現代の魔法? フォルダブルスマホを実現する厚さわずか0.01mmのフィルムディスプレイが開く次世代のガジェットとは

写真拡大 (全7枚)

●十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない
4月10日から12日まで、東京ビッグサイトにて開催されたIT展示会「第28回 Japan IT week 春【前期】」に、中国のディスプレイメーカー「Royole」が出展。

折りたためるスマートフォン(通称:フォルダブルスマホ)「FlexPai」の実機を展示・公開しました。

2019年は「フォルダブルスマホ元年」とも言われ、サムスン電子の「Galaxy Fold」やファーウェイの「HUAWEI Mate X」など、複数のフォルダブルスマホが発表されています。
FlexPaiはすでに中国で販売が開始されており、価格は日本円で約15万円です(日本での販売は未定)。

一般的なスマートフォンの相場からはかなり高級な端末ですが、ライバルとなるGalaxy Foldが約22万円、HUAWEI Mate Xが約29万円であるため、同社広報担当者は価格メリットの高さをアピールしていました。


たたんだ状態ではスマートフォンのように使える



開けば7.8インチのタブレットに





これまでに日本でも、2画面を搭載した折りたたみスマートフォンはいくつか販売されてきました。
しかしフォルダブルスマホの最大の特徴は「ディスプレイ自体が曲がる」点にあります。
これを可能にしたのが非常に薄いフィルム状のディスプレイです。

Royoleの製造している、有機EL方式のフィルムディスプレイの厚さは、わずか0.01mm。ひらひらと風に舞うほど薄く、紙よりも薄いフィルムに動画が映し出されている様子は、まさに「魔法」です。


ブースで展示されていたテックデモ。セロファンのような薄さのディスプレイに動画が映し出される様子はSF映画のようだ


現在のフォルダブルスマホは、機能や性能を見ると、スマートフォンやタブレットと比較して特別な驚きはあまりありません。

むしろ、
・折りたたんだ際のヒンジ部の厚み
・本体の重さ
・高過ぎる価格
・ディスプレイ素材の耐衝撃性や耐摩耗性の不安
これらのデメリットとも言える不安要素がネックとなり、一般消費者の購入にどこまでつなげられるのか、という点が大きな課題です。

しかし「曲がるディスプレイ」が内包する革新性の本質は、フォルダブルスマホを作れることではありません。

ディスプレイが「曲がる」ことから新たに生み出される、新しい用途こそが本質です。


●極薄のフィルムディスプレイが持つ可能性
Royoleのブースでは、このディスプレイ技術を応用した製品として、円筒スピーカーやディスプレイ内蔵シャツなどを展示していました。

0.01mmという薄さであるため、衣類やバッグといった柔らかな素材の製品と組み合わせることが容易にできます。
・好みに応じてデザインが変化するトートバッグ
・歩くデジタルサイネージ(電子広告)としてのビジネス活用
こういった、奇抜さや先進性をメリットとした活用方法も十分考えられます。


参考展示されていたディスプレイ内蔵シャツと帽子。リオデジャネイロ・オリンピックで広告用に試験運用されていた



ディスプレイ内蔵バッグ。こちらは衣服よりカジュアルな用途が想定される



極薄でもタッチディスプレイであることから、巻取り式のキーボードなども作れる



携帯電話やスマートフォンとしての用途でも、敢えてフォルダブル(折りたたむ)というスタイルにこだわる必要はないかもしれません。
例えば、
持ち歩く際は本体を丸く曲げてスマートウォッチとして機能する「ブレスレット型(バングル型)」のスマートフォンなども十分に実用製品として想定できます。

まさに「魔法の紙」とも呼べるフィルムディスプレイが持つ可能性は未知数です。

展示ブースのスタッフは、
「どんな場所にも貼り付けられます。全てのものがディスプレイになります」
と語っていましたが、その言葉からは強い確信のようなものを感じました。


執筆 秋吉 健