ペンチャー企業「Navdy」のヘッドアップディスプレイで「ながら運転」は解消できるか?
テキスト等の情報をドライバー視野に投影する事で事故は減らせる
現在の法律は自動車の運転中にスマホのアプリを使うのを止めさせようとしているようが、それが上手く行っているとは言えない。ながら運転のせいで怪我を負ったり死亡したりする数は増え続けている。
そのあまりにひどいデジタルインターフェイスの出来からいって、自動車メーカーがこの問題に最適解を見つけるだろうとは思えない。解決への一歩は、例えば「Navdy」のような小さいスタートアップ企業から始まるように思われる。このサンフランシスコにある会社は車及び携帯電話の情報を、ダッシュボードや小さな電話のスクリーンではなく、ドライバーの目の前6フィート先にあるシンプルなインターフェイスに映すことで、運転手の悪癖による問題を解決しようとしている。
Navdyの武器はシンプルだ。ヘッドアップディスプレイ(HUD:操縦者の視野に直接情報を映し出すディスプレイ)とジェスチャー認識の組み合わせで、ドライバーが情報を確認したり何かを操作したりする際に、運転しながら他のことをやろうとするのを抑制するのだ。
車速、道案内、受信したテキストメッセージからラジオで流れてる曲の名前まで、知りたい情報は全て、ドライバーの視野に表示される。ここでいう全てというのはアプリの操作についても言えることで、例えば電話がかかってきた時、手を左に振ったら電話に出て、右に振ったら電話に出ないという事も出来る。運転中、視線を逸らさずにLeap Motionのように使うことが出来る。
タッチスクリーン、ノブ、ボタンは使わない
Navdyはアフターサービス製品の先行予約キャンペーンを行った。小売価格499ドルのものを40%の299ドルで販売するとし、最初の出荷は2015年前半になるという。
先週、NavdyのCEOにして共同設立者のダグ・シンプソンがバークレイヒルのあたりで商品のデモを見せてくれた。
シンプソンは以前、HPのリサーチ・製造部門を運営しており、後に子供向けの携帯マルチメディアデバイスの会社であるDigiblastを設立した。彼の協業設立者でありCTOであるカール・グズタグはグラフィック・イメージプロセサ用の集積回路アーキテクチャで30年以上の経験をもつ。PCHから出資を受け、サンフランシスコに拠点をもつハードウェア・インキュベータであるHighway1が、この製品を現実のものにするのに協力した。
「このアイデアは、運転中に電話を使う際、タッチスクリーンを操作することのフラストレーションから得たものだ。あまりにイライラするもので思わず事故りそうになった」
「タッチパネル、ノブ、ボタン、これらの問題は、使う際に手元を見る必要があるということだ」と彼は言う。「視線が道路に向いていない時、事故を起こす確率は3倍に増えるという」
まだまだ多くはアイデアの段階
表示ソフトウェアがどの様に使われるかは、以下のNavdyのプロモーションビデオを観れば大体分かると思う。
しかし現実では、Navdyはまだまだ完成形とは言えない。この前みた、レンタルのカローラに取り付けられたプロトタイプは、まだまだ荒削りであるし、ビデオで見られるような機能の多くも備わっていない。「これはまだ最終製品じゃないが、ハードの開発は終わった。今は最終テストの段階だ」とシンプソンは告げた。
サラダ皿程度のサイズのこのフラットなデバイスには5×2インチ程の透明なフリップアップスクリーンが取り付けられている。自動車がアイドリングになると、発進するまでの間、画像が表示される。電源は車から直接取る代わりに携帯バッテリーを利用している。
大事な点だが、現時点ではNavdyの戦略の軸となるジェスチャー認識と音声認識による操作の機能が欠けている。
それでも私の質問に対するシンプソンの反応から明らかなように、Navdyにはこの技術的な問題を解決するプランがあるようだ。彼は言う所によると「視線を道路から話さずに操作を行うという点を克服するために、市場に出る際はまず2つの技術を組み合わせる事を考えている」との事だ。
光学装置について
