高田馬場や早稲田周辺には、「ワセメシ」と呼ばれ、早稲田の学生に長年愛される、飲食店が数多く存在する。それらの店は安い、多い、美味しいの三拍子がそろったメニューで食べ盛りの学生たちのお腹を満たしている。しかし、何事も移り変わりゆくもので、ワセメシのラインナップは年々変化している。OBOGなじみのあのお店も、実は閉店していた、ということもある。実際に思い出を交えながら、とある2つの店をレポートしたい。



数十年の歴史を持つあのお店が閉店

早稲田大学の北門を出て坂を下ると、2016年2月に閉店した「エルム」が見える。「掟」と呼ばれる独特のルール、ほとんどのメニューがワンコインで収まる安さとボリュームで学生たちの支持を集め、34年間、早大生の胃袋を支え続けた。降りたシャッターが寂しさを感じさせる。





エルム前の坂を今度は上り、早稲田通り手前で左に曲がると、次の目的地、早大西門通り商店街がある。近くに武道場があるためか、腹ペコの体育学生の胃袋を満たすために進化を遂げた店が多数ある。



「お食事 ライフ」はその筆頭だ。看板メニューの肉丼のボリュームは他に類を見ないほどで、盛られた牛肉が垂れ下がる様は圧巻だった。近年はかつてよりも量を減らしたというが、それでも驚異的な量で、筆者も在学中は足を運び、腹ごしらえしては講義へと向かった。



東京オリンピックの年にオープンし、それ以来ずっと大学とともにあったが、ご主人が亡くなったため2015年5月に惜しまれながら閉店。51年の歴史に幕を下ろした。



思い出をかみしめながら去ろうとすると、お店跡地にあるものを見つけた。内容を確認したところ、ライフの肉丼をランチメニューとして復活させたお店があるというではないか。



早稲田大学からは少し離れ、高田馬場駅近くにあるそのお店の名前は「Bistro Life」。

何もかもが変わってしまうわけではなく、受け継がれるものもあるのだ。

あの味を懐かしく思うOB・OGは足を運んではいかがだろうか。

他にも、まほうつかいのでし、ラーメンジャンボ、寿限無、熊ぼっこ、べんてんなど、高田馬場、早稲田で愛された店が閉店した。ワセメシは不変ではなく、時とともに変わりゆくのだ......

そして、いずれは違う店が新たなワセメシとして定着していくのだろう。

ワセメシ番外編 あの国民的食べ物の発祥地はこちら

ここからは少し話を変えて、早稲田大学とかかわりの深いお店を1つ紹介したい。

早稲田大学近くの穴八幡神社の向かいにある「三朝庵」は江戸時代から続く老舗蕎麦屋で、かつては大隈重信も足しげく通ったという。そして何より、とある料理の発祥地でもあるのだ。


たまたま定休日だったため、シャッターが下りていた

かつて、予定されていた宴会がキャンセルされた時、大量に余ったとんかつを美味しく食べるために、蕎麦のダシで煮込んで卵でとじて、ご飯に載せて出したのがカツ丼の始まりなのだという。

更にもうひと品、カレーうどんもこちらが発祥だ。イギリスを経由したカレーが日本に上陸し、日本人が洋食に目を奪われた時、その状況を打破するため、研究の末にカレーうどんを作り出したのだそうだ。

早稲田だけでなく、歴史の古い大学の周辺には特徴的な街が作られることが多い。その歴史を紐解くと、意外なものに繋がっていたり、新たなものを作り出すアイデアが浮かんだりすることもあるのかもしれない。