【侍ジャパンU-18代表コラム】清宮幸太郎 世界一の先にある「世界一」への礎

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 並べた8つの白星。そしてナインが積み上げる9個目の白星は金色へと変わる。9月5日(土)、阪神甲子園球場での「第27回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」スーパーラウンド第3戦。すでにアメリカとの決勝戦進出を決めている侍ジャパンU-18代表は、この日もキューバ(B組3位)に9対0と快勝。同ラウンド3連勝、通算8連勝で6日(日)18:00・阪神甲子園球場でプレイ・ボールされる決戦へこれ以上ない形を作った。今回はそんな若侍たちの最年少にして4番を張る16歳・清宮 幸太郎(早稲田実業<東京>1年)を「世界」という目線から分析していきたい。

日本野球界の至宝、3年ぶり「世界」に立つ

清宮 幸太郎(早稲田実業)

 近づく「侍ジャパンU-18」世界一の瞬間。その前にはやる気持ちを抑え、まずは時計の針を少し戻してみよう。

 8月26日(水)・侍ジャパン大学代表との壮行試合。えんじの「WASEDA」から、縦じまに「JAPAN」のユニフォームへ装いを変え、7日ぶりに再び阪神甲子園球場のグラウンドへ降り立った清宮 幸太郎(早稲田実業<東京>1年)は実に堂々としていた。

 代表20選手中、唯一の1年生。普通の感覚だと遠慮気味になってしまうが、先輩たちに対しても堂々とした態度で接する清宮。東京北砂リトル(東京)時代、2012年のリトルリーグ・ワールドシリーズで世界一を獲得。

「3番・投手」で12打数8安打6打点・3本塁打で世界の野球界に衝撃を与えた国際舞台の威風堂々ぶりは、3年の時を経ても全く変わっていなかった。

 そして試合前のフリー打撃になれば木製バットにかかわらず、ライナー性の打球で外野最深部までガンガン飛ばす。そして初回、最速154キロ右腕、NPBの2軍相手にもキリキリ舞いの三振ショーで魅せる田中 正義(創価大3年)からストレートを弾き返し適時打。聖地は驚きすら伴った声を上げる。それは同時に世間が「甲子園のヒーロー」清宮 幸太郎が「日本野球界の至宝」であると改めて認めた歴史的瞬間でもあった。

 いざスーパーラウンド!

・【U-18】日本5戦全勝!走攻守すべてにおいて力を発揮した1stラウンドを振り返る

 組み合わせと応援メッセージは下記リンクから!

・2015年 第27回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ

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[page_break:「世界の同世代」と比較される4番の重圧]「世界の同世代」と比較される4番の重圧

清宮 幸太郎(早稲田実業)

 大会前に残したインパクト。それと比較すれば今大会ここまで23打数5安打、打率.217の成績は「打席内で集中できていない感じですね。余計なことを考えてしまうというか、スッと集中できる時とできない時があって、舞洲ベースボールスタジアムで戦った6試合はそうだったかもしれないです」と振り返る本人はもちろん、我々も物足りない結果である。

 あえて言おう。世界に目を向ければ、清宮と同世代で活躍している選手も数多くいる。今大会からピックアップすればブラジル代表の1番を打つガブリエル・マシエル。すでにMLBシアトル・マリナーズとマイナー契約を結んでいる外野手は、8月28日(金)の日本戦では平沢 大河(仙台育英<宮城>3年)が放った左中間への打球をダイビングキャッチするなど、守備はすでにプロと伍してもそん色ない。

 そして打撃面でもメキシコ戦で5打数4安打を記録するなど、ここまで32打数10安打、打率.312の活躍。173センチ75キロと体格的には日本人とは変わらないにもかかわらず、木製バットから広角に長打を放つマシエルに代表されるように、サッカー界で次々と10台の選手が欧州のトップリーグで活躍するのと同じく、野球界でも若年化は確実に進んでいる。

「侍ジャパンU-18代表」の4番はチームを代表する存在であることはもちろん、世界の名だたる同年代打者とも比較されるということ。一般人には想像を絶する重圧にもさらされながら、清宮は日々を戦っている。

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・2015年 第27回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ

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[page_break:重圧を受け入れ「世界一」のその先へ]重圧を受け入れ「世界一」のその先へ

清宮 幸太郎(早稲田実業)

 そんな清宮だが、その重圧から全く逃げていない。それどころか、さらに自らに重圧をかけ、そこを乗り越えることをミッションとしているようにも思える。韓国戦での4打数2安打を土台に臨んだキューバ戦もそうだった。

 曲りが大きいスライダーを武器にするサウスポー・ナハロに対し、第1打席はスライダーに空振り三振を喫したが、第2打席はそのスライダーを「変化球が多いので、それにしっかりと合わせる」ことを心がけ、リベンジの右前打。しかし、清宮が合格点を与えた打席はこれだけだった。

 第3打席のいい当たりの中飛は「良かったけど、まだ芯で捉えきれていない」。第4打席(捕邪飛)前、本塁打性の痛烈なファールにも、首を傾げ、「いや全然惜しくないですよ。上手く体は回転できて、振り抜けたのかもしれませんが、全体的に打ち損じが多いです」。ハングリーの塊。これが清宮の本質である。

 だからこそ、ボールの速い投手が非常に多いアメリカとの決勝戦でも清宮はひるまない。

 1stラウンドで登板したで投げた140キロ中盤の速球を投げ込む左腕のブラクストン・ギャレット。145キロ前後と130キロ前後のカットボールで圧倒するオースティン・バーグナー。キューバ戦で最速151キロを計測したクローザー役、レジナルド・ジェファーソンローソン……。しかし、侍ジャパンU-18の4番はこう言い切った。

「やっぱり田中 正義さんの速球が一番だと思います。田中さんを見てから速いといわれている投手でも、そう速く感じません。あとは自分がしっかりと捉えるだけです。たぶんみなさんもそう感じていると思います」

 チームの「第27回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」世界一獲得は当然のミッション。そして、その先にある2017年・カナダ開催「第28回WBSC U-18ベースボールワールドカップ」での優勝と世界一の打者となる礎を築くために。9月6日(日)18時、清宮 幸太郎は伝説創造のドアを自らのスイングで開きにいく。

(文=河嶋 宗一)

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