小笠原 昭治 / インターアクティブ・マーケティング

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1.用語は知っているけれども、定義が曖昧

先日、筆者のクライアントが外注しているWebコンサルタントを交えた三人で、
「インターネットからの注文を増やそう」
と、作戦を練っていた時のこと。
  • Webコンサル:インバウンド・マーケティングで、訪問者を増やしましょう。
  • 筆 者:インバウンド・マーケティング?
  • Webコンサル:読者の興味を引く記事や、動画などのコンテンツを発信して…
  • 筆 者:はい。
  • Webコンサル:自然検索や、SNS等のリンクで、こちらのサイトを見つけてもらって…
  • 筆 者:はい。
  • Webコンサル:何度も訪問したくなる仕組みを作るんです。
  • 筆 者:コンテンツ・マーケティングのことですか?
  • Webコンサル:違います。インバウンド・マーケティングは、アウトバウンドマーケティングの対極です。
  • 筆 者:アウトバウンド・マーケティングの対極?
  • Webコンサル:アウトバウンド・マーケティングは、広告やDMや電話営業で売りつけるマーケティングのことです。
  • 筆 者:わかります。
  • Webコンサル:インバウンド・マーケティングは、自然検索や、SNSのリンクで、訪問者に見つけてもらうマーケティングです。
  • 筆 者:だから、それって、コンテンツ・マーケティングのことですよね?
  • Webコンサル:Web上でのマーケティング戦略という意味では、そうです。
  • 筆 者:Web上でのマーケティング戦略?
  • Webコンサル:インターネットで通用するマーケティング戦略という意味です。
  • 筆 者:よく解りませんが(苦笑)、インバウンド・マーケティングと、コンテンツ・マーケティングは、同じではありませんよ?別です。
  • Webコンサル:えっ?どう違うんですか?

という会話がありました。皆さん、用語は知っているけれども、定義が曖昧ゆえに、混乱しているようですので、整理してみましょう。

2.インバウンドとアウトバウンドの違い

インバウンド・マーケティングや、コンテンツ・マーケティングは、ここ数年、出てきた用語で、今では、すっかり、

インバウンド・マーケティング=コンテンツ・マーケティング=Web戦略

の概念が定着している観がありますから、右へならえで、その解釈を受け継ぐのも良いでしょう。自由です。


しかし、マーケティングが付くかどうかは別にして、インバウンドや、アウトバウンドの概念は昔から(少なくとも、筆者がマーケティングの現場を駆け回っていた四半世紀以上前から)ありました。


テレマーケティングで、


インバウンドというと「お客さまから、電話がかかってくる」こと

を指し、

アウトバウンドというと、「お客さまへ、電話をかける」こと

を指します。


インバウンドもアウトバウンドも、テレマーケティングでは、ごくごく普通に交わされる用語です。


このように、

インバウンド(inbound)とは、お客さんのほうから「入ってくる」 こと

で、

アウトバウンド(outbound)とは、お客さんのほうへ「出ていく」こと

です。これに「マーケティング」を付ければ、お客さんのほうから、入ってくるように促すマーケティングが、インバウンドマーケティング。

お客さんのほうへ出ていくマーケティングが、アウトバウンドマーケティング。

たとえば、

新規営業のアポイント電話は、アウトバウンドの典型的な例

です。


なので、インターネットに限定されることはありません。


これがインバウンドマーケティングでしたら、

テレビ通販

を例に挙げると分かりやすいでしょう。 枝きりバサミや、磁気ネックレス等々、テレビ通販を見たお客さんが、商品の価値を知り、欲しくなって、注文の電話をかけます(インバウンドします)。テレビ通販と同様に、

反響広告

は、昔からあるインバウンド・マーケティングです。雑誌広告や、新聞広告を見たお客さんが、注文の電話をかけたり、ハガキを送ったり、 来店したりします(インバウンドします)

店舗

を例に挙げても分かりやすいでしょう。小売店や、飲食店は、お客さんのほうから入ってきますね?

食事やトイレットペーパー等々、お客さんが、商品の価値を知っていて、その価値を求めて入ってきます(インバウンドします)

3.プル戦略とプッシュ戦略

インバウンド・マーケティングは、

『ネットショップへ集客するために開発された』という説

があるためかどうか、インバウンド・マーケティングというと、
  • コンテンツ・マーケティング(後述)と同義か、
  • アウトバウンド・マーケティングと比較対照するために、
インターネット上に限って展開するマーケティングのように解釈されているようです(なので、コンテンツマーケティングと、インバウンドマーケティングの違いが分かりにくいのです)が、待ち受けるインバウンドを、マーケティングでは、

