「普段あれこれ考えていても、とっさのときは何もできないし、何も考えられないものですね」――熊本地方を襲った地震から一夜明けた2016年4月15日、Jタウンネット記者の取材にそう振り返ったのは、熊本市東区に住む自営業の森恭三さんだ。


森さんが撮影した、近所の神社の様子。鳥居が半壊し、辛うじて一本足で支えている格好だ(森恭三さん提供。以下同)

東区は、今回の地震で最も大きな震度7を観測した益城町にほど近い。揺れは震度6弱に達し、1名が亡くなっている。森さんに地震当時の様子、そして今の状況を聞いた。

パソコンは倒れ、モニタは割れ...

14日21時26分。自宅マンションにいた森さんは、突然の激しい地震に見舞われた。

「とにかく立っていられない。引き出しが飛び出し、パソコンが倒れ、モニタが割れた。なにしろ、家の中のものが『飛ぶ』んです。棚なんかはほぼ全部倒れました」

防災マニュアルでは、地震があったときは机の下に入るなどして、安全を確保するよう求めている。だが森さんは、「何もできなかった」という。あまりの事態に思考はストップし、たとえば目の前で倒れるパソコンを支えようとか、そういうことは一切できなかった――森さんは、そう苦笑いする。

「以前東京にいたころも含め、今までに体験したことのない揺れでした」

3分おきくらいに震度4クラスの余震、昨日は眠れず

幸い、森さんや周囲の人たちにケガなどはなく、マンションも比較的新しいこともあって、建物自体には目立った被害は出ていない。近隣住民たちも、自主的に避難場所に指定されている広場に集合するなど、落ち着いた対応を見せる人が多いという。



電気やガスなどのライフラインも一帯では正常だが、熊本市内から一歩出て、益城町などに入ると、15日昼時点でも信号機が消灯するなど、復旧にいたっていない。道などもあちこち隆起しており、車で走るのが困難なところもある。

難儀なのは、余震の多さだ。

「昨夜は2度ほど大きな余震がありましたが、その間にも、3分おきくらいで震度4クラスの揺れが続きました。さすがに1〜2時間したら慣れましたが、目が覚めてしまうので、昨日は眠れませんでした」

一夜明けた15日昼の時点でも、「ここ1時間に3回は揺れている」(森さん)だけに、倒れてしまった家具は、いまだ手つかずのまま放置している状況だ。

熊本城の損傷に地元ショック

知人らとも連絡を取り合っているが、一様に家具が倒れる、冷蔵庫の中身が飛び出すなど、家の中は似たり寄ったりの状態だという。

「それと、やはり熊本城の石垣などが崩れたのがショックだ、という地元の人は多いですね」

熊本城は今回の地震で、石垣や屋根瓦の一部が損傷するなどの被害を受けている。加藤清正が築いた熊本のシンボルともいえる城だけに、地域の人々にとっては我がことのように悲しいニュースだったようだ。