■ 決勝トーナメントの1回戦

メキシコで開催されているU-17のW杯はグループリーグが終了し、決勝トーナメントに入ってきた。ジャマイカ、フランス、アルゼンチンと強豪チームの揃ったグループリーグを2勝1分けの首位で通過した吉武監督率いるU-17日本代表は決勝トーナメントの1回戦でニュージーランドと対戦。

ニュージーランドは、ウズベキスタン、アメリカ、チェコと同じグループに入ったが、初戦でウズベキスタンに4対1で勝利。1勝1敗1分けでグループリーグを突破した。

日本は「4-4-2」。GK中村。DF川口、岩波、植田、室屋。MF喜田、石毛、望月、松本。FW秋野、早川。アルゼンチン戦で先制ゴールを決めたFW高木、アジア予選で5ゴールを決めたFW南野らはベンチスタートとなった。

■ 日本が圧勝

試合の序盤はニュージーランドも、日本のプレスをかわしてボールを回すシーンを作るが、時間が経つにつれて、自力で優る日本が優勢になっていく。

先制ゴールは前半20分。右サイドでMF石毛が相手ボールを奪うと、ドリブルで相手をかわして右足でクロス。右足で巻いたボールが微妙なエリアに飛んでいくと、GKが防ぐことができずにそのままゴールイン。日本が先制する。

さらに、その2分後にも、MF望月のパスからFW早川が左サイドの裏に飛び出して中央にグラウンダーのクロスを入れると、フリーで飛び込んできたMF石毛が合わせて2点目を挙げる。清水ユースのMF石毛はこの試合で2ゴールの活躍。大会通算では3ゴールとなった。

意気消沈のニュージーランドに対して、日本は前半32分にもMF石毛のドリブルシュートから、FW早川が決めて3点目を挙げると、前半42分にもMF望月のパスがオウンゴールを誘って4点目。前半で4対0とリードを奪って、試合を決めてしまう。

ニュージーランドは後半開始から、日系のFWケン・ヤマモトを投入するが、大きく流れを変えることはできず。攻勢の手を緩めない日本は、後半11分にも、DF室屋の突破から途中出場のFW南野が決めて5点目を挙げる。C大阪U-18のFW南野はようやく今大会の初ゴールとなった。日本は、後半35分にもFW秋野のスルーパスからFW早川が決めて6点目を奪う。新潟ユースのFW早川は2ゴール1アシストの活躍。

結局、日本が6対0でニュージーランドに圧勝してベスト8進出が決定。日本時間の月曜日の朝に行われる準々決勝でブラジルと対戦することになった。

■ 6対0で圧勝

ジャマイカ戦、フランス戦、アルゼンチン戦と、右肩上がりに調子を上げてきていた日本が、ニュージーランドに圧勝して、ベスト8に勝ち進んだ。U-17日本代表がベスト8に入ったのは、日本で行われた1993年以来で18年ぶりであるが、このときは、グループリーグを突破すればベスト8になるレギュレーションだったので、この大会の決勝トーナメントで勝利したのは、史上初。歴史的な偉業となった。

立ち上がりこそ、ニュージーランドもパスが回っていたが、結局のところ、シュート数は、日本が26本で、ニュージーランドは4本のみ。ボール支配率も日本が60%と圧倒。両チームには大きな差が見られたので、負けそうな要素は見当たらなかった。アジアの大会では珍しくはないが、世界大会で日本代表がこういうスコアで勝ったのは記憶にないくらいで、ニュージーランドのイレブンがトラウマになっても不思議ではない試合となった。

■ 選手が代わっても変わらない質

選手が入れ替わっても、クオリティがほとんど落ちないのがこのチームの強みで、アルゼンチンで先制ゴールを決めたMF高木大はベンチスタートで、FW南野、FW鈴木武蔵、MF深井らもスタメンから外れたが、大きな影響を感じさせなかった。

技術的には、「トラップ」のうまい選手が多いことが目につく。5点目のFW南野のゴールをアシストしたDF室屋のトラップ、6点目のゴールを決めたFW早川のトラップが巧みで、正確なトラップがゴールに結びついたが、ゴールシーン以外でも、きちんとしたトラップが出来るので、相手にプレーを読まれにくくなるし、次の選択肢も広がってくる。

■ 新潟ユースの二人が活躍

この日は、途中出場したFW南野もゴールを決めるなど、攻撃陣は揃って力を発揮したが、中でも、新潟ユースのFW早川が2ゴール1アシストと活躍し、大勝の立役者となった。FW早川もユーティリティーな選手で、左サイドバックやサイドハーフなど、いろいろなポジションを任されているが、どのポジションでもレベルの高いプレーができている。

FW早川と同じ新潟ユース所属のDF川口も、再三に渡って右サイドを突破してチャンスに絡んだが、地方のクラブからも、世代別代表の中心選手となる選手が出てきたことも、Jリーグがうまく全国に広がってきていることを感じさせるもので、縦に勝負できるDF川口は、攻撃でいいアクセントになっている。

■ アンカーに入ったMF喜田拓也

6対0というスコアだったので、どの選手のパフォーマンスも良かったが、特にアンカーで起用された横浜FマリノスユースのMF喜田のプレーが光っていた。

U-17日本代表は「4-4-2」のシステムで、ボランチが一人という場合が多いので、アンカーのポジションが重要になる。これまでは、野洲高校のMF望月、コンサドーレ札幌U-18のMF深井が起用されていたが、この日は、MF喜田を抜擢。MF望月やMF深井でも問題はなかったので、リスクの伴う交代のようにも思えたが、MF喜田が期待以上のプレーを見せて、チームを支えた。

ニュージーランドがほとんど攻められなかったので、守備に回ることが少なかったのもMF喜田に大きな負担がかからなかった理由の1つであるが、後半の途中までは、ほとんどミスなくボールをつないで攻撃のリズムを作った。次はブラジル戦となるが、この試合で誰をアンカーに起用してくるのかも、楽しみである。

■ 次はブラジル戦

いい形で試合ができている日本は、準々決勝でブラジルと対戦することになった。ブラジルはグループリーグは2勝1分け。ラウンド16では、エクアドルに2対0で勝利して、ベスト8に進んできている。どの年代でも、ブラジルはブラジルなので、U-17日本代表にとっては、大一番となる。

ブラジルは、ここまでの4試合で9ゴール3失点とまずまずの数字を残しており、簡単な相手ではないが、U-17日本代表はフランスとドロー、アルゼンチンには3対1で勝利しており、ブラジルといえども、全く恐れる必要はない。もし、このブラジルを下すようだと、本気で世界制覇も見えてくるだけに、大きな壁を乗り越えてくれることを期待したいところである。


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