美少女ゲームを「読み物」にした伝説の美女ゲー。
2008年05月29日10時47分 / 提供:Techinsight Japan
現在美少女ゲームは「物語を読ませる」タイプの作品が主流だが、そのスタイルを作ったのが『雫』である。『雫』は1996年にPC98用作品としてLeafからリリースされ、口コミやパソコン通信で評判が広がりカルト的人気を博した。主人公は繰り返される日常を嫌い、爆弾で世界を焼き尽くす妄想に日々耽る。そんなある日、主人公のクラスで女子生徒が卑猥な言葉を叫び発狂した。主人公は教師である叔父から、その事件の調査を依頼される。主人公が踏み入れる世界の先にあるものとは……。
美少女ゲームは現在、「ゲーム」と銘打ってはいるが実際には「物語を読ませる」タイプの作品が主流を占める。その流れを作ったのが、今回紹介する『雫』である。それまでの美少女ゲームといえば、ゲームのおまけにHCGが表示されるものや脱衣麻雀、マップを歩き回ってフラグを立てキャラごとのイベントを見てEDに辿り着く『同級生』シリーズなどがあったが、いずれも物語性は薄いかほとんどないと言ってよかった。管野ひろゆきによる『DESIRE』『EVE burst error』『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』の実験的な三部作などもあったが、システム上膨大なクリックを必要とした。そこに登場したのが『雫』である。『雫』は1996年にPC98用作品としてLeafからリリースされた作品である。口コミやパソコン通信で評判が広がりカルト的人気を博し、それまでマイナーメーカーだったLeafが人気メーカーになっていく契機にもなった作品である。
主人公・長瀬 祐介(ながせ ゆうすけ)は内向的な高校生。繰り返されるつまらない日常と主体性のない人々を心の底から嫌悪し、日々授業中に爆弾で世界を燃やし尽くす妄想に耽っている。そんなある日の授業中、いつものように主人公が妄想に耽っていた時、クラスメートの太田 香奈子(おおた かなこ)が突然卑猥な言葉を叫び発狂した。校内ではいろいろと彼女に関する噂が流れるが、狂気に憧れていた主人公は狂ってしまった彼女に密かに親近感を抱く。太田香奈子の事件について、主人公は教師である叔父に、どうやら太田香奈子たちは深夜の学校に集まっていたらしいとの情報を教えられる。主人公は叔父にその調査を依頼されるのであった。そんな時、主人公は去年同じクラスだった時に憧れていた元クラスメイトの美少女・月島 瑠璃子(つきしま るりこ)と知り合う。彼女は主人公と同じクラスだった時とは様変わりしており、奇妙なことを口走るようになっていた。主人公は、太田香奈子のこと以上に彼女のことを知りたいと思う。そして、主人公は深夜の学校へと赴くことになるが、そこで主人公が見るものとは……。
ゲームデザインは、Leafがいうところの「ビジュアルノベル」というもの。これは、チュンソフトがスーパーファミコンの『弟切草』で確立した、画面一杯に文字を表示して読ませる「サウンドノベル」の美少女ゲーム版。あちらは画面に表示される画像はあくまでシルエットや背景のような扱いだったが、こちらはキャラクターの立ち絵を表示し、その上に文字をかぶせて表示するというスタイルになっている。文字が表示される際は少し画面に影がかかるため、背景が明るくて文字が読みづらいということはない。背景は実写の画像を取り込んでモノクロに加工したもの。フルカラーの背景でないのは当時容量の制限があったためらしいが、これがダークな『雫』の世界に合っていてとても良い。キャラクターデザイン・原画は「水無月 徹(みなづき とおる)」氏。シナリオライターの「高橋 龍也(たかはし たつや)」氏と組んでこの後『痕(きずあと)』、『ToHeart』と大ヒット作を生み出していく伝説のクリエイターコンビの片割れである。正直、この『雫』の人物画は非常にアクが強い。