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LinuxはデスクトップPCのOSにはなれなかったが、コミュニティーの力により、2013年には普遍的な存在となっている。

2013年はLinuxがどこにでもあった一年だ。Linux Foundationのエグゼクティブ・ディレクター、ジム・ゼムリンは、Linuxはコンピューター分野の隅々まで入り込んでいるという。「スマートフォン、タブレット、家電、自動車、クラウド、高性能コンピューター、ゲームプラットフォームその他色々だ。過去も現在も、文字通りどこにでも存在するのがLinuxだ。」

どのようにしてLinuxはテクノロジーの隅々まで普及したのか?そもそもLinuxは、マイクロソフトやウィンドウズに取って代わるパソコン用OSになるという当初の目標を、全く実現できていない。カーネルやコードはLinuxの歴史のごく一部でしかない。Linuxの普遍性は秀でた技術というより、コミュニティーを生み出し、それを結び付ける懐の深さに帰結する。

優れている

とはいえ技術的に劣っていたとしても、コミュニティーだけでLinuxが成功するはずはない。オラクルのLinux、MySQL、Virtualizationそしてオープンソース・プロダクト・マーケティングのシニアディレクターを務めるモニカ・クマールはこう話す。「優れた技術なくして、優れたコミュニティーはLinuxのために集結することはなかった。」これこそがオープンソース・プロジェクト成功の鍵を握る重要な要素、つまり最初のコードが優れていることだ。

そうでないこともある。

ローンチされた当初Linux は、UNIXの代替品として「十分」な程度で、UNIXより優れていたわけではない。InfoWorldはLinuxが登場して10年以上経過した今も、「UNIX系統のOSであるSolarisのほうが技術的に秀でている」と断言している。何といってもUNIXは特定のアプリケーションとハードに特化したOSなので、ベンダーがその特徴を最大限活用することができるのだ。

IBMが説明するように、Linuxは真逆なのだ。

GNU/Linuxの開発はUNIXに比べて多様性に富んでいる。開発者の経歴は様々で、経験値や意見もそれぞれ異なる。Linuxのコミュニティーではツール、環境そして機能の基準は特に厳格ではなく、Linuxが全て同じでないという結果を生み出している。

皮肉にもこの「同じでない」事こそが、Linux最大の強みであり、全てのユーザーを満足させる多様性なのだ。

コミュニティーがLinuxを愛する理由

なぜLinuxなのか?ローンチされた時には殆どの用途にギリギリ使える程度だったにもかかわらず、コミュニティーが生まれたのはなぜか?CanonicalのOEMプログラム・ディレクター、ブレント・フォックスは、共通プラットフォームがもたらす利益は失敗のリスクを十分に上回ると説明している。

Matt Assay
今「Linuxが成功したのは、優れた技術ではなくコミュニティーのおかげだ」と書こうと思っているが、どう思うか?(もちろん、技術が素晴らしくないとは思っていないが・・・。)
Brent Fox
技術そのものは長い間未成熟のままだ。ただ既に地位を確立しているOSを崩壊させるポテンシャルは高い。だからコミュニティーが生まれるのだ。

これはおおよそ真実だが、歴史に合致しない。何しろUNIX擁護者で、多くのUNIXビジネスを抱えていたIBMが最初のLinux支持者だったのだから。IBMは当時、バラバラだったハードウェアのラインアップを統一し、UNIXから得る利益を犠牲にしてでもLinuxでより大きなハードウェアとサービスのビジネスに乗り出そうと考えていたのだ。

今ではLinuxは、IBMの数十億ドル規模の事業の中核を担っている。「Who Writes Linux?」のレポートにあるように、創設者のリーナス・トーバルズの個人的プロジェクトとして生まれたLinuxは、世界有数の大企業と最高の技術者の関心を一身に集めてきたのだ。

多様性から力を!リーナスと共に。

論争や利害の対立を超えて結集する力が、Linuxを成功に導いた。関連のない企業や個々に独立した開発者が皆、Linuxの改良に駆り立てられてきたのだ。Apache Software Foundationプレジデントのジム・ジャギエルスキは私に語った。「健全で活力のあるコミュニティーを作ることは、カーネルを作るよりよほど難しい。Linuxが成功しているのは、コミュニティーが成功しているからだ。」

Linuxの開発スポンサー一覧には、Linuxでの成功を志している者と、Linuxで成功した者を探している者がリストアップされている。

この多様性を支えているのが、リーナス・トーバルズの驚異的なリーダーシップだ。誰もがLinuxを自分のものにしようとする中、トーバルズは「No」を言える自身の権威によってLinuxの実力主義を保ってきた。この仕組みは、企業がドライバーや他の技術の発展に貢献し、顧客にとって最高に適したLinuxを提供していくには十分だった。

Linuxの技術は素晴らしく進化した。しかし、その技術は決してLinux最大の強みではないのだ。ゼムリンはメールでこう語った。

どこでも使われるようになっているのに、Linuxに対する質問は減っている。企業はLinuxを最大限活用するだけでなく、Linuxの思想そのものを他に応用したいと考えているのだ。最近よく質問されるのは、コミュニティーがどう機能しているか、ということだ。

優れた技術は常に生まれているが、大半は世間に知られることなく消えていく。リーナス・トーバルズは天才だ。そして彼が大部分を磨き上げ完成させた、コミュニティーを使った開発モデル、それがLinuxだ。

Matt Asay
[原文]