これでiOSの日本語入力環境が劇的に変わる? 満を持して登場したiOS 8対応 ATOK for iOS 価格は1500円
iOS 8対応のATOK for iOSがリリースされた。iPhone/iPadでの日本語入力環境を劇的に変える可能性を持つこの製品について、開発元のジャストシステムが説明会を開いたので、その内容をレポートする。なお、説明会は、ATOK for iOSの正式公開前に実施された。
●iOS 8対応の日本語入力システム iOS for ATOKがリリース
我々日本人にとって、iOS 8の大きなメリットのひとつが、IMEを自由に選択できるようになったことだ。これまでは、標準搭載のIMEしか使えなかったが、iOS 8になって、ようやくWindowsやAndroidのように、ユーザーが自由にIMEを選択できるようになった。
iOS 8の公開に合わせて、すでにmazecやSimejiなどのIME製品がダウンロード可能となっている。そして、大本命であるATOK for iOSも、ようやくAppStoreからダウンロード可能になった。価格は1500円だ。ATOK for iOSの正式公開に先立って、ジャストシステムはATOK for iOSの説明会を開いた。ここでは、その内容を報告しよう。
ATOK for iOSの開発を担当したCPS事業部 開発部 入江賢治氏。ATOK for iOSの機能について説明した。
●変換エンジンはWindowsやMac用のATOKがベース
ATOK for iOSの変換エンジンは、Android用のATOKとは異なり、Windows版およびMac版のATOKをベースにした「ATOK EV Engine」が搭載されている(EVはEvolutionの略)。入力した読みの前後関係を判断し、同音異義語を適切に変換する。例として、次のような変換例が示された。
○栓を閉める
×線を占める
○メガネを拭いた
×メガネを吹いた
○花火が湿る
×花火が占める
○故きを温ねて新しきを知る
×古きを訪ねて新しきを知る
さらに、先頭の数文字を入力するだけで言葉を推測して変換できる「推測変換」、「こんふぃでんしゃる」→「confidential」のようにカタカナ語を英単語に変換する機能、「きょう」→「2014/09/18」のように日時を変換する機能、英語入力支援機能なども用意されている。
Windows版でおなじみの、ユーザーの入力した言葉を自動補正する機能も用意されている。次のように、ユーザーが間違って覚えている言葉も自動的に補正してくれる。
ふいんき→雰囲気(ふんいき)
こんぼにえ→コンビニエンスストア
うるおぼえ→うろ覚え(うろおぼえ)
なお、用意されている機能は、必ずしもWindows/Mac版と同等はかぎらないようだ。たとえば、Windows版の日付変換では、「きょう」→「2014/09/18」「2014年9月18日」……と複数の書式を選択できる。しかし、用意されていたデモ機で試したところ、変換できる日付は1種類だけだった。こうした細部での違いは、けっこうあるのではないかと予想される。
前後の文脈を判断して同音異義語を適切に変換する。
ユーザーのミスを自動補正する機能も用意されている。
●iPhoneにはテンキーボード、iPadではQWERTYキーボードを搭載し、独自のカーソル操作も用意
独自のキーボードが利用できるのもiOS for ATOKを利用するメリットだ。iPhoneではテンキーボードでのマルチタップとフリック入力、iPadではQWERTYキーボードが利用できる。なお、キーボードについては、今後も拡充していく予定ということだ。
カーソル操作での支援機能としては、「らくらくカーソル移動」と「まとめて削除」という機能が用意されている。「らくらくカーソル移動」は、カーソル位置をボタン操作で左右に移動する機能だ。「まとめて削除」は句読点などの区切り単位で文章を一気に削除する機能である。
iPhoneのテンキーボードでのフリック入力。
まとめて削除。句読点の区切り単位でまとめて削除できる。
iPadではQWERTYキーボードが利用できる。
iPadでも入力ミスが自動的に補正される。
●Bluetoothキーボードやカナ入力には未対応だが、今後の展開では可能性もあり
