「タコス」はメキシコを代表とする有名な料理だが、「タコライス」はおととし(2014年)12月に他界した儀保松三さんが1984年に沖縄で考案した、まだ比較的歴史の浅い沖縄料理。その意味は「タコスの具を乗せた飯」。Wikipediaによれば、円高により外食を控えるようになった米兵向けに、コストパフォーマンスのよい新メニューとして考え出されたそうだ。

確かに、儀保松三さんが創業した金武町金武の「パーラー千里」の近くにはキャンプハンセンがあり、かつては今よりも多くの米兵が街を行き通っていた。


キングタコス(筆者撮影)

31年間愛され続けた「パーラー千里」は昨年6月に閉店したものの、儀保さんの孫が手がける系列店「キングタコス」で「パーラー千里」で味わうことのできたタコライスをいただくことができる。


各地に広がる「キングタコス」(Google Mapより)

ボリュームたっぷり、成人男性でも満足

県内7店舗ある「キングタコス」。筆者の住む勝連半島にも与勝店があり、先日娘と一緒に覗いてみた。

メニューの値段の下にドル表示があるところが沖縄らしい。米兵もたくさん買っているに違いない。


メニュー表には米ドル表記も(筆者撮影)

テイクアウトでジャンボチーズバーガー(350円)と、タコライスチーズ(500円)を注文。


タコライスチーズ(筆者撮影)

タコライスチーズにはライスもミートも、そして野菜もどっさり積もられて、キャベツを落とさずに食べることはほぼ不可能。ドッシリ重さも感じられるボリューム。

ジャンボチーズバーガーの大きさも半端ではない。


ジャンボチーズバーガー(筆者撮影)

娘が持つと、ほぼ顔と同じ大きさ。



口を精一杯大きく開けるものも、ハンバーガーの直径が大き過ぎで、一口でかじれるのはわずか。


かじれるのはわずか

成人男性である筆者も、このジャンボチーズバーガーひとつで結構お腹いっぱいになった。

閉店の理由は...

さて、ここまで人気のあった「パーラー千里」が系列店を残して、自ら閉店したのはなぜだろうか。琉球新報2015年7月16日の記事によれば、最大の理由は「人員不足」。末期は週4日しか開けられず、系列店や工場にも人手をさくことを考え、「スタッフに負担をかけるのなら閉店もやむなし」となった。なるほど、儀保さんのスタッフへの心遣いが理由だったようだ。

同じ記事には、2007年に金武町で行われたタコライス早食い大会の優勝者による、興味深い言葉が引用されている。

「店がなくなっても、パーラー千里のタコライスが自分の血や肉になっていることを考えると寂しくない」

キングタコスでタコライスを食べる限り、タコライスが血肉となり、永遠に儀保さんの優しさも忘れずにいれるというわけだ。

是非、沖縄にお越しの際には、この血肉になるタコライスを試されることをお勧めします。

今回の筆者:河原良成世界数か国で生活した後に、40代で二児の父親となる。子育てのため沖縄に移住。現在、好きを仕事にするため、マリーン事業「沖縄サーフガイド」を営んでいる。