小倉 正嗣 / 株式会社リアルコネクト

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特に最近のベンチャーを語る起業家・経営者を見るにあたり、協力したり、分業したり、情報交換したりするのは良いのだが、群れているだけに感じられることが多い。

従業員を雇う理由も、表立ってはもっともらしい理由をつけてはいるものの、単に寂しさを紛らわすために雇っている様相だ。

中小企業診断士として創業や補助金に関わると頻繁に感じる感覚。

経営者 みんなでやれば 怖くない

いやいや、経営者はみんなと違うことをやるから経営者なのだ。みんなが出来ない自分だけの価値を追い求めるから経営者なのだ。

みんなと同じほど恐ろしい物はない。

誰かと同じことをやって安心をしていたいのであれば、会社員になったほうがはるかに良い。

わざわざ不安定な生活の中で誰かと同調して行動しなくて良いのではないか?

「他の起業家はどうしてますか?」このセリフは度々発するものではない。経営者としての気概があるものの発する言葉とは思えないからだ。

起業数が少ないと市場の新陳代謝がなくなり、企業の数が減る。従って、起業家を増やすための施策が必要だ。

そうして創業補助金、持続化補助金その他諸々、様々な補助金が供給される。アベノミクスの効果も大きいだろう。

なんとなく、起業ブームのような物を作り出し、リスクテイカーがかっこいい様な風潮を作り出す。


そこで生まれてくるのはな何か?


みんながやっているから、ちょっとかっこいいから、サラリーマンに飽きたから。


「起業をしてみよう」


起業のハードルが下がったのは、悪いことではない。1円あれば株式会社が作れるのは1000万円の時代よりは少し進化があると言って良いだろう。

ただ、1円で会社を作ったら、当月自分の給料を払った瞬間に債務超過になることくらいは学んでから起業すべきである。いやそもそも、お給料払うお金が無いんだけれど。

さて、起業してみた。周りの経営者はどうしているのか?異業種交流をしてみる。

なんとなく情報交換を出来そうな経営者と知り合えた。なんとなく先んじている経営者と面識が持てた。

定期的に情報交換と銘打ち、ランチ会・飲み会・勉強会・交流会へと顔を出す。

そして、いつものメンバー、すなわち「群れ」が発生する。なんとなく、いつも一緒にいる経営者の集まり。

確かに心は落ち着くだろう。同じ悩み・同じ苦しみを分かち合えるメンバーだ。当然のこと。

しかし、改めて考えてみよう。経営者がやるべきことは、他社にない新たな価値を世の中に供給すること。

そのためにリスクを背負って経営者をやる。既存の企業には生み出せていない、新しい価値をリスクを背負ってまで作り出す。だからかっこいいのだ。

かっこいいから起業するのか、起業するからかっこいいのか。そこを間違えると本末転倒である。

新しい価値の根幹は群れの中では生まれない。根幹となる理念や考え方は自らの内面と向き合い、他の誰でもない「自分」のなすべきことを考えるから生まれる。

そして、他社と他者と違うことをするから、そこに競合差別化そしてUSPが生まれる。

決まった集団で群れると思考の回路が画一化され、他者と違う動きを取りにくくなる。


日本という国は不思議な国だ。

子供の頃は人と違うからと言っていじめられ、大人になると人と違うことをしないと儲からないという。

しかしこれが事実ならば仕方がない。


経営者は群れてはいけない。


他者の考えと必要以上に同調してはいけない。

孤独に耐え、自分の内面と向き合い、オリジナリティのある価値を作り出し、市場や顧客と向き合うことでしか生き残っていけないのだから。