パイオニアが目指したのは、通信ドライブレコーダーを活用した「ビークルアシスト」で、クルマの事故軽減やコスト削減を実現させる企業に役立つサービスだった

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パイオニアのカーエレクトロニクス事業では、カーナビゲーションやドライブレコーダーなどの車載機器の開発・販売のほか、BtoB向けのカーソリューションを展開している

数ある事業の中でもクラウド型運行管理サービス「VehicleAssist(ビークルアシスト)」は、車載機器を活用し運行業務における効率化、管理、支援をもたらすものだ。

今回、安心・安全をテーマしたパイオニアが目指す、交通事故削減への取り組みに迫ってみた。


■運行管理ソリューションをワンストップで提供
パイオニアは、創業者である松本望氏が米国製スピーカーを聴き「いつしか、純国産スピーカーを作りたい」との想いから、1961年に創設された。
1937年、純国産ダイナミックスピーカー「A-8」を発売し、音響機器メーカーとして確固たる地位を築いた。さらに、1975年に発売した業界初のコンポーネントカーステレオが大ブレイクし、技術でも品質でも市販市場でゆるぎない地位を確立した。現在では、ドライブレコーダーやカーナビゲーションなどを扱う「カーエレクトロニクス事業」を柱にビジネスを展開している。



パイオニア株式会社 市販事業部 事業企画部 カーソリューション部 企画部 マーケティング課 山添征史氏


今回、クラウド型運行管理サービス「ビークルアシスト」について取材させていただいたのは、
パイオニア株式会社
市販事業部 事業企画部 カーソリューション部 企画部 マーケティング課
山添征史氏、41歳。

山添征史氏は、入社して16年、15年間は営業一筋だった。
11年間はカーナビゲーションやオーディオ・スピーカーなど個人向けの商品を扱う部署に、その後5年間は法人向けの業務用商品を扱う部署に在籍。
2018年10月より営業経験を活かすべく、現在の部署に配属された。

山添征史氏
「営業をずっとやってきましたし、良い意味でアフターマーケットのことも知っているので、ハイブリッドじゃないですけど、現場の経験を活かしてサポートするような仕事をしています。」

パイオニアは長年、カーナビ・カーAVブランド「カロッツェリア」というコンシューマー向けの市販ビジネスがメインでしたが、今後はクリエーションビジネスも拡大していく方向という。

山添征史氏
「現在はスマートフォンの普及により、単純に道案内するものはたくさん出てきていますが、カーナビゲーションのシステムは非常に最先端で高度な技術です。私たちしか持っていない技術やノウハウはまだまだあるので、それを業務用というところに応用したのが、私たちのサービス『ビークルアシスト』です。」

パイオニアが提供する「ビークルアシスト」は、クラウド型運行管理サービス。
通信ドライブレコーダーから送信される精度の高い車両位置情報や走行データをもとに社会的課題を解決するサポートを行う。
・事故削減
・業務の効率化
・労務管理の徹底
サーバー、通信、保守まで、法人向けの運行管理ソリューションをワンストップで提供する。

「ビークルアシスト」は対応端末が一つに限定されないのも大きな特長だ。
ドライブレコーダー、カーナビゲーション、データロガーユニットなど、企業や部署ごとの用途に合わせて選ぶことができる。
業務用車両向けのトータルソリューションを提供できることは、メーカーであるパイオニアだからこその強みだ。


「ビークルアシスト」の仕組み(公式ホームページより)



■「事故削減」から保険料。燃料コストの削減にも貢献
「ビークルアシスト」の特長は、事故削減に大きな力を発揮する点だ。

山添征史氏
「危険運転による事故やトラブルなどが注目される昨今、社用車でも「事故削減」という普遍的な課題の解決策として、ドライブレコーダーは今後ますます需要の拡大が予測されるアイテムとなっています。」