説明会では、記者・ライターからいくつか質問も出た。その中で気になったものをいくつか紹介する。まず、現時点ではBluetoothキーボードには対応していない。理由は技術的な問題だそうで、今後、対応策が見いだせれば提供したいとのことだ。
カナ入力には対応していない。これは、ユーザーからの要望があれば検討したいとのことなので、カナ入力のユーザーはリクエストを送ると効果があるかもしれない。個人的には、ぜひ対応してほしい。
また、今後、「ATOK Syncアドバンス」というWindows版/Mac版の辞書と同期するサービスが予定されているが、同期できるのはユーザーが登録した単語のみということだ。
あと、日本語版はまだ出ていないが、マイクロソフトのiPad版 Officeとの動作検証については、特に行っていないとのこと。日本語版のiPad版 Officeがリリースされれば、iOS for ATOKとの組み合わせがデファクトになると予想されるので気になるところだが、そのあたりはリリース後の話になるのだろう。
●今後の開発ロードマップも発表
説明会では、iOS for ATOKの今後の開発ロードマップも示された。示された予定は次のとおりだ。
◆2014年10月〜12月
・iPhone向けQWERTYキーボード
・iPad向けテンキー
・iPadなどの大画面対応
◆2015年1月〜3月
・ATOK Syncアドバンス
・絵文字入力
◆2015年4月〜6月
・テーマ対応
・ATOKキーワードExpress
◆2015年7月〜9月
・電子辞典連携
・校正支援強化 等
このロードマップからもわかるように、ATOK for iOSは、必ずしも完成された姿で登場したわけではない。今後、上記のロードマップに沿って、ユーザーのフィードバックを受けながら徐々に機能を拡充していくようだ。
iOS for ATOKの登場で、やっと仕事でも使えるレベルの日本語入力環境が整備されると期待したが、過剰な期待は禁物のようだ。ようやく、iOS上でATOKがスタートを切ったというところだろう。
<動作環境>
・対応OS:iOS 8
・対応機種:iPhone 6世代、iPhone 5世代、iPhone 4世代、iPad 2以降
・必要空き容量:90MB
・ ATOK for iOS
・ mazec
・ Simeji
井上健語(フリーランスライター)
●iOS 8対応の日本語入力システム iOS for ATOKがリリース
我々日本人にとって、iOS 8の大きなメリットのひとつが、IMEを自由に選択できるようになったことだ。これまでは、標準搭載のIMEしか使えなかったが、iOS 8になって、ようやくWindowsやAndroidのように、ユーザーが自由にIMEを選択できるようになった。
iOS 8の公開に合わせて、すでにmazecやSimejiなどのIME製品がダウンロード可能となっている。そして、大本命であるATOK for iOSも、ようやくAppStoreからダウンロード可能になった。価格は1500円だ。ATOK for iOSの正式公開に先立って、ジャストシステムはATOK for iOSの説明会を開いた。ここでは、その内容を報告しよう。
ATOK for iOSの開発を担当したCPS事業部 開発部 入江賢治氏。ATOK for iOSの機能について説明した。
●変換エンジンはWindowsやMac用のATOKがベース
ATOK for iOSの変換エンジンは、Android用のATOKとは異なり、Windows版およびMac版のATOKをベースにした「ATOK EV Engine」が搭載されている(EVはEvolutionの略)。入力した読みの前後関係を判断し、同音異義語を適切に変換する。例として、次のような変換例が示された。
○栓を閉める
×線を占める
○メガネを拭いた
×メガネを吹いた
○花火が湿る
×花火が占める
○故きを温ねて新しきを知る
×古きを訪ねて新しきを知る
さらに、先頭の数文字を入力するだけで言葉を推測して変換できる「推測変換」、「こんふぃでんしゃる」→「confidential」のようにカタカナ語を英単語に変換する機能、「きょう」→「2014/09/18」のように日時を変換する機能、英語入力支援機能なども用意されている。
