今は植毛の段階!フサフサは来年!

人間は夢見がちな生き物です。問題を魔法のように解決するすべを求め、効果は直ちに発揮されると思い込んでいます。火は一晩で森を焼き尽くしますが、水と風がその森を再び甦らせるには百年の時を擁するのです。百年の中の一年目、二年目という時期を乗り越えて、百年目の豊かな森を目指していこうではありませんか。

先日、マンチェスターUのルーニーさんが植毛をしたというニュースがありました。「みんな、植毛をしたぜ」と明るくツイッターで報告したルーニーさんに、僕らはフサフサの未来を予感しました。しかし、数日後に公開された植毛後の写真に「変わってないやん…」「ハゲのままやん…」「もっと植えろや…」と失望しました。しかし、それは中世の音楽家のようなフサフサの未来予想図を思い描いていた勇み足のせい。術前・術後の写真を見比べれば、確かに3割くらい毛が増えていることがわかるはず。

日本代表とて同じこと。「3-4-3」という新システムは日本を強くする魔法ではありません。これまで主に採用してきた「4-2-3-1」をベースにしつつ、より攻撃に比重を掛けたオプションを身につけておくというだけのこと。始めから上手くいくわけもありません。ルーニーの頭皮が真っ赤にただれ、植毛手術による血が滲むがごとく、新システムが馴染むまでには痛みも苦しみも伴うもの。

まして、ピッチの上にいる人数が変わったわけではないのです。両サイドハーフには、守備面でも攻撃面でも大きな負担が掛かります。3トップの両ウィングとサイドハーフが高い位置で絡み、多彩な攻撃を組み立ててこその3-4-3。長友・内田とも「攻撃的なSB」とはいえ、普段の仕事と微妙に違う役割に慣れるには時間が必要。すべてのポジションでそうした戸惑いが起きているのです。現状は「眉毛の位置を少し上げて、おでこに移植した」という段階。その毛が伸びるまで「眉毛ないやん…」という違和感が出るのは当たり前です。

ルーニーさんが植毛に踏み切ったことからもわかるように、今はそうした手術を行なえる時期です。ワールドカップから逆算して、いつ植毛をすべきか…日本代表は適切な時期に適切な手当てをしています。ザック監督を見てください。監督はルーニーさん以上に寂しい頭頂部を、フワッとカールさせたサイドヘアーで巧みに覆い隠しています。この手腕があればきっと大丈夫。フサフサの未来を信じて、温かく見守っていきたいものですね。

ということで、新たな成長を始めた日本代表について、7日の「日本代表VSチェコ代表戦」からチェックしていきましょう。



◆フサフサはまだこれからだけど、頭を使ったプレーは随所に見られた!


海外組大集結でベストメンバーでのぞむ日本VSチェコ戦。埋めつくされたスタンド同様、いやそれ以上に選手たちもまた燃えていました。本田△は「圧勝したい」とギラつき、内田篤人は「いいサッカーをしたい」と誓い、長友佑都は「これがないと絶対ダメです」とパンダの抱き枕を抱き締める…それぞれの想い。中継するTBSも期待の若手・宇佐美貴史専用カメラを用意するなど、気合十分・準備万端です。

JAPANブルーに身を包んだ渡辺美里さんが君が代を独唱すると、スタジアムにこだまする大きな歌声。その一角には、日本代表という永遠の夢を追いかける男・キングカズもいました。10年ぶりにスタンドで日本代表戦を観戦するというカズは、カズ晩餐会の参加メンバー増強を目指し、「誰がカズ晩餐会にふさわしいかな」と目を光らせます。

そして始まった試合。日本は両サイドハーフが前戦よりも高い位置取りをする意識が見られ、5バック気味になる時間が減少。ボール回しがスムーズになりチャンスが増えるとともに、ボールを奪われる位置が高くなることで、一気にピンチに陥る機会も減りました。

ただ、いわゆるトップ下の位置に選手をあえておかない布陣ということでペルー戦では組み立てに苦労しましたが、チェコ戦でもその課題は変わらず。本田△が下がってボールを受ければ起点は作れるものの、高い位置に当ててサイドから切り崩すのが本来の狙いのはず。3トップはなるべく下がらず、ボランチの位置から長谷部が上がる形のほうが、中央は活かしやすいかもしれません。

↓前半12分には長谷部が惜しいシュートを放つ場面も!


