高性能を極めた次にやるべきことは?Galaxy S9シリーズで変えようとしているものは何?

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2018年夏モデルのスマートフォンの発売が一段落し、ITライターは秋冬モデルの発表を待つ時期だが、店頭ではまだまだ夏モデルが熱い時期である。

特にNTTドコモおよびauは、ハイエンドスマートフォンである
・サムスン電子ジャパンの「Galaxy S9」、「Galaxy S9+」
・ソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2」、「Xperia XZ2 Premium」
・シャープの「AQUOS R2」
この3シリーズをフルラインナップ。
ソフトバンクもXperia XZ2とAQUOS R2を夏モデルとしてラインナップする。




これらハイエンドモデルは、トレンドである画面のアスペクト比16:9を超える縦長表示に対応し、カメラも独自機能を盛り込んだハイスペックなスマートフォンである。

ソフトバンクのみGalaxy S9およびGalaxy S9+の取り扱いはないのだが、このGalaxy S9の2機種はハイエンドスマートフォンとして人気が高い。

Galaxy S9とGalaxy S9+は、
チップセットにはハイエンド向けのQualcomm「Snapdragon 845(SDM845)」を搭載、
ストレージは64GB、外部ストレージとして最大400GBのmicroSDXCに対応する。




それぞれの違いは、Galaxy S9の画面サイズは約5.8インチ、RAMは4GB、少し大きいGalaxy S9+は画面サイズが約6.2インチ、RAMが6GB。画面の解像度はどちらもQHD+(1440×2960ドット)である。

Galaxy S9、Galaxy S9+は、基本スペックとしては共通する部分も多い。
しかしGalaxy S9+は、RAM容量が大きく、デュアルカメラを搭載し、フラグシップスマートフォンとしての完成度を目指したモデルである。

このGalaxy S9シリーズでは、他社にはない先進的な「デュアルアパーチャ」機能を搭載しているのが大きな特徴だ。

スマートフォンのカメラは「明るいF○○レンズを搭載」をアピールポイントとしていることが多い。

このF○○という数字はレンズが光を通す明るさを表すもの。
数字が小さければ明るいレンズで、夜間やスポーツ撮影に強いと言うことになる。

例えば、レンズ交換式のカメラの場合、
一般的なズームレンズは、F3.5からF5.6だ。
高級なズームレンズとなれば、F2.8の明るいレンズもある。
しかし、F値の小さい=明るいレンズは大きくて重くなる、
さらに価格も、とびきり高価になる。

一方、ズーム操作ができない単焦点レンズにも、F1.4やF1.8など明るいレンズがある。
こちらの明るいレンズも価格は高価ではある。

しかし、こうした明るいレンズは、プロカメラマンやハイアマチュアカメラマンのニーズが高いのだ。

このF値が小さいレンズ=明るいレンズは、暗所撮影時に“暗いレンズ”より多くの光を取り込むことができることがメリットとして語られている。
レンズ交換式カメラにおいてこのF値は明るさだけではなく、ピントの合う範囲を決める“被写界深度“を活用した表現にも用いられる重要なものだ。

F値を小さくするとピントの合う範囲が狭くなるため大きなボケ効果を得られる。
一方、F値を大きくすると広い範囲にピントが合う写真が撮影できる。
このF値を変える仕組みは、機械的な”絞り”と呼ばれる機構で光量を調節し、様々な写真表現を行うのである。

ところがスマートフォンの場合は、イメージセンサーサイズが小さいためレンズF値によってボケ効果の量が大きく変わることが少ないとから、このF値に関しては暗所に強いと言う謳い文句が多くいというわけである。

Galaxy S9のレンズF値は単焦点レンズなみに明るい1.5であるが、機械式に絞りを2,4にすることを可能としている。

これは一眼カメラのようなボケ効果を調整すると言う使い方ではない。
明るすぎる晴天下では、撮影時にシャッタースピードの上限を超えてしまう。
つまり写真が白く飛んでディテール表現などが失われてしまうのだ。
こうした現象を防ぐために、F値を大きくして意図的に“暗く”して適切な明るさにすることを目的としている。

