タイトルは「見つけてもらう」ためのキャッチコピー/INSIGHT NOW! 編集部
ほんの数年前と比べても、インターネットに溢れる情報量は格段に増えています。そこはまさしく毎秒ものすごい速度で広がっていく「情報の海」です。この「情報の海」でおぼれかけているのが、今のインターネット利用者の日常ではないでしょうか。
その「情報の海」にただ自分のコンテンツを投げ込んだところで、人の目にとまることは至難の業です。現に多くのコンテンツが海のもくずとなって情報の海の底で眠っています。
日本でインターネットが定着し始めた15,6年前からしばらくの間、情報は「自分で探す」ものでした。
例えば、日常生活で新しい言葉に出会ったら、GoogleやYahoo!でその言葉を検索する、というのが一番典型的なインターネットの使い方でした。けれど、今や情報は向こうから飛び込んできます。
ニュースサイトもキュレーションサイトも、小売業も製造業も、猫も杓子も、PUSH通知さながらに、とぎれることなく情報を届けて来ます。情報は「自分で探す」までもなく、「これ、どうですか?」「こんなのもありますよ?」と「差し出される」ものになりました。
あまりに大量で動きが速いため、どれが自分に必要な情報なのか、そもそもその情報は正しいのか間違っているのか、いちいち考える余裕すらありません。
では、海流に乗って目の前を流れていく大量のコンテンツの中から、利用者はどうやって必要な情報を拾い上げるのでしょうか。
自分が何を求めているのかわかっている時は、その中からキーワードを探します。自ら検索するだけでなく、流れてくる情報の中にキーワードがあれば、とりあえず拾ってみます。さらにそれが、自分が望むような内容のものかどうかも、その情報に選ばれて使われているキーワードから判断します。
これ以上に多いのが、自分が何を求めているのかわかっていないまま、「おもしろそうなものはないか」「役に立ちそうなものはないか」という漠然とした動機で、情報の海を眺めている場合です。こういうときは、これは「あなたのための情報」ですと、印象的な言葉で訴えかけてくるものを無意識に拾います。
どちらの場合にも、その人の求めている「ことば」が目に入らなければ、そのまま流れ去ってしまうのです。おおよそ0.2秒で「見つけてもらう」には、とにかくピンポイントに刺さる「ことば」が必要です。そのためには、どうしてもキャッチコピーのような印象操作が必要になるのです。
一目で「何が書いてあるか」「誰に向けての情報か」がわかりやすいキャッチコピーがあれば、そのコンテンツを読んでほしい“ターゲット層”の人々の目に留まりやすくなります。適切な“ターゲット層”の目に留まれば、拾い上げてもらえる確率が上がります。リンクをクリックして中身を読みに来るというアクションが起こりやすくなるのです。
当INSIGHTNOW! での具体的な例を挙げてみましょう。直近2カ月の間に、SNS経由で読まれたコンテンツのCTR(Click Through Rate)TOP10を並べてみます。CTRが高いもの、つまり、タイトルや要約などの限られた情報だけで興味をひき、かつ、クリックするという行動につながった割合が高かった、「見つけてもらう」ことができたコンテンツのランキングです。
Facebook CTR TOP10 | CTR | |
1 | 不採用の理由を「お答えできない」理由2015 | 5.9% |
2 | 「尊敬する人物は親です」という答えが損な理由 | 5.8% |
3 | 東京オリンピック・エンブレムはもう無理筋 | 5.6% |
4 | 日系メーカーがiPhoneを作れない理由が、理由になっていない件 | 5.2% |
5 | 失敗させない研修企画の秘訣 | 5.2% |
6 | ユニクロはどこへ行くのか? | 5.2% |
7 | オリンピック・エンブレム釈明会見は重ねて真っ黒 | 5.0% |
8 | ブランディングの後進国であることを示した「東京五輪エンブレム問題」 | 4.7% |
9 | それでも、ユニクロとマクドナルドは、まだ復活できないと感じる理由 | 4.5% |
10 | 学生向けの会社説明では、パワーポイントを使わないほうが良い。 | 4.5% |
INSIGHTNOW!での同時期のCTR平均は2.9%なので、かなり優秀な数字です。
東京五輪のエンブレム関係は話題性が高かったため、当然のようにランクインしています。iPhoneやユニクロ、マクドナルドなど身近な固有名詞は、見かけると「なんだろう」と思って中身を見たくなるようです。
特徴的なのが、就職・採用活動のコンテンツが三つもランクインしていることです。これは、漠然と「就職活動」「採用活動」を匂わせるのではなく、タイトルを見ただけで就活生向け、採用する企業向けだとわかることが、クリックにつながったと考えられます。「誰のためのコンテンツ」で「何が書いてあるか」がわかりやすいタイトルが、キャッチコピーの役割をしてくれたのです。
あまりにも“ターゲット層”を意識して、わかりやすいタイトルばかり付けても、面白みに欠ける面があるので、さじ加減は必要です。けれど「見つけてもらう」ための第一歩としては、キャッチコピーとして効くタイトルかどうか、今一度考えてみる価値がありそうです。