「ソフトな」ロボットの作り方
新しいツールキットがその方法を示す。
もし、血肉の通った生き物のように動く柔軟なロボットを設計するにはどうすれば良いのか考えた事があるならば、ここにちょうどいいツールがある。オープンソースを駆使した、「ソフトな」ロボットの作り方とプログラム方法がまとめられたツールだ。
ハーバード大の工学応用化学学科(SEAS)の研究者たちは、ダブリン大学トリニティ・カレッジと協力して、「Soft Robotics Toolkit」を発表した。このキットにはこの「ソフトな」技術利用に必要なものが全て含まれている。チュートリアル、ソース・コードの例、材料の解説、材料調達先へのリンク、それにマルチメディアを駆使したロボットの作成及び操作方法の説明等が含まれている。
なぜソフトロボットを作るのか?
上記のグループは ソフトロボティクスを以下のように捉えている。
ソフトロボティクスは成長分野であり、生物システムからインスピレーションを得て、従来のロボット設計方法と柔らかくてフレキシブルな素材を組み合わせるものです。動植物の多くは柔軟で伸縮性のある構造を持ち、それが複雑な動作や環境への適応を可能としています。これら自然のシステムがソフト・ロボティック・システムの開発にヒントを与えたのです。部品形状を精密に設計することで、柔軟で伸縮性を持つ素材に複雑な動作を「あらかじめプログラムしておく」事を可能になりました…ソフトロボットの弾性コンプライアンスが、様々な作業や環境への高い対応能力をもたらすのです。日常生活のサポートから低侵襲手術まで、人に関わる事柄に理想的と言えます。
ソフトロボットはゴムに似たポリマーであるエラストマーでできている。人の手を握ったり、地面を這って移動したりといった行動プログラムを実行できる。ゆくゆくは、ソフトロボットが物理療法や低侵襲手術、救難活動等で役に立つ日が来ると、研究者達は考えている。
エンジニアたちは ソフトロボティクスを利用することで、リハビリ用の空気圧式手袋や、ヒトの心臓の動きを正確に模倣する心臓シミュレーター、親指用リハビリ器具等を作り出してきた。サイトではこれらのケース・スタディを見る事もできる。
そのツールを手にとれ
研究者達はこのツールキットを、ソフトロボットの作成に興味を持つ高校生や大学生の為の学習手段としてデザインした。今のところ、ハーバード大の二つのグループがこのキットを使用している。研究者たちは、このキットを世界中に広めようと現在活動中だ。
「我々はウェブサイトを充実させていくつもりです。そして ソフトロボティクス研究者や教育者、他校からの学生達を招いて、このリソースの使用と開発に関わっていってもらうことにしています」と、ハーバード大SEASの工学部門外部講師、ドナル・ホランドは、Eメールでのインタビューでそう言った。「ハーバードを遥かに超えて広がっていって欲しいと思っています」。
アメリカやアイルランド、ブラジルの教育機関とも、このツールキットの使い方について話をしている、と彼は言う。
無論、誰にでもソフトロボットを作れるというわけではない。いくつかのプロジェクトには、真空チャンバーや遠心分離機といった設備が必要だ。サイトに技術的詳細が明確に提示されてはいるとはいえ、趣味でソフトボットを作ろうとしても技術が追いつかないかもしれない。
だが研究者達は、このツールキットを使用してどの学生もが ソフトロボティクスを学習できると楽観的に考えている。なかなか知り得ない情報を提供することは、 ソフトロボティクス分野全体に向けたリソースとしての役割も担うことになりそうだ。
「この情報を共有する事で、研究が進歩する事を願っています。車輪の再発明を繰り返すのではなく、お互いの成果の上に成果を重ねていく事で」ホランドはそう述べている。
写真と動画提供:Harvard SEAS
Selena Larson
[原文]