Windows版でおなじみの、ユーザーの入力した言葉を自動補正する機能も用意されている。次のように、ユーザーが間違って覚えている言葉も自動的に補正してくれる。
ふいんき→雰囲気(ふんいき)
こんぼにえ→コンビニエンスストア
うるおぼえ→うろ覚え(うろおぼえ)
なお、用意されている機能は、必ずしもWindows/Mac版と同等はかぎらないようだ。たとえば、Windows版の日付変換では、「きょう」→「2014/09/18」「2014年9月18日」……と複数の書式を選択できる。しかし、用意されていたデモ機で試したところ、変換できる日付は1種類だけだった。こうした細部での違いは、けっこうあるのではないかと予想される。
前後の文脈を判断して同音異義語を適切に変換する。
ユーザーのミスを自動補正する機能も用意されている。
●iPhoneにはテンキーボード、iPadではQWERTYキーボードを搭載し、独自のカーソル操作も用意
独自のキーボードが利用できるのもiOS for ATOKを利用するメリットだ。iPhoneではテンキーボードでのマルチタップとフリック入力、iPadではQWERTYキーボードが利用できる。なお、キーボードについては、今後も拡充していく予定ということだ。
カーソル操作での支援機能としては、「らくらくカーソル移動」と「まとめて削除」という機能が用意されている。「らくらくカーソル移動」は、カーソル位置をボタン操作で左右に移動する機能だ。「まとめて削除」は句読点などの区切り単位で文章を一気に削除する機能である。
iPhoneのテンキーボードでのフリック入力。
まとめて削除。句読点の区切り単位でまとめて削除できる。
iPadではQWERTYキーボードが利用できる。
iPadでも入力ミスが自動的に補正される。
●Bluetoothキーボードやカナ入力には未対応だが、今後の展開では可能性もあり
説明会では、記者・ライターからいくつか質問も出た。その中で気になったものをいくつか紹介する。まず、現時点ではBluetoothキーボードには対応していない。理由は技術的な問題だそうで、今後、対応策が見いだせれば提供したいとのことだ。
カナ入力には対応していない。これは、ユーザーからの要望があれば検討したいとのことなので、カナ入力のユーザーはリクエストを送ると効果があるかもしれない。個人的には、ぜひ対応してほしい。
また、今後、「ATOK Syncアドバンス」というWindows版/Mac版の辞書と同期するサービスが予定されているが、同期できるのはユーザーが登録した単語のみということだ。
あと、日本語版はまだ出ていないが、マイクロソフトのiPad版 Officeとの動作検証については、特に行っていないとのこと。日本語版のiPad版 Officeがリリースされれば、iOS for ATOKとの組み合わせがデファクトになると予想されるので気になるところだが、そのあたりはリリース後の話になるのだろう。
●今後の開発ロードマップも発表
説明会では、iOS for ATOKの今後の開発ロードマップも示された。示された予定は次のとおりだ。
◆2014年10月〜12月
・iPhone向けQWERTYキーボード
・iPad向けテンキー
・iPadなどの大画面対応
◆2015年1月〜3月
・ATOK Syncアドバンス
・絵文字入力
◆2015年4月〜6月
・テーマ対応
・ATOKキーワードExpress
◆2015年7月〜9月
・電子辞典連携
・校正支援強化 等
このロードマップからもわかるように、ATOK for iOSは、必ずしも完成された姿で登場したわけではない。今後、上記のロードマップに沿って、ユーザーのフィードバックを受けながら徐々に機能を拡充していくようだ。
iOS for ATOKの登場で、やっと仕事でも使えるレベルの日本語入力環境が整備されると期待したが、過剰な期待は禁物のようだ。ようやく、iOS上でATOKがスタートを切ったというところだろう。
<動作環境>
・対応OS:iOS 8
・対応機種:iPhone 6世代、iPhone 5世代、iPhone 4世代、iPad 2以降
・必要空き容量:90MB
・ ATOK for iOS
・ mazec
・ Simeji
井上健語(フリーランスライター)