社員は会社の仕組みを『間借り』している/泉本 行志
「お客さんは俺に月単価○○円払っているのに、うちの会社はどんだけピンハネしてるんだ!」
「あの人事部長はほとんど仕事してないくせに、給料泥棒だろう」
みたいなやつです。
確かに低賃金化が社会問題になってたりはするけど、
今日はそんなマクロ的な話をしたいわけではありません。
また、もう会社にぼったくられるのはやめて、早く独立起業しようぜ!
的は話をするつもりもありません。
逆にいえば、上に書いた愚痴のようなことを単純に思っている人は、
独立起業するだけのビジネス・経営に対する知識がまだないといえます。
今日は、
「あなたは何をもって会社から給料をもらっているか」
ということについて、少し考えてもらいたいと思います。
既に独立していたり、事業を自らやってる人は、
おそらくこれから話す内容は、理解しやすいのではと思います。
一方、サラリーマン・マインドの人は、
今日の話に少し違和感を感じるかもしれません。
まずは心をオープンにして考えてみてください。
あなたの勤める会社は、あなたの何に対して給料を払っているか?
それは、「あなたの持つ資産」に対してお金を払っています。
ここでいう資産というのは、あなたの能力・スキル・経験であったり、
あるいは人脈だったりします。
では今度は、あなたは会社の何に対してお金を払っているか?
「自分が会社にお金を払ってる」?
これはどういうことか。
会社は、あなたの資産(能力・スキル・・)を活用(配置)して、
会社全体として儲けを生む仕組み(システム)を構築しています。
その一方、あなたはその会社の仕組み(システム)を利用すること、
つまり、その仕組みの一部を間借りをすることで収入を得ています。
ちょっと分かりにくいかもしれませんね。
これをもう少し説明するために、私が3年くらい前書いた
事業設計に関するメール講座から引用してみましょう。
〜ここから引用〜
従業員としてどこかの会社で仕事をするということは、
実は、その会社のビジネスシステムを
「間借りする行為」
なのです。
つまり、他人が築き上げた事業のシステムを
利用させてもらって、お金を稼いでいるということです。
もう少し解説していきましょう。
多くの人がそうであるように、
あなたは自分の持つ能力を、自分ひとりの力で、
お金に変えることは難しい。
つまり、自分が提供できる能力・労力だけを、
直接販売して商売することはできない。
だから、既に出来上がっている会社のシステムの上で活動し、
自分の能力や労力を価値に変えてもらい、
対価としてのお金をもらっているということです。
今まで、こんな風に考えたことはありますか?
言い換えれば、勤めている会社あるいはバイト先のビジネスシステムの
一部を間借りして、金儲けをさせてもらっていたということになります。
(もちろん、これは経済的な側面だけの話をしています)
これは、たとえば、事業主がフランチャイズに加盟したり、
ネット上でいえば楽天などのショッピングモールに出店し、
既に構築された仕組みを借りて商売しているのと、
大きく言えば、本質は変わりません。
営業マンでも、オペレーターでも、デザイナーでも、なんであれ、
自分一人では、自分が提供できるものを、直接販売して
商売として成り立たすことが難しい。
だから、既に誰かが構築したビジネスのシステムの一端を借りて、
その利用料を控除された上で、給与という名目でお金を得ているのです。
もし自分の力だけで、自分が提供するものをもって商売できれば、
その人は独立してやっていけるということになります。
〜ここまで引用〜
最初に出てきたサラリーマン的愚痴をもう一度考えてみましょう。
「お客さんは俺に○○円払っているのに、うちの会社はどんだけピンハネしてるんだ!」
もし自分が独立して商売をした場合に、集客したり、ノウハウを蓄積したり、
ITシステムを準備したり・・・など、どれだけのお金と労力と時間を費やし、
どのくらいのリスクを負う必要があるでしょうか。
それを理解せず、単純に会社はボッたくってると被害者的な発想だけ
しているようでは、ビジネスマインドに欠陥があります。
これでは、永遠にサラリーマンとして組織に依存する生き方で終わるでしょう。
あるいは、
「あの人事部長はほとんど仕事してないくせに、給料泥棒だろう」
私が耳にしたこの愚痴のケース限定でいえば、
この人事部長の資産は圧倒的な人脈です。
通常だったら、なかなかよい人材が入ってこないような会社にも、
彼の人脈で、多くの優秀な人が入社しています。
会社は彼の「人脈」という資産にお金を払っているのです。
労働時間にではありません。
たとえ、オフィスにいるときはノラリクラリしていたとしても、
彼の存在が、潜在的な有能な社員を呼び寄せているのであれば、
それが価値を提供し、給料を貰うに値します。
それを人事部長の会社での仕事っぷりだけみて、
給料もらい過ぎだとか言っているのは、ビジネスマインドにかけています。
毎日遅くまでオフィスで仕事をして、あくせく働いていることに
価値があるというのは、典型的なサラリーマン発想です。
どうでしょうか。
あなたには、ビジネスマインドがありましたか?
サラリーマン的発想しかできてない人にとっては、
なかなか腑に落ちない話だったかもしれませんね。
会社(ビジネスシステム)の中で働く人の視点だけでなく、
ビジネスシステムを構築する側の別次元の視点をもつことは、
新しい価値を創造するプロジェクトで仕事をするような、
個人の能力で勝負するストリート・スマートな人にはとても重要です。
今日の話をもう一度熟考してみましょう。
そして、新しい視点を身につけてください。