決勝戦、大雪で延期の「英断」
高体連の「様変わり」を評価する

決勝(1月14日 東京・国立競技場=19日に延期)
 
★一般の常識では「取りやめ」が当然
 高校選手権(中)では決勝戦の感想を書くつもりだったが大雪で14日の試合は取りやめ、19日に行うことになった。5日間の延期である。
 14日。東京は朝のうち雨だったが、やがて雪になり、しんしんと降り積もった。
 大会を運営している高体連サッカー部は、試合決行の方針で雪かきを始めていたが、正午ごろに取りやめを決断。試合開始時刻の午後2時に延期を発表した。
 雪は夜まで降り続くという予報だったから、完全に除雪して試合をするのは不可能だった。一般の人たちの常識では「取りやめ」が当然だろう。  
 しかし、降り続く雪の中で、雪上の決勝戦を強行する選択肢はあった。
 そういう中で、大会を運営している高体連サッカー部の役員が延期を決めたのは「英断」だったと思う。

★観客対策とテレビ対策
 いま80歳のぼくが学生だったころ、つまり半世紀以上前には「雨が降ろうが槍(ヤリ)が降ろうが試合をするのがサッカーだ」と言われていた。その当時なら「雪の上でも試合は出来る」と強行していただろう。
 しかし、いまは事情が違う。
 すでに約3万枚の入場券が売れている。雪と寒さの中で出かけるのをやめる人もいるだろう。大雪のため電車も止まっている。国立競技場に来ることが出来ない人がいる。
 「高校生のための大会だ。お客さんに見せるための試合ではない」という建前論を押し通すのは無理である。
 一方で、テレビ中継の問題がある。全国の民放テレビ43社では午後2時から2時間余の中継を予定している。プロ野球が雨で中止になったとき、テレビの代替プログラムを「雨傘番組」という。高校サッカー決勝の放映中止には「雪傘番組」が必要だった。

★矛盾する要素を広い視野で調整。
 観客のためには延期がいい。テレビは強行がいい。矛盾する二つの問題があった。
 高校生の大会だから、授業や入試との関係もある。
 今回は5日後の土曜日に国立競技場があいていたのが幸いだった。
 そういう、もろもろの事情を考えると、難しい決定だったに違いない。
 選手たちに、いい状態で、いいプレーの出来る状態を提供することが重要である。
 観客やテレビ視聴者に、いい試合を見てもらうことも無視できない。
 高体連サッカー部は、狭い考えの教育論にこだわらず、矛盾する要素を広い視野で調整し、賢明な決定をした。
 一般の人たちからみれば常識的な決定を「英断」と評価するのは、そういうわけである。