絵だけ見てプレイしようと思う人はいないだろうと断言できるほどに癖がある。しかし、プレイしていて慣れれば「このゲームにはこの絵しかない」と思えるようになるので、絵でひかずにぜひプレイしてほしい。CGはPC98時代の作品なので16色。この点は多少古臭さを感じてしまうかもしれない。音楽は、下川直哉氏、石川真也氏、現在Keyで活躍中の折戸伸治氏が担当している。「Leafは音楽が良い」とはいつも言われることだが、それはこの当時からそうであった。瑠璃子のテーマ、オープニング、バッドエンド、トゥルーエンドなど、どれも透き通るような旋律で素晴らしい。
シナリオは、ヒロインが3人いるため大きく3つに分岐する。ヒロインは、メインヒロインである月島瑠璃子、バレーボール部に所属しており、「怪しい人影を見た」と言っていたため話を聞くことになる新城 沙織(しんじょう さおり)、太田香奈子と中学の頃からの親友である藍原 瑞穂(あいはら みずほ)。暗い世界で展開される物語のため、内向的だった主人公が好きな女の子を守りきり、幸せになれるハッピーエンドは必ず感動できるだろう。「毒電波」といった単語も印象に残りよく取り上げられる本作だが、思春期の少年の成長物語として良くできたものであるといえる。かなり衝撃的なバッドエンドもいくつかあるが、それはぜひ自分の目で確かめてほしい。素晴らしいBGMと相まって、印象に残るシーンもたくさんあるだろう。特に、夕焼けの屋上で佇む瑠璃子のシーンはプレイした人の心に焼き付くのではないだろうか。
『雫』は、Leafからは2004年に、CGをリニューアルしキャラクターをフルボイス化したリニューアル版が発売されているが、筆者は16色の旧版をお勧めする(Vistaで動作確認済み)。あのキャラクターデザインや彩色こそが、ダークな『雫』の世界には合っていると思うからである。
本作は、現在主流となっている、「ストーリー重視」の美少女ゲームのスタイルを確立した作品である。もし現在「美少女ゲーマー」を自称する人でこの作品を未プレイな人や、このレビューを読んで少しでも興味を持ってくれた人にはぜひプレイしてほしい。全面に押し出されているテーマ「狂気」だけではない、心に残る一粒の「雫」のようなものがあると思うからだ。
(編集部 fuzisawa)
美少女ゲームは現在、「ゲーム」と銘打ってはいるが実際には「物語を読ませる」タイプの作品が主流を占める。その流れを作ったのが、今回紹介する『雫』である。それまでの美少女ゲームといえば、ゲームのおまけにHCGが表示されるものや脱衣麻雀、マップを歩き回ってフラグを立てキャラごとのイベントを見てEDに辿り着く『同級生』シリーズなどがあったが、いずれも物語性は薄いかほとんどないと言ってよかった。管野ひろゆきによる『DESIRE』『EVE burst error』『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』の実験的な三部作などもあったが、システム上膨大なクリックを必要とした。そこに登場したのが『雫』である。『雫』は1996年にPC98用作品としてLeafからリリースされた作品である。口コミやパソコン通信で評判が広がりカルト的人気を博し、それまでマイナーメーカーだったLeafが人気メーカーになっていく契機にもなった作品である。
主人公・長瀬 祐介(ながせ ゆうすけ)は内向的な高校生。繰り返されるつまらない日常と主体性のない人々を心の底から嫌悪し、日々授業中に爆弾で世界を燃やし尽くす妄想に耽っている。そんなある日の授業中、いつものように主人公が妄想に耽っていた時、クラスメートの太田 香奈子(おおた かなこ)が突然卑猥な言葉を叫び発狂した。校内ではいろいろと彼女に関する噂が流れるが、狂気に憧れていた主人公は狂ってしまった彼女に密かに親近感を抱く。太田香奈子の事件について、主人公は教師である叔父に、どうやら太田香奈子たちは深夜の学校に集まっていたらしいとの情報を教えられる。主人公は叔父にその調査を依頼されるのであった。そんな時、主人公は去年同じクラスだった時に憧れていた元クラスメイトの美少女・月島 瑠璃子(つきしま るりこ)と知り合う。彼女は主人公と同じクラスだった時とは様変わりしており、奇妙なことを口走るようになっていた。主人公は、太田香奈子のこと以上に彼女のことを知りたいと思う。そして、主人公は深夜の学校へと赴くことになるが、そこで主人公が見るものとは……。
