【連載】ミラン番記者の現地発・本田圭佑「メネーズは本田に手を貸すことが自分の得にもなることを早く理解すべきだ」
なぜそんなプレーを見ることができたのか? 理由は簡単だ。メネーズがいつもよりずっと、チームに貢献していたからだ。
しかし先日のジェノア戦では、全てが元に戻ってしまっていた。これも、理由は簡単。メネーズがまたいつものように、自分のためだけにプレーしたからだ。まるで、どんな場面も自分だけで打開できると言わんばかりに……。それに加えて、本田の調子が悪かったこともあり、ジェノア戦は最悪の結果に終わってしまった。
シーズンの初めからフィリッポ・インザーギ監督は、メネーズとその他のチームメイトを共存させようと苦心してきた。ここまでメネーズが多くのゴールを挙げているのは、その成果の表われでもある。
しかし、今のままではダメだ。
できるだけ早く、“本田に手を貸すことは、本田のためだけになるのではない”ということを、メネーズに分からせる必要がある。本田と協力すれば、本田もメネーズを助けることができる。個人的な目標達成の手助けだってしてくれるだろう。メネーズがそれを本当に理解することが、今後のミランにとって非常に重要なのである。
インザーギ監督は練習のたびに、本田とメネーズの動きが攻撃の基本になると、何度も繰り返している。互いに補い合うことが大切だと、口を酸っぱく言っているのだ。
メネーズは、多彩な攻撃を愛するCFだ。ボールを持って攻め上がり、スペースを作る。本田は、メネーズの作ったスペースにすかさず入り込むことのできるサイドだ。今はまだあまりうまくいっていないふたりのボールを介しての対話が、よりスムーズになることがミランのこれからを左右する。
メネーズがベストのポジションにいれば、本田は100回中99回は、ボールを出してくれるだろう。そのことは、メネーズもよく分かっている。しかしそのためには、ドリブルで上がる本田がパスを出しやすい位置に、メネーズ自身も動かなければならない。つまり周囲をよく見て、チームメイトがどんな動きをするかを常に把握することが必要なのだ。
インザーギはこの点においては、非常に優秀な指導者だと思う。まだ時間はかかるだろうが、とにかく今の時点ではふたりを共存させることができている。開幕時、右サイドのポジションをめぐってふたりが争うと思われていたことを考えれば、こうして一緒にプレーしているだけでも、インザーギにとっては小さな勝利である。
しかし、まだまだ出発地点である。ふたりが共存し、なおかつ突出したプレーを見せてこそ、本当の勝利なのだ。目標である3位にミランがたどり着くには、このコンビの息の合ったプレーが必要不可欠なのだから。
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト)
翻訳:利根川 晶子
Marco PASOTTO/Gazzetta dello Sport
マルコ・パソット
1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。