世の中はアップデートされました。「ガッチャマンクラウズ」が挑んだゲーミフィケーション
アニメとしては珍しい、最初から全話BOXでの発売（普通は２・３話で一巻ずつ発売されます）で、お値段もお手頃。
元々は実写版『ガッチャマン』の連動企画として作られた作品でした。
ところが出来上がった映像は、ソーシャルネットワークが一般化した立川の様子。
実写版とも、４０年前のアニメとも、全くの別物です。
大鷲の健も出てこないし、科学忍法も使いません。バードミサイルも撃ちません。
改めて、ネットワーク社会の、善悪の線引が出来ない世界を描いたこの作品について紹介します。
ガッチャマン、戦わない
序盤は、ヒロイン一ノ瀬はじめが謎の老人に、ガッチャマンになるノートを与えられるところから始まります。
第一話だけ見ると、一見変身して戦う、王道ヒーロー物っぽいです。
ところがはじめちゃん、一切戦わない。そもそも明確な「敵」がいない。
物語は、はじめちゃんも利用しているネットワークアプリの話に重点が置かれています。
世の中はアップデートされました
作中では「GALAX（ギャラックス）」というSNSシステムを、世界で数億人近くの人が使っています。
困ったときは「ギャラックス」につなぐと、周りのユーザーとマッチング。
スキル……例えば法律の知識だったり、家事だったりができるギャラックスユーザーが受信して、助けあうことができるシステムです。
日常をゲーム化しているんすよ。
人助けになる行動をしたりすることが「ミッション」になっており、コンプリートすることでポイントが溜まります。Facebookの「いいね」のボタンみたいな「UP！」ボタンを押して参加できます。
溜まることで「アップデート」ができ、ゲーム性が生まれ、人と人のつながりができる。
そりゃみんな夢中になるわ。
いいことをしたら気持ちもいいしね。
ソーシャルネットワークの騒音
『サマーウォーズ』ではみんなの善意が集まり、巨大な力になっていくのが熱かったですね。
とはいえ、実際はそんなの考えもしなかったネットユーザーの方が多いはず。
ここを隠さない。
「プギャー」
「通報しました」
「処刑してやる！」
「死ね」
「キモい」
ネット上でのバズなコメントの数々が描かれます。是非コマ送りして見てください。
人はそうそう善意で動かない。たいした悪意も持っていない。
雑然とした集合体＝CROWDSがあるだけ。
でも結果オーライならば、楽しければ、それだってヒーローだ。
はじめちゃんの言動で、全てを肯定していく試みをこのアニメはしています。
大幅に追加されたディレクターズ・カット１２話
ここからは全話見た人向けの紹介です。
お薦めしたいのが、特典のディレクターズ・カット版の１２話。
ディレクターズ・カットというより完全新作です。元のアニメが好きな人なら、なんとしてでも見ていただきたい！
作中で語られなかったガッチャマンメンバーのその後、ベルク・カッツェとは一体なんだったのか、はじめちゃんはなにをしたかったのか。
これらが一気に解決しています。
ほぼ全員の成長が、見ることができます。
見たら、はじめちゃんに男女とも惚れるよ。惚れていた人は更に夢中になるよ。保証する。
また、全話についているオーディオコメンタリーも必聴。
この作品、思わせ気なアングルや表情が非常に多い。それらがなんの暗喩なのか、わかるヒントがびっちり語られています。
JJがなんだったのか、四角い浮遊物質メスの正体などもわかりますよ。
ベルク・カッツェ版のノートに、設定資料集、ラジオ全話もついているのでかなりお得。
２期も制作決定しているので、是非いまのうちに！
（たまごまご）
『ガッチャマンクラウズ』BD-BOX
『ガッチャマンクラウズ』DVD-BOX
『ガッチャマンクラウズアニメーションノート』
『ガッチャマン クラウズ キナコデザインワークス』
『ガッチャマン クラウズ オリジナル・サウンドトラックGALAX-』