Galaxy S9シリーズが目指したのは、F値が変わる絞り機構を組み込むことで、
・明るい場所でも
・暗い場所でも
高画質で撮影できるスマートフォンである。

このF値は自動で切り替わるほかにユーザーが任意に設定することも可能となっている。
一般的にレンズF値は、
一番小さい値(=開放)よりも、絞った(F値を大きくする)方がレンズの周辺を含めて画質が向上する傾向がある。
屋外での風景写真を撮る場合、F値を大きくして撮影するメリットもあるのだ。

さらにGalaxy S9+は、デュアルアパーチャを搭載したメインカメラのほかに、光学2倍ズームとして機能する望遠レンズも搭載している。
こちらのF値は2.4固定であるものの、少し離れた被写体を画質劣化することなく大きく写すことができる。さらに最大10倍のデジタルズームで簡易的な超望遠レンズとしても利用できる。

こうした進化したカメラ機能は、どちらかというとマニアックな要素となる。

つまり、一般の幅広いユーザー層にアピールするには、こうしたマニアックな機能ではなく、一般層にも理解できる、楽しめる、便利さを提案する必要がある。




そこでGalaxy S9シリーズは、AR機能で自分の顔がSNSで使える「AR絵文字」をはじめとする新機能を搭載。
AR絵文字は、自分の顔をキャラクター化し、バリエーション豊富なスタンプとして使えるほか、トークに合わせて表情豊かな動画としても記録することもできるため、新しいコミュニケーションツールとしてプッシュしている機能だ。

そのほか、秒間960コマの「スーパースロー」撮影は、
0.2秒という一瞬を記録できる。
このスーパースローは1つの動画のなかで20回まで撮影が可能なのだが、一瞬を狙うのが以外と難しい。




そこで、誰でもこの機能が簡単に楽しめるよう、撮影中に被写体の動きを検知し自動的にスーパースローモーション撮影できるようになっている。


さて、Galaxy S9+はIPX5/8の防水、IP6Xの防塵性能を持っている。
このため、川遊びなどちょっとした水遊びの場での仕様だけではなく、撮影にも応用できるのだ。
スーパースローモーションは、こうした水辺で、人の目では見ることができない一瞬の表情や水遊びの水しぶきを記録する使い方にはうってつけの機能だ。
こうした楽しみが広がるのはいいことである。

こうして撮影したスーパースローモーション動画は、特定のシーンだけを容量が少ないGIFアニメとしても保存が可能なので、撮影してすぐにSNSに投稿して“いいね”を貰う、といった使いかもできる。

スーパースローモーション撮影は面白そうだけど、それをどう使うのか、どんなときに使うのか、それを考えるのは面倒で、わざわざモードを切り替えてまで撮影することはないのではないだろか。使い方はわかってもその後が見えてこないからである。


Galaxyのプロモーションでは、“いいね”が貰える動画が撮れるということを目的として提案し、機能を使いたくなるようにしているが、そこがまだまだ伝わっていないように思える。TV CMだけではなく、各地でGalaxyシリーズが体験できる「Galaxy Studio」を各地で開催し、プロモーション活動も行っているようだ。


8月に行われた「S2O JAPAN SONGKRAN MUSIC FESTIVAL」では、防水とスーパースローモーション撮影をアピール


冒頭で大手キャリアはハイエンドスマートフォンを看板に掲げ、顧客拡大に力を入れている。特に大手キャリアが販売するスマートフォンは割引施策がある。
このことは、ハイエンドモデルを購入しやすいということでもある。

こうした買いやすさから高性能モデルを歓迎する反面、“あまり使わない機能満載”の多機能化には、低評価を下すケースも多くなっている。

しかしながらメーカーとしては、新しい顧客を開拓するため多機能化から脱却することはできないのが現状だ。

Galaxy Sシリーズは、
高性能とエッジスクリーンをベースとした独自デザインを、前モデルの「Galaxy S8」シリーズ完成させたと言っても良いだろう。Galaxy S9シリーズはさらに機能を向上させた上で、SNSベースとした機能に置き換えて幅広い消費者に歩み寄ろうとしていることはうかがえる。果たして、この取り組みが消費者に刺さるのか、それとも蛇足となるのか。

現在のスマートフォンは日常生活に必須なものとなった。
このユーザーのすそ野が広がったことで、高機能で特殊な機能をもつ尖ったスマートフォンよりも、誰でも使いこなせるスマートフォンを求める割合が増えている。

こうした消費者のニーズに目を向けたGalaxy Sシリーズは出てくるのか、それともより尖っていくのか?こうした動向にも注目したい。


執筆  mi2_303