3度の同点劇の末、国士舘が最後は地力を見せて延長12回サヨナラ勝ち

マウンドに集まる国士舘ナイン

 甲子園出場、春は8回、夏は1回の実績を誇り会場校でもある国士舘。このブロックでは抜けて強い存在ととらえられていたが、その国士舘に対して、「中学まで、普通に軟式の部活動で野球をやっていた子たちがほとんど」(都立豊多摩・鈴木邦夫監督)という都立豊多摩が2点リードを追い付き、その後は2度もリードを奪うという形で、大接戦となって延長12回、国士舘が辛うじてサヨナラを決めて面目を保ったという試合だった。

 あわや…、食い下がりを見せた都立豊多摩は2点をリードされた6回、四球の鴨下君を一塁において3番水島君が強烈に三塁線を破って1点差としてなおも無死二塁。内野ゴロで一死三塁となって、ここまで好投をしてきた5番に入っている櫻井君の中前打で同点とした。

 こうなると、さすがに国士舘も気持ちとしてはやや焦りが出てきてしまうのは否めない。力のある打者もいくらか力んだ形になってしまって、打ちあげる打球も多くなった。そして8回、都立豊多摩は水島君が中前打で出ると、一死一三塁で、櫻井君が左犠飛を放ってリードした。しかし、国士舘もその裏すぐに、2番堀君の左中間二塁打で追いついてしぶとさを示した。とはいえ、三塁を狙った堀君が刺されるなど、ちぐはぐな部分もあった。

 試合後、箕野豪監督は、「すべてにおいて、余裕がないんですよね。それで、取られなくていいアウトを取られ、与えなくていい塁を与えてしまうという、悪い循環になっていってしまったんですね」と言うように、何とか追いつきつつも、試合の流れは都立豊多摩に傾いていた。

 都立豊多摩の打球は、詰まったものがポトリと落ちることも多かったが、国士舘の打球はいい当たりでも野手の正面になってしまうというケースも何度かあった。国士舘としては、こうした流れの悪さを引きずりながら、それでも何とか延長にまでもって行ったところに、国士舘の執念も感じられた。

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5打数5安打の水島君(都立豊多摩)

 そして10回、都立豊多摩は2番鴨下君が中前打で出ると、当たり屋水島君がこの打席では上手に右に運んで右中間に落とす二塁打で二三塁とする。水島君は何と、5打数5安打である。ここで、箕野監督もたまらず安陪君を下げて深澤君を送り込んだ。深澤君は内野ゴロで3人を退けるのだが、ゴロGO戦術で、都立豊多摩は再びリードを奪った。

 それでも国士舘は、その裏に無死一三塁から途中から9番に入っている奥山君の右犠飛で再び追いついたのはさすがだった。そして11回には無死一三塁というピンチを切り抜けて、12回にも二死ながら二塁まで進められた走者を還させることなく、その裏にサヨナラで決めたのは、やはり意地を示したといっていいであろう。

 大善戦、大健闘と言ってもいい都立豊多摩だったのだが、鈴木監督は、「本当に、選手たちはよく頑張ってくれました」と称えていた。しかし、「ただ、いい試合をした、頑張ってよかったというだけでは、やっぱりいけないんですよね。そこで、勝ちきれないのは…、みんな良い子たちばかりですからねぇ、そんなところもあったのかなぁと思います。そんなことばかりは、言っていられませんけど…」と、言いつつも、現在の力の中で、甲子園経験校にここまで抵抗を示したことに対しては、選手たちがそれぞれ自分たちの工夫の中で課題を克服してきた成果があったのであろうということを評価していた。

 国士舘としては、苦しみながらも何とか勝ちあがっていったことで、次へ向けてもう一度練り直すことができるようになった。初戦で苦しんだことで、次へ向けて箕野監督も、改めてチームを整備していこうという姿勢を示していた。

(文=手束 仁)

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