プル(引く)戦略

と呼びます。プル戦略は、お客さんの購入を促すマーケティングですから、

プル戦略と、インバウンド・マーケティングは同義

です。そして、プル(引く)戦略と対をなすのが、

プッシュ(押す)戦略

です。ダイレクトメールや、チラシや、飛び込み等、売る側から積極的に働きかけるマーケティングですから、

プッシュ戦略と、アウトバウンドマーケティングは同義

です。なので、構図としては、

インバウンド・マーケティング =コンテンツ・マーケティング=Web戦略

ではなく、
  • インバウンドマーケティング=プル戦略=待ち受け
  • アウトバウンドマーケティング =プッシュ戦略=売り込み

になります。決して、インターネット上で展開されるマーケティングに限った話ではありません。

4.インバウンドとアウトバウンドは不可分

実際の現場では、インバウンド(プル)と、アウトバウンド(プッシュ) が混在しており、

  • 広告を出す=アウトバウンド=プッシュと
  • コールセンターを設けて受注体制を整える=インバウンド=プル

を一つの戦略の中に組み込みます。そういう意味では、戦略というよりも、戦術に位置づけるほうが相応しいかも知れません。

たとえば、
  • 通販の広告を出して(アウトバウンドして)、
  • かかってくる注文電話を一本たりとも逃さないために、
  • 何十本ものインバウンド回線(受付専用電話回線)を用意したり、
  • 何十人もの電話オペレーターを常駐させたり、
  • 事務局を開設したり、

それ相応の費用と労力と時間をかけて、インバウンドの体制を整えます。

小売店もインバウンド(お客さんのほうから入ってくる)でしたね? インバウンドなのに、

  • チラシを配ったり
  • のぼりを立てたり、
  • ポスターを貼ったり、
  • 電柱広告を出したり、
  • 呼び込みするなどして、

アウトバウンドして(積極的に働きかけて)います。

店舗の顧客対応は、商品分類(日用品、買回り品、専門品、不規則品)によって異なりますが、

  • タイミングを見計らって、あるいは、
  • お客さんからの求めに応じ、はたまた、
  • POPを付けるなどして、
お店の側から「この品物は、いかがですか?」と働きかけています(アウトバウンドしています) このように

インバウンドと、アウトバウンドは、不可分

です。分けていては商売になりません。


が、学問上では、分けて体系化しないと、分かりにくいため、わざわざ分けているのかも知れません。


要するに、インバウンド・マーケティングは、
  • インターネットに限定されることなく、
  • リアルでも昔から行われているマーケティングで、
  • インバウンド・マーケティングと、コンテンツ・マーケティングは、イコールではなく、

インバウンド・マーケティング > コンテンツ・マーケティング

の構図(コンテンツマーケティングは、インバウンドマーケティングに含まれる) であることが、ご理解できるでしょう。

5.コンテンツマーケティングとは?

ここ数年、急速に確立しつつあるコンテンツ・マーケティング。コンテンツ・マーケティングとは、
  1. インターネット上に、
  2. 読者の興味を引く記事を公開し、
  3. 自然検索や、SNS等に貼られた被リンクで、
  4. 自社サイトの存在を発見、リピーターになってもらい、
  5. 段階を経て購入へ結びつけるWebプロモーション
です。AIDAの法則の通りに、
  1. 知って
  2. 興味を持って
  3. 欲しくなって
  4. 買う
という心理フローは、100年前からのマーケティングと何ら変わりありませんが、 インターネットに限らないインバウンド・マーケティングとの決定的な違いは、

インターネット上で展開される

ことです。


実店舗の売上が、立地で大きく左右されるのとは異なり、

コンテンツ・マーケティングに不動産は無関係

です。Amazon.comを例示するまでもなく、自宅に居ながら、世界中のネットショップへ訪問できます(世界中からネットショップへ集まってきます)


また、インターネットですから、AIDAのAttentionにあたる認知媒体が、広告や営業ではなく、

検索や被リンク

であること。プロモーションで、最も高額なのは、広告ですから、ぶっちゃけ、お金をかけずに、認知を拡大できます。1,000人の営業マンを雇う必要もありません。

ただし、商品を売る広告ではありませんから、チラシのようなサイトは読まれません。なぜなら、

  1. 先ず、WebデザインとSEOが相反して、自然検索されにくくなります。
  2. 次に、99.9%の訪問者は、情報を求めているだけで、顧客になりませんから、売り臭が出ると、嫌われます。
  3. 極めつけは、Aリスター(多くの読者を抱える人気の高いブロガー)が味方になってくれません。
そりゃそうですよね?「あんたの所の社員でもないのに、何が悲しくて、あんたに儲けさせるタメに、タダ働きせにゃならんのじゃ」ということです。そこで、急がば回れということで、
  1. 読者の興味を引く記事を公開し、
  2. 自然検索で訪問してもらったり、
  3. SNSで「いいねボタン押して〜」「ブクマして〜」と呼びかけたり、
  4. Aリスターにリンクを貼ってもらったりします。

まとめますと(短く定義すると)、

インターネット上で、商品よりも先に、自らの価値を伝え、リファーラル(クチコミ)を誘発させるWebプロモーション

が、コンテンツ・マーケティングです。

第二回(9月公開)『あなたの記事を見つけてもらうコンテンツマーケティング3つの秘訣』へ続く