ゲームデザインは、Leafがいうところの「ビジュアルノベル」というもの。これは、チュンソフトがスーパーファミコンの『弟切草』で確立した、画面一杯に文字を表示して読ませる「サウンドノベル」の美少女ゲーム版。あちらは画面に表示される画像はあくまでシルエットや背景のような扱いだったが、こちらはキャラクターの立ち絵を表示し、その上に文字をかぶせて表示するというスタイルになっている。文字が表示される際は少し画面に影がかかるため、背景が明るくて文字が読みづらいということはない。背景は実写の画像を取り込んでモノクロに加工したもの。フルカラーの背景でないのは当時容量の制限があったためらしいが、これがダークな『雫』の世界に合っていてとても良い。キャラクターデザイン・原画は「水無月 徹(みなづき とおる)」氏。シナリオライターの「高橋 龍也(たかはし たつや)」氏と組んでこの後『痕(きずあと)』、『ToHeart』と大ヒット作を生み出していく伝説のクリエイターコンビの片割れである。正直、この『雫』の人物画は非常にアクが強い。絵だけ見てプレイしようと思う人はいないだろうと断言できるほどに癖がある。しかし、プレイしていて慣れれば「このゲームにはこの絵しかない」と思えるようになるので、絵でひかずにぜひプレイしてほしい。CGはPC98時代の作品なので16色。この点は多少古臭さを感じてしまうかもしれない。音楽は、下川直哉氏、石川真也氏、現在Keyで活躍中の折戸伸治氏が担当している。「Leafは音楽が良い」とはいつも言われることだが、それはこの当時からそうであった。瑠璃子のテーマ、オープニング、バッドエンド、トゥルーエンドなど、どれも透き通るような旋律で素晴らしい。
シナリオは、ヒロインが3人いるため大きく3つに分岐する。ヒロインは、メインヒロインである月島瑠璃子、バレーボール部に所属しており、「怪しい人影を見た」と言っていたため話を聞くことになる新城 沙織(しんじょう さおり)、太田香奈子と中学の頃からの親友である藍原 瑞穂(あいはら みずほ)。暗い世界で展開される物語のため、内向的だった主人公が好きな女の子を守りきり、幸せになれるハッピーエンドは必ず感動できるだろう。「毒電波」といった単語も印象に残りよく取り上げられる本作だが、思春期の少年の成長物語として良くできたものであるといえる。かなり衝撃的なバッドエンドもいくつかあるが、それはぜひ自分の目で確かめてほしい。素晴らしいBGMと相まって、印象に残るシーンもたくさんあるだろう。特に、夕焼けの屋上で佇む瑠璃子のシーンはプレイした人の心に焼き付くのではないだろうか。
『雫』は、Leafからは2004年に、CGをリニューアルしキャラクターをフルボイス化したリニューアル版が発売されているが、筆者は16色の旧版をお勧めする(Vistaで動作確認済み)。あのキャラクターデザインや彩色こそが、ダークな『雫』の世界には合っていると思うからである。
本作は、現在主流となっている、「ストーリー重視」の美少女ゲームのスタイルを確立した作品である。もし現在「美少女ゲーマー」を自称する人でこの作品を未プレイな人や、このレビューを読んで少しでも興味を持ってくれた人にはぜひプレイしてほしい。全面に押し出されているテーマ「狂気」だけではない、心に残る一粒の「雫」のようなものがあると思うからだ。
(編集部 fuzisawa)
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