6%と最も高かった。

 その他の施策は、「在宅勤務制度」(18.8%)、「専門業務型裁量労働制」(17.3%)、「短時間正社員制度」(16.5%)、「企画業務型裁量労働制」(10.5%)、「朝型勤務(始業時間繰り上げ)」(9.8%)など、いずれも2割を超えていない。

 「今後導入する予定」の施策は「在宅勤務制度」が11.3%と最も高く、「導入に向けて検討の余地有り」も24.8%となっている。

 勤務地限定制度を「すでに導入している」企業は30.1%で、産業別にみると第3次産業での導入率が 42.9%と高くなっている。

 勤務地限定制度を導入している企業では、制度導入のメリットとして「社員の長期的な定着」(73.3%)や「優秀な女性社員の退職抑制」 (55.6%)、「雇用の維持」(44.4%)といった労働力確保に効果があると回答している。

 課題としては「勤務地を選択する社員が多数いると、柔軟な人事異動ができにくくなる」(80.0%)等が挙げられている。

 賃金制度(体系)導入状況では、管理職層では「役割・職務給」の導入率が最も高く74.4%で、2007年調査以降、7割以上で推移している。 「職能給」は66.9%、「年齢・勤続給」は24.8%で、いずれも年々低下している。

 非管理職層では「職能給」の導入率が最も高く82.7%で、2007年調査以降、8割以上で推移している。「役割・職務給」は56.4%で、2007年調査以降、5割以上で推移している。「年齢・勤続給」は49.6%で、初めて5割を下回った。

 年齢・勤続給については、管理職層、非管理職層いずれも、「導入していたが、廃止した」という企業が
2割以上(管理職層=27.8%、非管理職層=23.3%)を占めている。

 調査は、2016年7月下旬〜8月下旬、上場企業の人事労務担当者を対象にアンケートを郵送する方式で実施し、133社から回答を得た。