ドライブレコーダーを導入した企業では、想定していたよりも事故削減の成果が上がらないという声も多いそうだ。ドライブレコーダーの導入は、安全運転の意識を向上させる効果があるが、効果が継続するとは限らないのだ。

山添征史氏
「事故を削減するには、継続的に指導が行える『運用が楽』で『実用的』なものである必要があります。」

「ビークルアシスト」のドライブレコーダーが他社製品と大きく異なるのが、「通信機能」を備えている点だという。

一般的なドライブレコーダーでは、SDカードなどに運転中の映像を記録する。
このため、危険運転や事故の確認、検証をするまでに時間がかかっている。
たとえば、下記のような作業をする時間が必要となる。
・車両が戻ってきてからSDカード内の録画を回収
・事故や危険運転の情報を回収したデータから特定し、確認する

一方「ビークルアシスト」は、
・危険運転や事故の動画
・危険運転や訪問地・走行時間や距離などのデータ
これらを、通信を使ってクラウド上に保存している。

このため管理者は、クラウド上に保存されている映像やデータを、車両の戻りを待たず、いつでも確認できる。

また、危険運転や事故が発生した際は、該当する事例の12秒前から8秒後までの20秒の動画をリアルタイムでメールに通知するため、トラブル発生と、ほぼ同時に状況を確認できるのだ。

山添征史氏
「前5秒、後5秒の合計10秒を記録するドライブレコーダーですと、たとえばドライバーが落下物などに気づいてかわしたとき、前5秒の記録だとすでに車の挙動が乱れてしまっている状態なので、何があったのかがわかりません。

『どんな運転をしたら、こんなふうになっちゃうの?』
ということになります。

そこで弊社は前12秒まで記録時間にゆとりを持たせています。」

こうした通信とクラウドを利用することで、管理者は事故防止、予防への対策も行いやすくなるという。

山添征史氏
「管理者は基本的に、
・ドライバーに危険運転の警告が出ないように指導する
・メールが来たら、その日のうちにドライバーへ声掛けする
この2つのルールを毎日、まわしていただくだけです。」


さらにドライバーに対しては、
「急減速を検知しました。安全運転を心掛けましょう。」
こうした、運転の場で具体的に指導がされるため、事故予防にも効果を発揮する。

山添征史氏
「実際にあった話ですが、Bさんが危ない運転をしていて安全運転の指導をしたいときに、
『この運転、どう思う? 意見を聞かせて。』
と、他人の映像であるかのように見せます。

第三者の目で、その映像を評価させることで、
『この運転(自分の運転)は危ない』
と、気づきを与えるわけです。」

A社では、こうした安全指導を行うことで事故が減り、導入後1年で約20%の保険料を削減することに繋がったそう。

またB社の場合では、年間で1台当たり約1万6,800円の燃料コストが低減できたという。
B社では約90台の車両が稼働しており、年間で約150万円分の燃料コストの削減が実現したそう。


安全運転による燃料コスト削減といった副次的な効果も期待できる



■「業務の効率化」に貢献、最適な巡回コースの作成はベテランに匹敵
ビークルアシストは業務用ナビとの併用で、運行の効率化をサポートする。

山添征史氏
「新しいドライバーさんに『こういう風に取引先をまわってきてね。』と言っても、どうまわれば効率的なのかが、まったくわかりません。そこで、そこを経験していた人と、新しいドライバーさんと2名乗車で一緒にまわるわけですが、そうすると、ドライバー1名分の稼働率が下がります。前日の晩や、その日の朝に運行ルートをナビに入れておけば、新しいドライバーさん一人でも効率よく取引先をまわることができます。」

ビークルアシストはあらかじめ取引先を指定するだけで、ワンタッチで即時に最適な巡回コースを作成してくれる。配車係はパソコン画面上の「最適化する」ボタンを押すだけでよい。


誰でも短時間で効率的なコース作成が可能(公式ホームページより)


