VRは一人ぼっちじゃない! みんなで同時にVR体験できる「映画館でVR!」は新しいエンタメになり得るのか?

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「映画館でVR」!は、7月2日から7月27日までの期間限定で東京・新宿バトル9のアニメーション3本立てにて上映される。
上映内容は、
「夏をやりなおす」
「おそ松さんVR」
「evangelion:Another Impact」
鑑賞料金は1,500円。

1,500円は高いと感じるかも知れないが、実際にVRのシステムを自分で用意しようと思えば、コストはもっと高くなってしまう。「映画館でVR!」では、ヘッドセットをはじめとして視聴に必要な環境は劇場側で用意されるので、料金はかなり安いと言ってもいいだろう。

VR視聴で使用するヘッドセットは一般的な3DoF上下左右の360°視界に加えて、前後移動などのリアルな世界を体験できるハイエンド向けの6DoF対応だ。
このクラスだと一番安いものでも5万円台、ハイエンドのものとなるとハイスペックなPCとあわせて20万円以上になる。

個人で視聴する場合、こうしたヘッドセットのほかに視聴するコンテンツの購入も必要である。まだまだ市場が成熟していないこともあり、数分のコンテンツで1,000円というものが多いのだ。

そう思えば、1,500円でVR映像を映画館で楽しめるというのは決して高くはない。


しかし、これはVRに興味をもつ人間の価値観だ。
VRに興味が無い人にとれば、上映時間30分未満で1,500円は割高と感じるのは、無理はない。




そこで、VRを楽しむ上での不満点を解消し、新しい体験価値として提案するのが今回の「映画館でVR!」なのである。
前述したようにVRは個人でもスマートフォンやゲーム機、本格的なVRセットを購入すれば誰でも楽しむことができる。

しかしながら、あくまでヘッドセットをした人だけがVRの空間を楽しむことができるという閉鎖的なものだ。

仲間や友人など、複数の人と体験を共有するといった展開はない。
たとえば、同じ部屋に複数人いたとしても、
VRで面白い映像を観ているのは本人だけで、周囲の人はまったく楽しめない。

「映画館でVR!」では、友だちや仲間と映画館で映画を観るかのように、来場者が同時に同じVR映像を楽しめるよう作り込まれている。
たとえば、
・面白いシーンでは会場内で笑いが起きる
・怖いシーンでは悲鳴が聞こえる
こうしてリアルなリアクションがあることで、VRの世界とリアルの世界を繋ぐことができる。
同じVR映像を、同じ時間で、同時に体験することで、より面白く、より怖く感じることができるようになるわけだ。

この体験の共有こそが「映画館でVR!」の真の狙いである。

さらに「映画館でVR!」では、360°見渡せるVRなので、自分の見たい視点や注目したい部分だけを観ることができる。
同時に同じVR映像を体験しながら、観る人によっては違う映像をみることも可能となる。
・ある人は主人公を観ているかもしれない
・ある人は脇役のキャラクターを観ているかもしれない
・ある人は怖いシーンを直視しているかもしれない
・ある人は怖いシーンから目をそらして違うものを観ているかも知れない
・ある人は落下するシーンの地面を観ているかも知れない
・ある人は落下するシーンでは空を見上げているかも知れない
など、リアルタイムで視聴していながら、違った体験をし、異なる感想を持ち、異なる体験を話せるのも「映画館でVR!」ならではではないだろうか。




最後に「映画館でVR!」の最大のメリットについてだ。
「映画館でVR!」は、映画館の音響施設をそのまま使って上映している点が最大メリットである。

これまでVRを体験するにはイヤホンやヘッドホンで聴くというものが一般的だった。
しかし映画館なら立体音響と大音量で臨場感とアトラクションのような音響体験が可能となる。

視点とは違う方から音が聞こえたり、突然の大音量で脅かされたり、映画館だからできるエンターテイメント要素が加わることで、VRの世界のリアリティが増して、一つ上の体験ができる。

実際に、映像を体験することができたのだが、VRの世界に入り込んでまるで落ち着きがない子どものように、ストーリーそっちのけで辺りをキョロキョロしたり、身体を乗り出して主人公の顔をのぞき込んだりと、これまでの映画にはなかった体験をすることができた。




「映画館でVR!」は、導入の仕組みもシンプルであることから、映画館だけでなく、ライブハウスや小ホールなど、本物の音で楽しめるVRライブ体験といった展開も十分に考えられるだけに、今後のイベントとしてのビジネスも生まれていきそうである。

執筆  mi2_303