当時、枝野幸男経産相は標準的な家庭で電気料金への上乗せは「初年度で月額60〜120円」とし、国民の理解を求めた。ところが昨年、政府がまとめた電源構成別の発電コストはメガソーラーについて1キロワット時当たり30.1円〜45.8円と試算されている。従って政府決定は上限に近く、国民負担よりも事業者の顔色を窺うスタンスがより鮮明ということ。問題はその先だ。実は、日本に先んじて割高な買い取り制度を始めた欧州勢が、今や軌道修正を余儀なくされているのである。
 「欧州債務危機の煽りを受け、イタリア、ギリシャが買い取り価格の引き下げに追い込まれたし、ドイツでは脱原発や原油高騰で電気料金の値上げが必至となり、買い取り価格の引き下げを迫られている。それどころか、スペインでは新規参入が相次いだ結果、粗悪品を使った手抜き工事が横行して深刻な社会問題になっている。これが明日の日本にならない保証はありません」(業界関係者)

 確かにきめ細かい営業体制と品質の面で日本企業は中国勢を凌駕する。しかし「装置産業化した太陽電池市場では規模の拡大、すなわち大量生産でのコストダウンこそが生命線」(業界筋)とあって、迎え撃つ日本勢は「徐々にシェアを落としている」(同)のが実情だ。
 直近のデータとしては2010年の実績で国内シェアのトップはシャープ(36%)、次いで京セラ(25%)、三洋電機(現パナソニック18%)の順だったが、まだ当時は黎明期。シャープは昨年秋にメガソーラーを戦略の要に据え、京セラはパネル供給メーカーの一方で鹿児島市にメガソーラーの建設を計画。三洋電機と統合したパナソニックは約450億円を投じてマレーシアに太陽電池工場を新設するなど、中国勢との“本土決戦”シフトを怠らない。しかし1キロワット時12円でも採算が十分ペイする中国企業との体力格差は決定的だ。
 「今や日本の半導体やテレビが韓国企業と太刀打ちできなくなったように、太陽光発電も屈辱的な運命をたどりかねません。政府がそんな事態を知らないわけがなく、国民に負担を押し付けて普及を後押ししようとしている。結果、中国企業の懐がタップリ潤い、日本企業が存亡の危機に直面するのだからこんな皮肉はありません」(前出・関係者)

 国民の神経を逆撫でするのは何もこれだけにとどまらない。原発惨事の元凶である東電首脳が臆面もなく“天下り”することだ。
 6月総会を機に退任する勝俣恒久会長は、兼任する日本原子力発電の社外取締役として留任する。引責辞任した清水正孝前社長も、石油元売り大手であるAOC傘下の富士石油の社外取締役に就任予定。両社とも東電と関係が深く、国民が激怒しないわけがない。裏を返せば再生可能エネルギーの買い取りといい国有化する東電への対応といい、政府はまるで「相応の努力をした」とのアリバイ工作しか念頭にないかのようだ。
 腹に一物を秘めた中国企業と、東電の不敵な高笑いだけが聞こえてくるようではないか。