ザック:「チッ コレガ ハイレバナァ…」
ザック:「マァ ハセベ ダシナァ…」
ザック:「イライラスルナ… オチツケ…ザック…」

その後も前半37分に遠藤の惜しい直接FK、前半42分には遠藤から裏に抜け出した李へのスルーパスなど、ゴールに迫る攻撃も見られ、まずまずの手応えで前半終了。前半はTBSが用意した「宇佐美カメラ」が活用されるチャンスはありませんでしたが、後半はベンチのようすも長回しされるよう期待したいところ。

そして始まった後半。開始早々にこの試合最大のチャンスが訪れます。後半7分、長友の突破から得た左サイドのCKから、ショートコーナーでファーサイドの李へ送ると、李はこのボールを左足でシュート。これが結果的に逆サイドへの折り返しとなると、世界最高峰のGKチェフさんも完全に振られてしまい、チェコの堅守を崩す絶好機が到来!

↓しかしここはDFヨシダが頭脳的なクリアで、チェコのゴールを死守!



ヨシダ:「ふぅー、ビックリした」
ヨシダ:「決まると思ったろ?思ったろ?な?」
ヨシダ:「頭を使えばゴールは死守できるんです!」

後半19分には遠藤に替えて家長、伊野波に替えて槙野を投入した日本代表。家長と本田△の共存という長年の課題へ挑戦など、少ない機会を賢く活用するザック采配。そんな中、「そうか頭を使ったプレーだな」と挑戦する選手も。後半24分、GK川島のキックが高い位置で相手に渡ったピンチの際、長友は頭を使った守備を見せ…

↓さすが長友!頭を使った強固なDF!


ザック:「ナニ シタンヤ…」
ザック:「モロ ズツキ ヤン…」
ザック:「コレデ ケガシタラ ワシ インテルニ アヤマラナ アカンノカナ…」


後半途中から出場した槙野さんも「頭」の重要さを知るひとり。対戦相手のチェコは、2007年のU-20ワールドカップで敗れた因縁の相手ということで、リベンジに燃える槙野さん。この試合に出場しているフェニンのこともよく覚えており、フェニンもまた赤い髪で出場していた当時の槙野さんをよく覚えているとのこと。

現在はともにブンデスリーガで戦うふたりなのに、「赤い髪」までさかのぼらないと記憶が甦らないという現実。「お前、あの赤い髪のヤツかー!」「最近はどうしてるんだ?」「え?ドイツいたの…?マジで…?」という会話を想像するにつけ、頭の重要性を改めて感じずにはいられません。

たとえばチェコ代表のGKチェフさんも、この試合で初めて見た人にとっては、世界最高峰のGKというよりヘッドギアしてた人という印象のはず。「上手い人がヘッドギアしてた」ではなく「ヘッドギアしてた人上手かった」という形で記憶に残るに違いないのです。やはり、頭の印象は重要ですね。

↓そのヘッドギアの人は、後半32分のスーパーセーブで日本中に鮮烈な印象を残した!


相手のGKがチェフじゃなければ勝ってたな!

フィードの距離・正確さなども含め、随所に輝きを見せるのはさすが!


これだけのスーパーセーブを見せられては、得点を奪えないことも致し方なし。日本代表も気持ちを切り替え、関口を投入するなど目先の勝利よりもテストに集中。最後は、試合中ずっと「FKを広告板に当てる練習」をしていた本田△が、この日4本目の直接FKを枠外に飛ばしてタイムアップ。「もうアイツに蹴らすな」「どうせ入らん」「長友が蹴っちゃえ」というFK関連のデータを得るとともに、「宇佐美カメラいらんやん…」と中継サイドも貴重なデータを得られ、大いに収穫のあるテストマッチとなりました。

ワールドカップ予選ではやり慣れた4-2-3-1がベースになるかもしれませんが、今回練習した3-4-3も習熟し、より戦いの幅を広げていきたいところ。ルーニーさんがフサフサになる頃をメドに、日本代表も大いに成長を遂げていたいものですね…。

お疲れさま日本代表!海外組はゆっくり休んで疲れを取ってください!

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