「ムシューダ」新CMでは高橋愛とファンが共演。出演料はもちろん、交通費も宿泊費も出ない。しかも、撮影日は20年に1度の記録的な大雪に見舞われるという過酷な条件が重なるなか、98名のファンが全国各地から駆けつけた。

写真拡大 (全3枚)

いま、芸能界でもっとも幸せな人物、といわれるのがモーニング娘。の元リーダーでタレントの高橋愛。ピン芸人・あべこうじとの「バレンタイン入籍」が目前に迫った2月8日(土)、彼女が出演するエステーの防虫剤「ムシューダ」の新CM撮影が行われた。この新CM、事前に高橋愛のファンクラブ会員に募集をかけ、ファンと一緒にCM撮影を行う、ということで話題を集めていた。独身最後のファンとの交流の場を取材した。

■「大丈夫、看護師も待機していますから!!」(エステー特命宣伝部長・高田鳥場)

「おい、高橋愛を溺愛するお前ら!! 今日はお前らの考える100倍はツラいからな。たった15秒、30秒のCMを作るのがどれだけ大変かがわかるはず!」
会場に集まった高橋愛ファンクラブ会員に叫ぶエステー特命宣伝部長・高田鳥場。胸をはだけると、高橋愛のライブTシャツ
が顔を出し、会場がどよめく。

昨年12月24日、高田鳥場部長は高橋愛の「ムシューダ」新CM起用とともに、同CMの撮影にあたって、ファンクラブ会員限定で共演者を募集するとTwitterで発表。
今年1月には<エキストラというかファン役の人が欲しいのです。本物のファンがほしいのです。集まってくれた人数に合わせて企画考えます。>ともツイートしていた。

この前代未聞のCM撮影に集まった高橋愛ファンは98名。男女比はおよそ半々。朝9時に集合し、終了時間は21時頃を予定。出演料はもちろん、交通費も宿泊費も出ない。さらに、撮影日となった2月8日、関東甲信地方は記録的な大雪に見舞われ、都心でも20cmを超える積雪量となった。

なのに、関東近辺はもとより、岩手、新潟、福井、長野、大阪、広島、福岡など、はるばる遠方から来た人も。ただただ、高橋愛と同じ時間を過ごしたい、というモチベーションだけで大雪にもめげずやって来たのだ。

高田鳥場部長は会場のファンに向かって、呼びかける。
「去年、愛ちゃんの原宿でのライブに行ったんです。そこで、ファンのみなさんの姿、熱意に感動しました。それで思いついたのが今回のCMです。大変だと思いますけど頑張っていきましょう! 大丈夫、看護師も待機していますから!!」

午前中はずっとリハーサルに次ぐ、リハーサル。ファンたちはステージに向かって懸命にこぶしをつきあげる。でも、高橋愛はまだ来ない。

監督の容赦ないダメ出しが飛ぶ。
「もっと声を大きく! 口も開けて!!」
「もっと激しくジャンプして」
「手の位置はキープしたまま、頭は激しく振って。クレイジーに!!」

リズムに合わせてタテノリを繰り返すファン。
本気のタテノリ。まだリハなのに……。
高橋愛本人がいないところでも、高橋愛のためなら出し惜しみはしない。

休憩時間に、ファン歴12年だという会社員の男性に話を聞いた。
「会社で上司とうまくいかなかった時、愛ちゃんの笑顔で乗り越えることができました。今日はその恩返しです」

■嵐を呼ぶ女!? 高橋愛が登場!

昼食後の13時過ぎ、ようやく、ようやく高橋愛本人がファンの前に登場した。

「もうさ、なんでこんな大事な日に大雪なのぉ(笑)。問題はやっぱり私? 皆さんご存知だとは思いますが、私、モーニング娘。時代に『嵐女』って呼ばれてたんですよ」

ファンへの感謝とともに、雪の元凶?である「嵐女」のエピソードを語る。数メートルの近さから友達のように話しかける高橋愛に、ファンのテンションは急上昇。
「どうしよう!すごいカワイイ!!」「ありえない!!!」と、感極まって泣きだす女性たちも。

ようやく本番が始まる。……でも、ここからのほうが当然長い!
30秒のCM作品を、カメラアングルを変えながら30シーン以上撮影。
そのひとつひとつのシーンで、3テイク・4テイクと何度も繰り返していく。

