ピート・ローズ氏

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◆ 祝福ムードに“待った”

 マーリンズのイチローが現地時間15日、日米通算4257本目の安打を記録。ピート・ローズの持つMLB通算最多安打記録4256本を抜き、安打数の世界最多記録を更新した。

 しかし、イチロー自身が「日米合わせた記録。どうしてもケチがつくことは分かっている」と話したように、メジャーリーグという舞台だけでの記録ではなく、日本在籍時との合算ということは百も承知。それでも、イチローが積み上げてきたこの偉大な数字は前人未到の数字であり、称賛されるべき数字なのだ。

 しかし、“メジャー最多”通算4256安打の記録を持つ偉大なローズは、この記録で盛り上がっていることに違和感を訴える。イチローの快挙にも納得しない姿勢を見せ、日本人から見れば“暴言”ともとれるような発言を繰り返しているのだ。

「MLBだけの私(の記録)と、日米通算では価値が違う」

「マイナー時代に打った安打数を入れてほしいよ」

「日本では、今後高校野球時代の安打まで数えるのでは」

 いずれもピート・ローズが現地メディアに発した言葉だ。

◆ ローズ氏の言い分もわかるのだが...

 これらのコメントは物議を醸し、日本はもちろんのこと、アメリカでも様々な声が上がっている。

 確かに「日米通算安打」という数字では、評価が難しいのかもしれない。現にイチローの日本時代の安打数を除くと、ローズとは1000本以上の差が出る。試合数や環境も大きく違う日本と米国を、単純に比較対象とすることに疑問符がつくことも分かる。

 しかし、イチローがメジャーに挑戦したのは2001年のこと。当時は今のように、日本人選手があちこちにいる状態ではなく、明らかに日本よりも高レベルだったという図式が正しい。その高いレベルの中でこれだけの成績を残してきたイチローは、純粋に評価されるべきなのではないか。

 ローズの言い分もわかる。しかし、あの伝説の野球人であるローズほどの人物が、数字上でイチローに抜かれたことに対してとやかく言っていることでがっかりしているファンも少なくない。

◆ 王さんの時はどうだった?

 思えば、過去にも似たようなことはあった。

 遡ること約40年前の1977年…。王貞治が、当時の世界記録保持者ハンク・アーロンを抜く通算756号本塁打を放った。

 この時、米メディアの多くは日本の球場の狭さやレベルの低さを引き合いに出したが、アーロン自身は王の記録達成に心から敬意を表し、紳士的に祝福。記念にフラミンゴのはく製を王に贈ったのだ。

 引退後、監督時代に野球賭博に関わったとしてMLBから永久追放の処分を受けたローズ。今回のイチローに“ケチ”をつけることなく、さらっと祝福することができれば、彼の功績も今以上に輝きを増すのではないだろうか。