スカウトたちが絶賛した「夏の甲子園8人の逸材」
昨年の甲子園を沸かせたプロ注目の両右腕、済美・安樂智大と前橋育英・高橋光成が不出場。スター不在が心配された今大会だが、スカウトたちの目を釘づけにした選手はいた。
センバツからの高評価が変わらないのが、智弁学園の岡本和真。この夏は高校通算73本塁打のパワーは披露できなかったが、明徳義塾の好投手・岸潤一郎からタイムリーを含む2安打。存在感を見せた。
「甘い球をしっかりとらえていた。狙っていた獲物を確実に逃さない。これはあとからつけられないものだよね。それに、打てなくて『今日はまったくダメ』ということがない。ある一定のバッティングはするのでメドが立てられる」(パ・リーグスカウトA氏)
「バッティングで評価していない球団はないでしょう。春よりもボールを追いかけなくなったので不細工な三振をしなくなった。スイングスピードがあるからひきつけて打てる。清原和博タイプでしょう。日本を代表するホームランバッターになってもらいたいね」(パ・リーグスカウトB氏)
甲子園で直接視察した阪神の中村勝広GMも「打球のすごさが違う。ものが違う」と絶賛。打撃面に関しては大学・社会人を加えてもトップクラスの評価だ。問題はポジション。外国人やベテランと重なるファーストというのがどう影響するか。
「守備位置をどうするかは問題だね。投手としても140キロを投げられるし、肩はあるからサードができるかもしれないが......。そういう意味で(DH制のある)パ・リーグは指名しやすいよね」(セ・リーグスカウト)
近年の野球界は右投げ左打ちが多く、右の大砲はどの球団ものどから手が出るほど欲しい人材。「1位または外れ1位での指名が確実」というのがスカウトの見方だ。
この夏に株を上げたのが初戦で優勝候補の東海大相模を破った盛岡大付のエース・松本裕樹。右ひじが本調子ではなく、最速150キロの速球は見られなかったが、120キロ台、130キロ台、140キロ台とストレートだけでも球速差をつけて投げ分け、右打者の内角にもチェンジアップやツーシームで攻めることができる。類まれな芸当ができる投手だ。
「花巻東時代の大谷(翔平、現・日本ハム)はすごかったけど勝てる投手ではなかった。でも、松本は勝てる投手。状況や相手を見て、自分との力関係を踏まえてピッチングができる。そういう感性はプロに入って身につくものじゃない。上位12人に入ってくるでしょう」(セ・リーグスカウト)
「自分のペースを崩さない。岩手大会の決勝では審判に注意されてもまったく動揺しなかった。いい意味でぶれていない」(パ・リーグスカウトA氏)
一方でこんな声もある。
「体全体を使えていない印象があります。下半身に10の力があるとすると7しか使ってない。ただ、その7の力すべてを指先に伝えている。器用さを持った選手ですね」(セ・リーグスカウト)
高校通算54本塁打の強打も注目されるが、プロの評価は投手で一定。二刀流実現はなさそうだ。
このふたりに続くのが九州国際大付の捕手・清水優心。185センチ、88キロと捕手ながらサイズが大きいことで人気が集まっているが、スカウトによって大きく評価が分かれる。
「サイズもあるし、体の強さもある。それに肩もいい。化ければ城島(健司、元阪神)になる可能性がある」(パ・リーグスカウトB氏)
「当たれば飛ぶし、スイングスピードは速い。ただ、まだ粗さがある。高校生は体が優先だけど......」(セ・リーグスカウト)
それでも大型捕手は希少価値。上位指名があるかもしれない。
もうひとり、スカウトによって評価が分かれるのが大分の150キロ右腕・佐野皓大。
「今大会で一番いいかもしれない。腕が振れるし、軽く投げてピッと来る。走る姿を見てもバネがあるしね。うまくいけば岩隈久志(マリナーズ)みたいになるかもしれない」(パ・リーグスカウトA氏)
「能力は高いけど、まだ洗練されていない。投手の資質はあるから、あとは技術を追求していけるかどうか。これからどんな成長をするのか楽しみな選手であることは間違いない」(セ・リーグスカウト)
身体能力はあるだけに伸びしろは十分。評価はそれぞれだが、3位までに指名されるのではないかというのがスカウトの一致した見方だ。
この他で名前が挙がったのが、投手では日本文理の飯塚悟史と星稜の岩下大輝。飯塚はかつぎ投げで制球が不安定だった昨夏とは別人。自滅しない安定感を身につけた。
「すべてが基準以上で完成されている。あとはベースをどれだけ上げられるか」(セ・リーグスカウト)
岩下は最速146キロを記録した速球とスライダーに加え、落差の違う2種類のフォークを武器にする。
「まとまっているよね。フォームは問題ないし、馬力もある。それに体格のバランスもいい。フォームといい、体つきといい川上憲伸(中日)を彷彿させるね」(セ・リーグスカウト)
内野手では九州国際大付のショート・古沢勝吾だ。
「バッティングがいい。とらえる力があるし、スラッガーの雰囲気がある。何より、いい間合いを持っている。あれは教えてできるものではない。守備はプロの世界でショートとしてやっていけるか微妙だけど、中島裕之(アスレチックス)、浅村栄斗(西武)、山田哲人(ヤクルト)といった打撃優先の内野手とダブる」(パ・リーグスカウトB氏)
外野手では通算57本塁打のパワーと、甲子園の1、2回戦2試合で5盗塁をマークした健大高崎の脇本直人。
「とらえる能力とスイングスピードがあるから近くに呼び込んで打てる。角中勝也(ロッテ)みたいだね」(セ・リーグスカウト)
「体の力とスピードがある。長距離砲ではないけど、ノーステップでホームランを打つパワーもある。3割30盗塁を狙えるバッターだと思います」(パ・リーグスカウトA氏)
ただ、どのスカウトも問題点として指摘したのがスローイング。プロレベルではやや不安が残るため、「内野が守れれば......」という声も聞かれた。
以上7人が、この秋のドラフトで指名が有力な選手たち。また、「将来性」という期待値を込めて、今大会で最速の147キロをマークした山形中央の191センチ右腕・石川直也の名前も挙がった。
下級生では東海大相模の2年生コンビ、左腕の小笠原慎之介と神奈川大会決勝で20奪三振を記録した吉田凌、1年生ながら144キロをマークした東邦・藤嶋健人らは「来年以降が楽しみ」という声が多く聞かれた。
ビッグスターは不出場でも、新たなスターが誕生するのが甲子園。大舞台で自信をつけた彼らのさらなる飛躍に期待したい。
田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka

