第85回直木賞に青島幸男の『人間万事塞翁が丙午』が選ばれた。1981年7月16日のことだ。ちょうど翌日に誕生日を迎え49歳となった青島は、このとき参議院議員として3期目に入っていた。政治家だけでなく、放送作家・作詞家・タレントとしてすでに一世を風靡していた青島だが、本格的な小説はこれが第1作だった。先ごろ刊行された青島の評伝『昭和に火をつけた男青島幸男とその時代』(森炎・青島美幸著)によれば、若い頃より文