世界初の顔面移植患者、術後10年で亡くなる。拒絶反応抑制薬の副作用でがんに

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2005年に世界で初めて「顔面移植手術」を受けたフランス人女性が、今年4月になくなっていたことがわかりました。女性はながらく拒絶反応を抑える薬を服用していたものの、その副作用からがんを発症しやすくなっており、最近では2種類のがんを併発していたとのこと。フランスに住むイザベル・ディノワールさんは2005年5月、薬物使用によって意識を失っているあいだに、飼っていた大型犬に顔を食いちぎられるという悲惨な事故に遭いました。応急処置は受けたものの、顔の一部を失ったイザベルさんは近隣住民からの目を逃れるために自宅を引き払わざるを得ませんでした。

その年の12月、自殺者をドナーとした顔面移植を受けることになったイザベルさんは失ったあご、口、鼻の部分をドナーから移植されました。しばらくはうまく表情を作ることもできなかったものの、数か月のリハビリによって笑顔を作れるまでに回復し、医師は初の顔面移植が成功したと発表しました。

顔は取り戻すことができたものの、それ以降イザベルさんは拒絶反応を抑えるための定期的な免疫抑制薬の服用や、皮膚移植といった処置を受けなければならず、生活の負担となっていた模様です。また免疫抑制薬の副作用でがんへの抵抗力が低下しており、最近では2種類のがんを併発していました。

イザベルさんがかかっていた仏・アミアンの病院は、イザベルさんが2016年4月22日に亡くなったという事実だけを発表しており、その死因は明らかにしていません。また、これまで公表しなかった理由は、遺族のプライバシーを考慮した結果としています。

イザベルさんが世界で初めて顔面移植手術を受けるという、閉ざされていたドアを開けたことによって、のちに米国で2回の顔全体の移植手術が行われ、その他の国でもいくつかの顔面移植手術が実施されるようになりました。願わくば、移植患者ががんやその他病気への抵抗力を失わないような免疫抑制薬が開発されてほしいものです。