アベノミクス効果なのか、好景気の気配が感じられる日本経済。とはいえ、我々庶民が実感するほどでもない。

将来に対する不安はいまだ大きく、公的年金に対する不安も払拭されているとは言い難い。はたして今、20代、30代の人間は、老後に必要十分な年金を受け取ることはできるのだろうか? この少子化の時代、年金制度そのものが破綻してしまわないのだろうか?

これらの疑問を、日本興業銀行に勤めた後、J.P.モルガン、リーマン・ブラザースなどを経て、現在は経営コンサルタント会社インフィニティの代表を務める岩崎日出俊氏が、わかりやすく解説してくれた。

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一時期「年金は破綻する」との情報がメディアにあふれましたが、それはまずあり得ません。

でも、問題点はたくさんあります。例えば、現在採用されている「賦課(ふか)方式」もそのひとつ。

賦課方式とは受給者の年金を現役世代が支払う保険料で賄(まかな)う方式で、高度成長期のように子供が増え続けた時代はうまく機能していました。

ところが、日本は急激に少子高齢化が進んだので、世代によって極端な不公平が生じてしまったのです。

数字で表すと、1960年にはひとりの年金受給者を11人が支えていたのに、今や3人弱でひとりの受給者を支えている状態です。

年金の支払額と受給額を比較しても、今年金を受給している人たちに比べ、未来の受給者は支払う額だけが増え、見返りが減ってしまう。しかも、国民年金を運営する役人が、過去に加入者のお金をムダ遣いした事実も明らかになっています。

こんな現実を知れば、「オレたちの金で暮らす年寄りは許せない!」「年金を食いものにした役人は辞めさせろ!」と怒りたくもなります。国民年金の保険料支払いが、バカらしく思える人もいるでしょう。

実際に現在、国民年金に加入すべき人のうち、40%以上もの人が加入していません。ただし、国民年金は厚生年金、共済年金の老齢基礎年金部分と財政基盤が共通化されているので、公的年金を払っていない人の数は、全体から見れば5%弱です。

しかも、国民年金の保険料を払っていない人には年金受給資格がないので、その数が40%を超えていても、年金の財政破綻は理論上起き得ません。

20年後、30年後の年金支給額が現状よりも低くなる可能性はありますが、それでも月額6万円ぐらいにはなると予想されます。これならなんとか、最低限の生活の“足し”にはなるでしょう。

一方で、これから先は生活保護制度の支給要件が今よりもずっと厳しくなりそうですから、「お金がなくなったら生活保護」という考えは、捨てたほうがいいと思います。

目先の不公平感に惑わされて国民年金に加入しないことは、自爆テロにも等しいのです。

(取材・文/本誌エコノミクス班)