【誰かに教えたくなる話】ちょっと変わった江戸のシンデレラストーリー

江戸の町娘の夢、それはやはり「大奥」へと入ることでした。大奥へ入るには、意外と普通の家の出身でも可能。でも、大奥にはたくさんの女性がいるので、入っても将軍に会うことすらできない立場の人もたくさんいます。そんななか、シンデレラストーリーを叶えた女性たちも、何人かはいたのですが……どうやらそれも、事情があったようです。

もともとは普通の女の子でした

大奥。それは、江戸城のヒミツの花園。
選ばれた女性だけが入ることのできる大奥ですが、良いお家柄の娘さんだけでなく、町娘が入ることもありました。

家柄の良くない娘は将軍のお手付きになることはなく、大奥の小間使いや世話係で終わることがほとんど。
ですが、幸運にも将軍に近づくことができ、歴史に名を残した女性もいます。
家光の側室たち、桂昌院、順性院、宝樹院の3人です。

桂昌院は、言わずと知れた5代将軍綱吉の母ですが、もともとの生まれは八百屋。
縁があり、大奥でおつとめすることになりましたが、普通であれば八百屋の生まれでは将軍のお手付きになることはありません。

もう一人の順性院も、もともとは町娘。
大奥に入れたとしても、下っ端の小間使いで終わってしまいます。
そして宝樹院。彼女は農民の娘。
そして3人とも、けっして美しいとは言えません。

なぜ、こうも、見事に家光の側室は普通の家出身の娘ばかりなのでしょうか？
それは、家光の女性の趣味がとっても変わっていたから。
ストライクゾーンの狭い家光は、正室である孝子と夫婦関係がうまくいっていませんでした。

このままでは跡継ぎが生まれなくなってしまう……と焦ったのは乳母の春日局。
もはや家柄などは関係ない。
家光の好きな、大柄で丈夫そうな町娘をスカウトしよう！
そうして選ばれ、この女性たちが大奥のなかから連れてこられたのです。

ご存知のとおり、宝樹院は4代将軍徳川家綱を、桂昌院は5代将軍綱吉を産み、その役割を果たしました。

ロマンチックとは言いづらい、ちょっと変わった江戸のシンデレラストーリーです。

文／岡本清香

TOKYO FM「シンクロのシティ」にて毎日お送りしているコーナー「トウキョウハナコマチ」。江戸から現代まで、東京の土地の歴史にまつわる数々のエピソードをご紹介しています。今回の読み物は、「春日局、必死のスカウト！」として、9月15日に放送しました。