意外と長く感じるのが、テイク毎のカメラチェックの待ち時間。
この合間合間を、高橋愛がMCで盛り上げる。

「今って円周率は『3』なんでしょ。ゆとりめ!(笑)。私の時代は『3.14』でしたよ。まあ、3でも3.14でも、私バカだから計算苦手なのは変わらないんですけどね。」

即席の発声講座やヨガ講座で時間をつなぎ、ファンと交流を深めていく。

そして17時10分、ようやく撮影が終わる。高橋愛が合流してから4時間以上、ファンにいたっては、集合時間から7時間以上が過ぎていた。

ファンの中には、大雪の影響で帰れなくなった人もいた。
福井県から深夜バスで来たという男性ファンも、その一人だ。
「帰りも深夜バスのつもりだったんです。でも、さっき、バス会社から電話がかかってきて、雪で運休になったと言われました。今から宿を取ろうにも、3万円以上のホテルしか空いていません。まいったなあ、今夜はカプセルホテルかな(笑)」

ファンたちからは愚痴ひとつ聞こえてこない。むしろ、嬉しそうですらある。

■「次、何を話そう?」ってトークのことばっかり考えてました」(高橋愛)

CM撮影を終えた高橋愛に話を聞いた。

─── 撮影お疲れさまでした。今回も歌ネタでしたね。

高橋 前回の歌がどうしても頭から離れなくって、憶えるのが大変でした(笑)。今回のも、一度憶えると頭から離れない曲でずっと頭の中でリピートしています。普段の生活の中でつい口ずさんじゃうCMになったんじゃないかなって思います。

─── 前回のCM撮影後、あまりに頭を振るCM内容のためにむち打ちになった、とコメントされていました。今日の収録でダメージを負った箇所は?

高橋 今回は大丈夫です。プロモーションビデオもそうなんですけど、何度も踊るのって、さすがに最後の方は疲れが出てきて、「あと何テイクですかね?」って思わず聞いちゃうこともあるくらい(笑)。でも、今日はそれがありませんでした。ずっと新鮮で、とにかく楽しくって。

─── それはやっぱり、ファンとの撮影だったから?

高橋 そうですね。ファンの皆さんの方が明日、筋肉痛で大変なことになってるんじゃないかなって心配です。さっきファンの方とお話をする時間があったんですけど、「CM撮影ってこんなに大変なんだね!」って声をかけてくださる方がたくさんいました。ファンの方と一緒にCMに出演できるなんて普通だったらありえない。だからこそ、私自身もすごく楽しかったし、「思い出になった」と言ってもらえたことがすごく嬉しいです。

─── 撮影もさることながら、合間をつなぐMCの引き出しの豊富さに驚きました。

高橋 CMを撮影したというより、イベントをやり終えたような感覚ですね。撮影中も「次、何を話そう?」ってトークのことばっかり考えてました(笑)。でも、ファンの方たちを目の前にすると、自然と話題が出てくるんです。

─── そんな風に周囲に気を配れるのは、やっぱりモーニング娘。でリーダーを経験したから?

高橋 客観的に、全体的に物事を見られるようになったのは、リーダーになってからだと思います。「自分たちのグループは今こうだからこうしよう」「周りがこうだからこっちをやらなきゃ」とか。「つんく♂さんがこの曲を出してきたってことはどういうことなのか」といったことも自然と考えるようになりました。

── 結果、4年以上リーダーを務めました。

高橋 ちょうど私がリーダーになったときが「(アイドル)戦国時代」といわれるようになった時期でした。テレビに出られない時期もあったし、辛かった時もあったんですけど、こういう時だからこそ力を貯めなきゃいけない、頑張らなきゃいけないっていうのはつんく♂さんからも言われていました。

── そして、間もなくご結婚です。今日も「結婚おめでとう」という横断幕を掲げていたファンもいました。

高橋 結婚しても変わらず応援してくれる安心感……安心感じゃないかもしれないけど、ホッとしたというか、素直に「ありがとう」って思えました。

独身最後の勇姿がつまった高橋愛の新エステーCMは、来月中旬頃からON AIRされる予定だ。
(オグマナオト)