『間違いだらけの組織マネジメント』 2/斉藤 秀樹
今回はアクションラーニングのセッション事例をお伝えします。
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◆ケース1 スケジュール通りプロジェクトが進まない
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▼ 状 況▼
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Aリーダーがマネジメントしているプロジェクトは、メンバー6名から構成されている。実力と経験を持った2名の中堅メンバーを中心に、4名は若手メンバーから構成されている。2名の中堅メンバーは担当業務をキッチリこなすものの、若手メンバーへ積極的に関わることもなく、質問されれば答えるといった程度。他の4名の若手メンバーは総じてモチベーションが低く、平気で納期に遅れ危機感もない。
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▼ 現状の対応▼
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中堅メンバーには若手メンバーの面倒を見るよう促しているが、あまり改善がみられない。若手メンバーには遅れる場合は早めに報告するよう指示するとともに、定例の進捗確認ミーティングを行っている。また、このような実務状況が続くと人事評価も含めて今後のキャリアにとっても不利になることを説明している。しかし、若手メンバーの改善の兆しはない。
このような実情を踏まえ問題提示は
「プロジェクトメンバーが協力してプロジェクトを進めない」
とし、セッションに入りました。
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▼ セッション▼
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開始から20分は問題の深掘りのために様々な質問がされます。
まず、プロジェクトの結成時期、メンバーの性格や日常的な行動の特徴、勤務態度、メンバー間の関係、仕事についての理解や興味など様々な質問によって当事者以外のメンバーにも、Aリーダーの課題がありありと実感できるようになっていきます。
この過程で、いくつか共通的な気づきが生まれます。
Aリーダーがメンバーの性質や特徴、スキルレベルなどについてほとんど知らないのではないかという疑問です。そこでメンバーから様々な質問が出されました
「あなたはメンバーの管理者ですか、それとも支援者ですか」
「あなたはメンバーひとりひとりを大切な人材だと考えていますか」
「あなたは納期を守るために彼らが最も必要としていることを理解していますか」
これらの質問と回答を終えた後にメンバーが課題の再定義(各自の視点から見えた本当の課題を提示すること)を行います。
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▼ 再定義結果(本当の課題)▼
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メンバーBさん「Aリーダーの課題は部下育成を行っていないことです」
メンバーCさん「Aリーダーの課題は部下に対する興味関心が希薄であることです」
他のメンバーも同様の再定義をしました。
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▼ 現象と真因▼
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この事例は他の多くの事例の代表的な要素を持ったものです。
これらの事例から分かる「表面的な現象」と「本当の課題」の間にあるものについて整理してみます。
1)他者に問題がある(部下、メンバーに)
⇒自己に問題がある(リーダーに)
2)表面化している課題は「やり方」に関連したもの(ビジョン(経営、マネジメント課題)、納期(実務課題))
⇒真の課題はリーダーの姿勢や関わり方などの「あり方」に関連したもの
このような事例を数百と積み上げていくことで仮説が確信へとなっていきました。
しかし、構造が明らかになっていくに従って、ひとつの疑問が大きくなっていきました。
他責ややり方に問題(以降、Do)があるという課題の本当の原因(以降、真因)の8割があり方(以降、Be)となる。一方、残りの2割はBeの改善を必要とせず、やり方(Do)の改善によって、しっかり成果が出るケースもあるのです。
このチームによって異なる結果の差が何によって生まれるのか。それは前回でもお話した
Do×Be(チーム特有の要素)
によって生まれるものです。問題はBeの違いは何によって作られるのかという疑問です。
これは、Beの状態がチームによって異なることを意味し、DoとBeの状態を良好に高めていくことでチーム力を最大化できることははっきりとしてきました。
しかし、Doはナレッジの投入や学習によって高めることができますが、Beを高めDoと連動する方法がわかりません。様々な研究の結果、チームビルディング、特にチーム成長という考え方によってチーム状態(特にBe)の変化を説明できることを発見しました。
(3話に続く)