台湾で撮影中の台湾映画『KANO』。「1931年に台湾の嘉義農林学校・野球部が、夏の甲子園の決勝戦まで勝ち進んだ」という実話をベースに映画化、と話題性十分だが、実力派日本人俳優の出演でさらに注目を集めそうだ。(写真は「果子電影公司」提供)

写真拡大

 2012年11月にクランクイン、現在台湾で撮影中の台湾映画『KANO』。「1931年に台湾の嘉義農林学校・野球部が、夏の甲子園の決勝戦まで勝ち進んだ」という実話をベースに映画化、ということだけでも話題性十分だが、実力派の日本人俳優の出演でさらに注目を集めそうだ。(写真は「果子電影公司」提供)

 KANO野球部の核となる人物、近藤監督を演じるのは個性ある演技派の永瀬正敏。馬志翔(マー・ジーシャン)監督は「個性とイメージが近藤役にピッタリで、永瀬さん以外考えられなかった」と語るほど起用に思い入れがあるとのこと。スケジュールなどの問題で悩んでいたという元野球少年の永瀬は、「この映画のお話をいただいた時、日本を中心にいろいろな問題が起こっていました。でも1920年代後半から30年代という混沌(こんとん)とした時代に、近藤監督とともに人種をこえ目標に向かってプレイした選手のみなさんがいらっしゃった、という事実を多くの方々に知っていただきたいと思い、出演を決めました」と語った。25年来の友人である林海象監督からの勧めも加わって、出演の意思が強まったようだ。「古くからの友人たち、新しく出会った友人たちとの絆は今後も消え去ることはない」という思いを、永瀬は抱いている。

 永瀬演じる近藤の妻役は、坂井真紀に決定。和服姿で2人の娘の世話をしながら、近藤監督と野球部を支える賢くて美しい妻の姿を演じる。「古風な女性の生き方に引かれ、この作品が訴えるテーマに共鳴しました」と語った坂井は、数年前に永瀬との共演経験があり息がぴったり合う自然体の演技を披露しているという。

 続いて台湾でも知名度の高い大沢たかおも、「烏山頭ダムの父」と呼ばれる八田與一役で出演。八田は現在の台湾においても、重要な日本人の一人だ。本作を通して八田與一という人物を知ることになった、大沢。撮影前に八田氏のゆかりの地を訪ね、「僕もこの作品を通して、八田さんのように台湾と日本をつなぐ架け橋の一員になれたら」と意気込んでいたそうだ。

 またマー監督がフランス映画『ル・エリソン』の演技を見て、ほれ込んだという伊川東吾も出演。出番は少ないながらもキーマンとなる役を演じているという。

 本作は魏徳聖(ウェイ・ダーション)監督のヒット映画『海角七号−君想う、国境の南−』、『セデック・バレ(原題:賽徳克・巴莱)』に続く、映画会社・果子電影の第3作目となり、ウェイ監督はプロデュースを務める。野球という球技を愛していた人間たちの純粋な心を描く本作は、多くの人の感動を誘う作品になることだろう。3月のクランクアップと完成を心待ちにしたい作品だ。(編集担当:饒波貴子)