見た目も華やかで、香りも豊かなバラ

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5〜6月はバラの季節。鑑賞用としてはもちろん、その華やかな香りから、天然の香料としても広く親しまれている。
バラを使ったアイテムというと、日本ではスキンケアやアロマテラピー用が多いが、近ごろは食品でもバラの香りやテイストをうたうものが増えてきた。

昨年はハーゲンダッツ ジャパンが創業30周年を記念して、ローズの風味を楽しめる創作アイスクリームを発売。また今年6月8日からはキッコーマン飲料が東京都市大学と共同開発したローズの香りが特徴のフレーバーウォーターを期間限定で販売している。

さらに、こうしたカジュアルなアイテムだけでなく、本物のバラの花びらや無添加のローズウォーターをぜいたくに使った本格的な商品を見かける機会も増えてきた。たとえば、日比谷花壇では島根県のオリジナルバラ「さ姫」の花びらやローズウォーターを使ったエクレアなどのスイーツを展開中。また、東京・汐留のレストラン「Fish Bank TOKYO」では、イラン産のバラ「ダマスクローズ」から抽出した無添加ローズウォーターを使ったバラ尽くしのランチコースを提供している。

ちなみにローズウォーターとは、水蒸気蒸留法という方法でバラから精油をつくるときに、同時に得られる芳香水のこと。「Fish Bank TOKYO」の料理にも使われているイラン産のダマスクローズを使ったローズウォーターを販売しているヴァレデローズの新井美月さんに話を聞くと、「日本ではローズウォーターを飲む習慣があまりなく、商品化されているものもスキンケアが中心ですが、バラ発祥の地といわれ、国花にバラを持つイランでは医薬品の代用として治療に役立てられた歴史もあります」とのこと。

飲んでみると、爽やかで薫り高く、少しとろみがある。色は無色透明。そのまま飲んでもよいが、水などで10倍程度に希釈するのもおすすめ。夏場なら炭酸水で割ると、オシャレだし、すっきりして飲みやすい。このほかヨーグルトや生クリームに混ぜたり、サラダやカルパッチョのドレッシングにしたり、多彩な楽しみ方ができる。

同社の商品は40代以上の女性を中心に人気。ローズウォーターに含まれる香気成分ゲラニオールには、加齢臭の元であるノネナールを抑制する働きがあるといわれており、「この話をすると、女性がご主人に飲ませようと購入するケースもあるんですよ」と新井さん。

“30年以上バラだけを研究してきました!”というバラのエキスパートである岐阜県立国際薔薇アカデミー学長の上田義弘さんによれば、バラの歴史は今から2500年前のペルシャ帝国(現在のイランを中心に栄えた国家)にまでさかのぼるそう。「ローマ人はバラを香油や医薬品などとして使い、バラの花びらを浮かべたお風呂に入ったり、二日酔いの薬としてバラを利用していたりした話もあります」。ローマ人も二日酔いになっていたなんて、なんだか妙に親近感!

上田さんいわく、バラの薬用効果としては、高血圧や不整脈の現象女性の生殖器系への効用、スキンケア(抗炎症作用、肌へのうるおい)などへの効果が期待できるとのこと。また香りには、ストレスを和らげたり、自律神経機能を調節する効果もあるそうだ。もちろん、こうした効果が期待できるのは、本物のバラや天然のローズウォーターなどに限られる。芳香剤のように人工的に調香されたものにはないのでご注意を。

バラのメッカ、イランでは、ほとんどの家庭に常備されているというローズウォーター。この夏はみずみずしい香りに癒やされてみては?
(古屋江美子)