木製バットでないからこそ良い日本野球

写真拡大

金属バットと木製バット、それぞれメリットはある

 4回連載でお届けしている「世界の高校野球シリーズ・台湾編」。第3回は、木製バットでないからこそ良い日本野球について。今回も、野球留学で台湾より来日し2度甲子園出場を決めている呉承達さん(日南学園―鈴鹿国際大―関西独立リーグ)に、木製バットを使用してる台湾高校野球の現状を交えて、お話を伺いました。

金属バットと木製バット、それぞれメリットはある

 高校球児も、U-18国際大会などで木製バットを使用するが、最近は国際化に対応するため早くに木製バットに順応できるよう、国際大会だけでなく、高校生から木製バットを使用することはどうだろう?という一部の意見も聞く。

 ただし、安易に木製バットが良いといえるのだろうか?

 台湾では、高校生が木製バットを使用している。そんな台湾から日本留学し、2度の甲子園出場経験のある呉承達に木製と金属バットについて聞いた。

「高校生が木製バットを使うのはまだ早いと思う」

 それが第一声だった。

「スラッガーが生まれない。高校生のうちは小さくならずに、振り切ることが大事である。結果を残したい選手が木製バットを使用することで、どうしてもこじんまりとしてしまうことは非常にもったいない。大きな当たりがでないのなら、コンタクトをうまくする方へ舵を切りたい、指導者・選手の気持ちもわかるが高校生のうちは振り切ることが大事です」

 日本では現在、金属バットが使用されているため、どうしても、高校生が金属から木製バットに移行して、一番最初に直面する問題に目がいきやすが、実際に木製バットを使用している国の選手が提示する「順応」以外のファクターは、見過ごされやすいが、大事な点であるといえる。

 さらに呉は、打者だけでなく投手への弊害も語ってくれた。

「投手も、簡単に抑えられるということで成長ができない。そう言う意味で、金属バットを使用している日本の高校生は投打にレベルが高いと思います」

 金属バットのメリットを語ってくれた呉に敢えて意地悪な質問をしてみた。

「台湾で本塁打30本、2年連続打率4割以上を記録した王 柏融(ワン・ボーロン)はどうなの?」

すると、呉は笑いながら、

「王 柏融は、例外中の例外だよ」と答えた。

 高校生から木製バットを使用するのが良いのか、金属バットが良いのか?この問題は、簡単には言えないかもしれない。ただ実際に、日本では金属、台湾では木製バットとこの両方を経験したからこそ言える呉の言葉には重みがある。