先週、アメリカ・ジョージア州のオーガスタ・ナショナル・カントリークラブで開催されたゴルフの祭典「マスターズ」。日本人初のマスターズ2年連続トップ10入りを果たした松山英樹選手をはじめ、お気に入りの選手のプレイに熱くなった方も多いと思います。今回はそんな「マスターズ」の歴史と魅力を、TOKYO FMの番組の中で専門家の方々に教えてもらいました。
(TOKYO FM「ピートのふしぎなガレージ」4月9日放送より)




◆「マスターズはすべてのゴルファーの憧れです」
〜ゴルフトーナメントプロデューサー、ゴルフキャスター 戸張捷さん


マスターズ・トーナメントは1934年に第1回が開催されたのですが、当初は「オーガスタ・インビテーショナル」という名前でした。だから大会が開催されているコースは第1回からずっと「オーガスタ」ことオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブです。このゴルフ場はボビー・ジョーンズという生涯アマチュアだったゴルフの偉人が「世界中のゴルファーがその能力を引き出せるゴルフ場を」と考えて造りました。

オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブは会員制のゴルフクラブで、歴代の会員にはアイゼンハワー大統領やビル・ゲイツもいます。ビル・ゲイツはなかなか会員になれなかったそうですが、これはいくらお金を払っても会員になれないからです。会員制のクラブは会員たちが楽しむための施設。だから自分たちと合わない人は入れません。やっとの思いで会員になったビル・ゲイツは大喜びしたそうです。

マスターズはそういうクラブが主催する大会なので招待制です。現在、その資格は「ワールドランキングの上位50人」とされています。さらにその上位50位以内に入っていなくても1年以内のPGAツアーで優勝すれば出られます。たとえ日本ツアーの賞金王になっても招待されるとは限らないので、初めて招待された片山晋呉は嬉しさのあまり招待状を持って記者会見を開いたほど。それくらい世界中のゴルファーが憧れる大会です。

◆「彗星のように現れたタイガー・ウッズ」
〜キャスター、アナウンサー 松下賢次さん


僕がマスターズの実況を担当していたとき、彗星のように現れたのがタイガー・ウッズでした。初めてオーガスタで見たのは、彼がまだアマチュアだった大学生の時。ジャンボ尾崎と一緒に回ったのですが、予選落ちでした。その後、彼は大学を辞めてプロに転向し、いきなりPGAツアーで勝って翌年のマスターズに出場。ぶっちぎりで勝っています。

タイガー・ウッズは父親が元グリーンベレーの黒人系で、母親はタイ人。そんな複雑な背景で、本人はご存知の通り黒人らしい容姿をしています。マスターズが開催されるオーガスタはアメリカ南部のまだまだ差別が根強く残っている土地柄なので、そこでタイガー・ウッズが勝つということは非常にセンセーショナルでした。一部では「勝たせまい」というムードもあったようです。

タイガー・ウッズはまず身体能力が抜きんでていました。当時、飛ばし屋と言われた選手は何人もいましたが、その中でも桁違いの飛距離だったんです。そうすると短い距離を打つ時も短いクラブを使えるので、高い球筋でボールを止めやすい。そんなゴルフで圧倒的なスコアを叩き出したので、後にオーガスタのコースが改修されたほどです。

ほかの選手も「このままではタイガーに勝てない」と慌てて肉体改造に取り組んでいます。しかしタイガー・ウッズは繊細な指先も持ち合わせていました。それは母親から受け継いだアジア系の感覚なのかもしれません。アプローチやパッティングもべらぼうに上手く、まさに「鬼に金棒」でした。

◆「スーパーショットを打たせるオーガスタ」
〜週刊ゴルフダイジェスト 編集長 近藤太郎さん


マスターズが開催されるオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブは超高速グリーンが有名です。短く刈り込まれたグリーンはどんどん転がってしまう上に、傾斜もきついのでちょっとミスをするととんでもないところへ転がっていき、場合によってはそのまま池に落ちたりします。

湯原信光プロはオーガスタを「スーパーショットを打たせるコース」と表現していました。たとえばオーガスタは木の根を隠すように土を盛っているので、林の中に打ち込んでもそこからグリーンに乗せるスーパーショットを狙えるんです。2012年にバッバ・ワトソンが初優勝したときも、プレーオフ2ホール目の10番ホールでティーショット右に曲げて林に入れてしまったところから、ものすごいフックボールを打ってグリーンを捉え、パットを決めて優勝しています。そんな奇跡のような光景が見られるのもマスターズの醍醐味です。

グレッグ・ノーマンとニック・ファルドが繰り広げた名勝負も忘れられません。オーストラリア人のグレッグ・ノーマンは「ホワイトシャーク」と呼ばれ、攻撃的なゴルフと風貌で一時代を築いた名選手。しかしなぜかメジャー大会だけはなかなか勝てず「大舞台に弱い」などと言われました。1996年はそんなグレッグ・ノーマンが2位に6打差を付けた首位で最終日を迎えたんです。誰もが「これは安全圏だろう」と思っていたら、最終日はまさかの78というスコアを記録してしまい、ニック・ファルドに大逆転されてしまいました。その後、オーストラリア人として初の優勝は2013年のアダム・スコットまで待たねばなりません。

TOKYO FMの「ピートのふしぎなガレージ」は、《サーフィン》《俳句》《ラジコン》《釣り》《バーベキュー》などなど、さまざまな趣味と娯楽の奥深い世界をご紹介している番組。案内役は、街のはずれの洋館に住む宇宙人(!)のエヌ博士。彼のガレージをたまたま訪れた今どきの若者・新一クンと、その飼い猫のピートを時空を超える「便利カー」に乗せて、専門家による最新情報や、歴史に残るシーンを紹介します。

あなたの知的好奇心をくすぐる「ピートのふしぎなガレージ」。4月16日(土)の放送のテーマは《スニーカー》。お聴き逃しなく!

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<番組概要>
番組名:「ピートのふしぎなガレージ」
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国37局ネット
放送日時:TOKYO FMは毎週土曜17:00〜17:50(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/garage