MRJの命運握る革新的エンジン その強み、活かせるか
ついに初飛行し、リージョナルジェット市場へ参入する三菱「MRJ」。その強みは、革新的エンジンの先行搭載にあります。このアドバンテージを活かすことが、MRJの課題ともいえるでしょう。
既存機より圧倒的低燃費の革新的エンジン
2015年11月11日(水)、県営名古屋空港(航空自衛隊小牧基地)において、三菱航空機「MRJ」が初飛行を実施しました。MRJはYS-11以来、実に半世紀ぶりとなる国産旅客機であり、総座席数70〜90で約3000km以下の都市間を結ぶ「リージョナルジェット」と呼ばれる区分の航空機です。
リージョナルジェット市場は今後20年間で約3500機もの需要が見込まれていますが、現在はカナダのボンバルディア社「CRJシリーズ」、ブラジルのエンブラエル社「E-Jetシリーズ」がほぼ二分する寡占状態にあり、三菱航空機は今回初飛行したMRJをもって、そこへ新規参入します。またMRJと同時に中国のCOMAC「ARJ21」、ロシアのスホーイ「スーパージェット100」といった新機種も開発が進んでおり、今後リージョナルジェット市場の競争は激化していくことになるでしょう。
こうしたなかにあってMRJは、「低燃費」という武器を手に競合他社と差別化をはかります。三菱航空機は、競合他社の同等機に比べ燃費性能は20%以上優れているとアピール。航空機の運行費用は約4割が燃料費であるため、MRJの導入によって航空会社はその収益性を著しく改善することが可能となります。
なぜMRJは、既存機に比べ20%もの圧倒的な低燃費を実現できたのでしょうか。その秘密は左右主翼下に2基搭載する革新的なジェットエンジン「PW1200G」にあります。
実はプロペラ機に近い現代のジェット機
意外に思われるかもしれませんが、多くのジェット機はプロペラ機に近い機構をもっており、燃料の燃焼によって生じた高圧ガスの噴射でタービン(風車)を回転させ、その運動エネルギーでファン(扇風機)を回し、その風の反作用で推進力を得る「ターボファンエンジン」が主流です。
一方で、燃焼によって生じたガスの噴射で直接推進力を得る「ターボジェット」ないし「純ジェット」と呼ばれるエンジンを搭載した機は消えつつあり、日本で恒常的にみられる機種としては、航空自衛隊の戦闘機F-4EJ改「ファントムII」を残すのみとなっています。
旅客機用ターボファンは、推進力のほとんどをエンジンの入り口に設けられた大きなファンで発生させており、ファンはできるだけ大きな直径で、かつゆっくり回すほど効率よく推力が得られ、また発生する騒音も小さくなります。
しかしタービンで得られた運動エネルギーは、ファンを回すのと同時に、空気を圧縮してエンジンの燃焼室へ送り込むコンプレッサー(圧縮機)も駆動させねばなりません。そしてコンプレッサーはファンとは逆に、できるだけ高速回転させる必要があります。
従来のエンジンは、低速回転が望ましいファンと高速回転が望ましいコンプレッサー、ふたつの相反する要求に対して妥協点を設けなくてはなりませんでした。
革新的エンジン搭載でライバルに先行するMRJ
MRJが搭載するエンジン「PW1200G」は、アメリカのプラット・アンド・ホイットニー社が開発した「ギヤード・ターボファン」と呼ばれるエンジン。ファンにタービンから抽出された動力を伝達する際、途中にギア(減速機)を設けることによってファンだけをゆっくり回し、ファンとコンプレッサー、それぞれを最も効率的に運転可能な回転数の両立を実現しています。
このギヤード・ターボファン自体は既存技術ですが、これまではほとんど小型のビジネス機に搭載されていました。この新機軸のエンジンがMRJの低燃費を支えているのです。
ギヤード・ターボファンは今後、多くの旅客機に搭載されていくことになります。実際にMRJのPW1200と共通の設計を持ったエンジンを搭載するエンブラエル「E-Jet E2」が、MRJの223機を上回る325機の受注を集めているほか、やや大型の機体ながらボンバルディア社の「Cシリーズ」も受注は243機に達しています。
MRJは開発が難航し、たびたびスケジュールの遅延が生じていますが、MRJ最大の強みはギヤード・ターボファン搭載旅客機としてE-jet E2などの競合機に対し先行している、というアドバンテージを有していることです。三菱航空機としてはこれ以上の遅れが生じぬよう、実用化を急ぐことが大きな課題となっています。