ビークルアシストはベテランの配車係にしかできない運行管理も可能だ。
巡回ルートの中に時間の指定が入っている場合でも、即時に最適な巡回コースを作成してくれる。

山添征史氏
「時間の指定が入ると、もうパズルです。近い順ではなく、少し離れた場所へ先に行かなければならないときに、どう巡回コースを組んだらよいのかが、お手上げになってしまいます。
ここは本当にベテランの人しかできない業務とされていますが、弊社のシステムを導入することによって、誰でもボタンを押すだけで、できてしまいます。」


■「労務管理の徹底」は、無駄も残業もなくす
「ビークルアシスト」は、労務管理においても、力を発揮するという。

山添征史氏
「会社としては、ひとつでも無駄な部分は削って、生産性を上げたいと考えています。
働き方改革でよく言われていますが、1台あたりの稼働率を上げるというものです。
弊社のビークルアシストを使うと、非常に効果的です。」

ビークルアシストでは、運行係はパソコンの画面だけで、リアルタイムに車両位置を把握することができる。
停車中、走行中がアイコン表示されるので、ひと目でわかるからだ。
さらに日報は、自動的に作成され、訪問地への到着時刻、出発時刻なども、手書きする必要もない。

山添征史氏
「会社としては、日報は紙に残すのではなく、データとして残したいと考えています。
ドライバーが戻ってきてから、日報データをパソコンに打ち込むのは、二度手間となります。

結局、それが残業の増加に繋がって、働き方改革を目指したはずなのに、本末転倒な結果になります。

そういったものも全て、ビークルアシストがドライバーはどこに立ち寄ったかというのも自動的に記録するので、入力作業と時間削減になります。」


■他社にはない、パイオニアの強みとは
パイオニアの通信ドライブレコーダーは、あらゆる状況においてもより正確な情報を記録するために、実用性を重視した機能、性能を追求している。

山添征史氏
「一般的なドライブレコーダーは、
・日時情報
・位置情報
・スピード
この3つをGPSの情報をもとに算出しています。
スマートフォンのナビもGPSだけを利用していますが、GPSのみに頼ると、
たとえば、トンネルに入ったときに、そこで最終更新が止まってしまいます。

一般的なドライブレコーダーだと、時間だけでなく、スピードも何キロで走ったのかが証明できなくなるんです。

我々のドライブレコーダーは車両から直接、スピード情報を取得できるため、GPSが途絶える、そうした場所(トンネルなど)でも、しっかりと情報を記録し、証明ができるのです。」

自動車が関わる事故で、トンネルでの事故は多い。
今回、高速道路のトンネル内で自動車が転倒した事故動画を見せていただいた。
転倒後、ハザードランプを点灯していたにもかかわらず、あとから走っていた車が突っ込んできて衝突するという悲惨な事故だ。

山添征史氏
「突っ込んできたドライバーさんは、
『目の前で自動車がこけたので、避けられませんでした。』
という証言をされたそうです。

でも、これは結局のところ、きちんとした情報が残っていたんです。
横転したあと、ハザードランプがチカチカと点灯しているのが12秒間も記録されていることから、
『絶対に目の前で転倒したのではなく、これは、あなたの過失です。』
ということを、ちゃんと証明できました。」

ビークルアシストを取り付けいたおかげで、事故を起こしたドライバーの過失責任でないことを証明できたそう。




山添征史氏は、商品を売る気持ちから、顧客の悩みを解決したいという気持ちにだんだんと変わっていったという。営業というよりも、カウンセリングに近い感覚なのだそう。

山添征史氏
「ビークルアシストは企業の悩みを解決できるソリューションです。
現在の私は、現場の最前線とは違って後方支援になっていますが、気持ちは現場にいます。少しでもお客様のお手伝いができればよいと考えています。」



ビークルアシスト パッケージ|業務用カーソリューション|パイオニア株式会社


執筆:ITライフハック 関口哲司
撮影:2106bpm