前回は日本におけるスポーツ省創設がいかに難しいかについて話したが、今回ももう少し日本のスポーツ文化について考えてみたい。
日本のスポーツは、基本的に文部科学省の管轄下にある。スポーツは勉強と一緒に学校でするもの、というのがもともとだ。

その文科省の中に日本体育協会(日体協)があり、日体協の本部ビルである岸記念体育館には、日本オリンピック委員会(JOC)を筆頭に、バスケットボールやバドミントン、スキー、水泳、卓球……とありとあらゆる協会が入居している。言ってみればアマチュアスポーツの巣窟だ。

各種団体の協会は、例えば高校総体(インターハイ)や県大会など、あくまで学校行事を運営するための組織だ。それが第一義であるから、その競技の強化、拡大、プロ化なんていう発想は持ちづらい。彼らにとってはその必要性がないからね。もともとが勝つため、拡大するための組織じゃないんだ。
それに、もし岸記念体育館から飛び出せば、使えるグラウンドがなくなってしまう。日本にあるのはあくまで「校庭」で、「グラウンド」じゃない。君には貸さないと言われたらそれまでだよ。

現に1980年代まで、日体協はプロ選手の存在を認めていなかった。だからサッカーやテニスはプロ化する中で日体協と衝突したし、それは今も変わらない。プロ化の理念を掲げて本家から家出する形で飛び出したバスケのbjリーグの現状を見ても、岸記念体育館の壁は大きくて分厚い。今、bjリーグの選手は日本代表に選ばれる権利を奪われているけど、アマチュア協会にとってのゲリラ集団=bjリーグは、世界とつながることを許されていないのが現状なんだ。

日本のスポーツ文化には、こうした根本的な問題がある。これを変えようと思ったら、それこそ国家レベルの策が必要になる。残念ながら今の政治でスポーツ発展に本気で取り組もうとすることはないだろう。特効薬はないに等しい。

でもここであきらめちゃいけない。大人になって、フットサルをしたり、テニスをしたり、草野球をしたり。そういう輪は確実に広がっている。世界の情報が瞬時に手に入る時代になり、昔ながらの体質では世界と戦えないことも、ファンは理解している。
そうやってひとり一人の意識をちょっとずつでも変えていくことが、とても時間のかかることではあるけど、国を動かす一番の近道かもしれないね。だからみんな、もっともっとスポーツしよう!(了)
 

セルジオ越後 (サッカー解説者) 

18歳でサンパウロの名門クラブ「コリンチャンス」とプロ契約。ブラジル代表候補にも選ばれる。1972年来日。藤和(とうわ)不動産サッカー部(現:湘南ベルマーレ)でゲームメーカーとして貢献。魔術師のようなテクニックと戦術眼で日本のサッカーファンを魅了。1978年より(財)日本サッカー協会公認「さわやかサッカー教室」(現在:アクエリアスサッカークリニック)認定指導員として全国各地青少年のサッカー指導。現在までに1000回以上の教室で延べ60万人以上の 人々にサッカーの魅力を伝えてきた。辛辣で辛口な内容のユニークな話しぶり にファンも多く、各地の講演活動も好評。現在は日光アイスバックス シニアディレクターとしても精力的に活動中

●主な活動 テレビ朝日:サッカー日本代表戦解説出演「やべっちF.C.」「Get Sports」  日本テレビ:「ズームイン!!SUPER」出演中 日刊スポーツ:「ちゃんとサッカーしなさい」連載中 週刊サッカーダイジェスト:「天国と地獄」毎週火曜日発売 連 載中 週刊プレイボーイ:「一蹴両断!」連載中 モバイルサイト FOOTBALL@NIPPON:「越後録」連載中