シンプソンによれば、このトリッキーな光学装置はカスタムデザインによるものだという。「このプロジェクターはiPhoneの40倍もの輝度をもつ」というが、確かによく晴れた日のデモでiPhoneからのGoogleマップの道案内を表示している時でも、イメージはクリアで焦点はぶれていなかった。
シンプソンは高解像度スクリーンや、代わる代わる反射、散乱、増幅される様々な光についても語った。
このデバイスの小さなスクリーンを使ったプロジェクションは、フロントガラスそのものを使ったものよりも簡単で安上がりだという。もしフロントガラスを使うとすれば、特別な光学素材をその中に挟み込まなければならず、またフロントガラスはものによって様々に湾曲しているからだ。
ヘッドアップディスプレイのコスト削減のため、Miniやマツダなどの大手自動車メーカーは「コンバイナ型※」ヘッドアップディスプレイを選択する。自動車市場のリサーチを行うIHSの予想では、2020年までにコンバイナ型ディスプレイは世界中で販売されるヘッドアップディスプレイの60%を占める事になるという。
(※)フロントガラスに投影するのではなく、透明なスクリーンから直接画像を見る形式のもの
ジェスチャー認識機能ではドライバーに向けられた赤外線カメラを利用するが、Navdyは画像処理で有名な企業とパートナーシップを結んだ。(シンプソンは企業の名前を教えてくれなかったが)「私達が考えていることは、自分が作るものに関してどういったテクノロジを組み込み、全体として素晴らしいユーザーエクスペリエンスに繋げるかについてだ」と彼は言う。
デバイスとユーザーとの距離もクリアすべき点だ。ドライバーのジェスチャーを読み取るためにはある程度の距離と、視角を稼ぐための魚眼レンズが必要だ。また内部の照明の状況についても挑戦を強いられることだろう。
インターフェイスはキーポイントだ。Google Mapなどのアプリやその他のスマホからの情報に加え、Navdyは自動車から車速、航続可能距離、タイヤ圧など幅広い情報を得るために、ステアリングコラム下にある診断ポートに接続するドングルを使う。
そういう意味では、Navdyはその上でアプリやディスプレイのデザインの実装を行うためのハードウェアおよびソフトウェアのプラットフォームのようなものだ。この企業は将来、第三者が開発に参加できるよう、このシステムを公開するという将来的なプランを持っている。
デモを見ている間、送信者の名前と写真と共に、「近いうちにまた会いましょう」というテキストメッセージが表示された。これは本物というよりはデモ用のテキストメッセージのように思われた。シンプソンは、デフォルト設定では車が走ってる時はテキストメッセージが読み上げられ、静止したらそれが表示されるようになっているという。メールについては守備範囲に入ってないらしい。
NavdyはAndroidで実装されているが、iOSでの実装も可能で、車の別なく動作するという。車によってダッシュボードやその他のサイズや形状が全く異なる中、取り付けをどうするかというのが最大の課題だという。
市場に出まわる製品になるために
現在、ながら運転の影響を最小限に止める方法は、携帯用のダッシュボードマウントを取り付ける事だ。Amazonでも$10くらいで、(もちろん必要な情報が常に視界にあるという経験を実現するものではないにせよ)$500するNavdyの1/50の値段で買える。
Navdyがどれくらいの早さで私が見たようなプロトタイプから、製品として完成しており価格も手頃なものになるのだろうか? いつになったら約束していたジェスチャー認識、音声認識、自動車及び携帯電話のデータの高いレベルでの統合は実現されるのだろうか? もしそれがまだ遠い話だとしても、車内インフォマティクスの進化を予感させる素晴らしい兆しである。
私はここ数年で(その頃まだ自分で自動車を運転しているか、自動車が勝手に運転してくれるかは知らないが)車内で電話に目をやる代わりに、ダッシュボードコントロールを見ることになるだろうと見込んでいる。あらゆることがフロントガラスに投影もしくは組み込まれ、願わくばそれらが画面広くに表示されるようになる。シンプソンは言う。「フロントガラス全体を使って表示する方向で考えている。それが今の我々のビジョンだ」
画像提供:Navdy
Bradley Berman
[原文]